結婚しようよ




宇宙飛行士、南波兄弟の休みがたまたま重なった土曜の午後。

平日に出来なかった場所の掃除は午前中に終わって時間が出来たので、六太は夕食は少しだけ手の込んだものを作ろうと下ごしらえをしていた。


「よし、こんなもんだろ!」


六太は目の前に置かれている鍋の中の様子を見て満足そうに頷く。

後はトロトロになるまで弱火でじっくり煮詰めればソースの完成だ。

しっかり下味を付けてグリルしている肉の焼き加減をオーブンの外から見て小さく頷く。ソースが完成する時を同じくしていい具合に焼けてくれるだろう。


一段落ついて時計を見上げれば午後三時。丁度お茶の時間だった。


「ムッちゃん、終わった? なら俺コーヒー入れるよ」


「ん? あぁ、そうだな。 頼む」


掃除は手伝わせたけれど、料理に関しては特にしてもらう事もなかったのでキッチンから追いやっていた日々人が顔を覗かせる。


けれどその存在を片時も忘れたりしなかったのは、15分置きにキッチンへやって来ては「終わった?」「まだ?」「手伝おうか?」などと口を挟み続けてきたからに他ならない。

料理を作るより追い返す方が手間だったくらいだ。


でも原因の一端は自分にもあるかもしれない。


常にこっちを気にしてくれるのが嬉しくて、そんな日々人が可愛くて強く追い返せなかったのだ。



―― 俺も大概、甘いよなぁ…



反省はするがきっとまた同じ事が起きても強く言えないのだろう。

苦笑しながらコーヒーを入れる日々人をキッチンに残し、ダイニングのソファに腰掛けた。

鼻歌が聞こえてくるキッチンをチラリと見れば兄離れ出来ていない弟が上機嫌でコーヒーを淹れている。

とは言え、自分も弟離れ出来てはいないのだからお互い様なのだが。


否、弟に向けるものとしてはかなり重いこの感情。考えると溜め息を吐きたくなってキッチンから視線を逸らせた。






気付いたのは高校2年の時。そう、日々人に初めて彼女が出来た日、だった。

弟が兄離れする寂しさ、などとは呼べない位動揺してしまったあの時。必死に弟だからと思いこませて誤魔化して誤魔化して、大学が決まったと同時に逃げるように家を出た日は未だに苦い思い出だ。

何年も顔を合わせず忘れようと努力をして、忘れたはずの感情は…もう一度会った途端、鮮やかに息を吹き返してしまった。



―― …どーしよーもねーな、俺も…



溜め息を一つ吐き、けれども一緒に暮らすようになって自然と振る舞えるようになった事に胸を撫で下ろしながら、こうやって一緒にいられるだけで充分だと思えるようになってきたのも事実。


だから、きっと、平気になる。日々人が彼女を作ったとしても。何年か後に家庭を持ったとしても。




そう思っていた。








けれど弟、日々人は空気が読めない奴だった。平穏な日常にひょいっと爆弾を落としてしまうくらいに。
















「なぁムッちゃん。 結婚式って何人くらい呼ぶもん?」


コーヒーを淹れてくれた日々人に礼を言ってカップを受け取ったと同時にされた問いかけに、唐突だなーと笑ってしまう。


「何だよ、急に? 誰か結婚すんのか?」


一口だけコーヒーを飲み込み、うん、美味いと思いながら軽い気持ちで聞き返せば、日々人は満面の笑みを浮かべながらしっかりと頷いた。


「うん。結婚するよ、俺が」














「…………は…?」













いきなりのカミングアウトに、揶揄ではなく本当に身体が固まった。


否、言いたい事は解る。日々人だってもう大人だしそういう年頃ではある。


「…え…お前が、すんの…? 結婚…」

「そうだよ」

「…え、と……あ…相手…いる、んだ…?」

「いなきゃ結婚できねーだろ?」


何言ってんのムッちゃん、と笑う日々人の声が遠くに聞こえ、自分の心臓の音がやけに近くで鳴り響く。



そりゃ日々人はモテる。尋常じゃないくらいモテる。お前はどこの人気俳優かってくらいモテまくる。

そんな日々人に彼女がいてもおかしくない。否、いなきゃおかしいくらいだろう。

けれど、彼女がいる事なんて知らなかった。紹介もされていないし話を聞いた事もない。教えても、もらえなかった。

知らなかった事実に、愕然とする。




兄貴なのに……。



きっと日々人には近い将来、可愛いくも美しい彼女が出来るんだろう事は解っていた。

その時自分がどれだけ傷つき、どれだけ体裁を保てるかは全然解らないけれど……それは時間を味方にすれば、徐々に普通の態度もとれるだろうと。笑ってお祝いの言葉を言えるくらいにはなるだろうと。

そんな考えから、彼女を紹介されて結婚するまでにはまだ猶予があると考えていた。

その期間内でしっかりと兄の顔で祝ってやれるように、ただの兄でいられるように心構えをするつもりだった。

けれど蓋を開けてみれば日々人は兄に彼女を紹介することなく、それら色々すっ飛ばして結婚まで決意していたのだ。



これは、ショックだ。



想いを伝えるつもりなんて全然、これっぽっちもありはしなかったけれど。





知らなかった事がこんなにもショックだとは。





兄の心弟知らずな日々人は、六太の表情が固まっている事に気付かずにどんどん話を進めている。


「出来るだけ早く結婚したいんだけど、俺、結婚式の事とか解んないんだよね。 明日にでも結婚出来る方法とか知らね?」

「いや、ねーから」

「あー、やっぱ無理? 早く一緒になりてーんだけどなー。 そうだ、俺、子どもも欲しいんだよ!」


楽しそうに未来予想図を描いている日々人からダメ押しとばかりに現実を突き付けられ、六太は顔を逸らした。


「…そ…か……そっか…」


日々人の見えない死角でギュッと拳を握りしめる。





世界が崩れる音を、確かに聞いた。




胸が張り裂けるかと思った。




張り裂けていないのが不思議だった。




幸いなのは、驚きすぎて涙さえ出ない事だ。




大丈夫大丈夫、涙さえ見せなければ鈍い弟には絶対にばれない、そう心の中で何度も唱えて冷静さを保つ。








―― …あー…この家、出てかなきゃなー…


NASAに近いところで、この家に遠いところで、家を借りよう。

モジャモジャ30代男の一人暮らしだ。この家みたいに広くなく、狭い方が逆にいい。



考えながら、湧き出してきた憤りにキュッと唇を噛みしめた。


彼女の存在を教えてくれなかった日々人に怒りを覚えてしまうのは仕方ないだろう。



もっと早く、彼女の存在だけでも教えてくれていれば。








もっと早く、この家を出て行ってやったのに……。








「………バカ日々人…」


吐息のように小さな声で呟くと、先程まで喋り続けていた日々人が意外にも六太の声を捉えたらしい。


「え? 何、何か言った?」

「っ……いや、あー……母ちゃんたち喜ぶぞって思ってな…」


そう、両親の為にも、結婚はした方がいいのだ。


結婚して孫の顔を見せて…親孝行しなければならない。


本来であればそれを先にしなければならないのは長男の六太ではあるが、そこは許してもらおう。


両親が望むであろう未来は、これから日々人が全て叶えてくれるだろうから。



突然にしては当たり障りのない言葉を選べた事にホッと胸を撫で下ろすも、日々人は乗り出すようにこちらに顔を近づけ目をキラキラさせて聞いてきた。



「ムッちゃんは? ムッちゃんは嬉しい?」



「っ――!」



本気で殴りたいと思った。



嬉しい、わけがない。喜べる、はずもない。



けれど日々人は知らないのだ。六太の想いを。他の誰でもなく六太自身が悟られぬように仕向けた。





日々人は何も悪くない。








だから―――。










笑え。












笑え!笑え!笑え――!















「あ、当たり前だろ? 嬉しいよ」


少しぎこちなかったかもしれないが、自分でも及第点だと言える笑顔で頷く事が出来、心の中で安堵の溜め息を吐いた。

けれど普通ならその後に続くはずのオメデトウが喉元でひっかかった様に出てこなくて…ぎゅっと拳を握り締める。

兄貴なのに。簡単な一言でさえ言えないなんて…酷く情けない。


「よかった! ムッちゃん嫌がるかもって心配だったんだよ」

「な、何で俺が嫌がるんだよ。 嫌だなんて思わねーよ」


言いながら口元を隠す為にコーヒーに口を付けた。

カップを持つ手が震えているのに気付かないおおざっぱな弟で本当に助かる。

コーヒーを口に含むとコーヒーだけではない苦い味が口いっぱいに広がり、それを何とか喉に流し込んで心を落ちつける。



すると日々人はふと何かを思い出したように手を打ってポケットをゴソゴソと探り、お目当てのものを取り出して見せた。


「っと! そうだ、忘れてた。 ホラ見て、指輪」


指輪と言う単語にギクッと身体が強張るのが解る。

ウキウキと嬉しそうに日々人が取り出したのは、小さいけれどその高価さが見てとれるシンプルな指輪の箱だった。

カパッと蓋を開けて中から出てきたのは、ほら見た事かと言わんばかりの高価そうな婚約指輪。


「これ、月をイメージして作ったんだ。 ムッちゃん、どうかな?」


「あ、ぁ…綺麗、だな」


何とか声を絞り出して、何とか笑顔を作りだして…そんな事しか言えなかった。


月をモチーフとした大きなダイヤモンドがキラキラと光を反射してより大きな光を作り、リング部分はシンプルながらも小さなダイヤが散りばめられ、まるで月を引き立てる星のように輝いている。




その指輪は日々人そのものだと感じた。





そしてその指輪には、日々人の愛が目に見えて…視界が、歪んだ。





ゆらゆらと揺れる視界に映る指輪は本物の月の様だと思う。


「えっ!? ムッちゃん!? 泣いてんの!?」


六太の顔を見てギョッとした日々人からそう言われて初めて、視界が揺れるのは涙の所為だと気付いた。


「え、あ、いや…」


オッサンの泣き顔なんて見せたくなくて顔を逸らそうとするより先に、日々人の両手が頬を包み込み、視線を絡め取られてしまう。


その手を剥がそうとして……日々人の表情に目が奪われ、抵抗はピタリと止まった。


「そんなに喜んでもらえたなら、俺も嬉しいよ」


六太の涙を親指で拭いながら微笑む日々人の顔は、幸せとしか言い表せない程優しく、柔らかく、暖かだった。


その顔を見て、言葉を聞いて。息を飲んだ。




―― お前がそんな顔出来るなんて、な…





そこでようやく、決まった。





覚悟だ。









目の前にいる男は、生まれた時から、弟で。これからも一生、変わる事はない。


けれどいつまでも小さいままの弟ではなくて、自分で幸せを掴み取れるまでに成長した、そんな日々人を誇りに思う。


兄である自分は、何が起ころうとも弟の幸せを願うものだ。







「あぁ、凄く嬉しい」









お前が、幸せになる事が、嬉しくて堪らない。









素直にそう思えて、やっと、普通に笑う事が出来た。


「っ…あ、じゃ、じゃあ、ムッちゃん! 手ぇ貸して」


何故か日々人は慌てた様に視線を逸らせてしまった。頬が赤いのはどうしてだろう。

不思議に思って首を傾げたところで手を取られ、日々人によって左手薬指に指輪がはめられた。


おー、ピッタリ!と声を弾ませて笑う日々人にズキリと胸に痛みが走るのはもうどうしようもないけれど…きっといつか、普通の兄に戻ってみせる。

再度心の中で誓い……事の不自然さに気付いて思わず声を上げた。


「って!! 俺にピッタリじゃダメだろ!?」

「何で? ダメじゃないよ。 ムッちゃんに合わせて作ったんだし」

「何で俺に合わせて作るんだよ!? そういうのは彼女…じゃなくて、婚約者の子に合わせて作るもんだろ!」


男の自分にピッタリならば、女の子にはブカブカに決まっている。

作り直すのってタダでしてもらえただろうか?

でなければそれなりに痛い出費になるだろう。

これだから日々人はネジが足りないのだ。

日々人の負担を鑑みて心配になり焦りながら声を上げる六太に、日々人はケロリとした顔でのたまった。


「うん、だから、ムッちゃんに合わせて作ったんだよ。 ピッタリだろ?」


「あーそーかよ! だからお前はネジが…………………え゙っ!?」


「ん?」


今日々人は何と言った?


言葉の意味に驚愕しすぎて思考回路が崩壊したかのように働いてくれない。



「…………」



「…………?」



「……………………」



「………ムッちゃん…?」



「…………………………ちょ……ちょっと待て…………」



絞り出すようにそれだけ言うと、日々人は不思議そうな顔をしながら頷いた。

そしてそこに満を持して沈黙の天使が舞い降りる。


否、今そんなメルヘンなモノを見ている場合ではない。問題であるのはそこではなく、日々人の発言だ。

婚約指輪というものは、結婚したい相手に贈るもので。

それが六太の左の薬指にピッタリな事に抗議すればそれで間違いはないのだと。

婚約指輪は婚約者の子に合わせて作るのを理解した上で、この指輪を日々人は用意したのだと、告げた。


とくれば導かれる答えは一つだけではあるが…。


でもまさかそんなバカなあるわけナイナイ。ナイけれど、頭の中で鳴り響く警報と襲い来る嫌な予感に恐る恐る口を開く。


「…ひ、日々人…ちょっと聞くんだけど……お前が結婚する相手って……」

「え? ムッちゃんに決まってんじゃん!」

「決まってねーよっ!!」


思わず立ち上がって声を上げ、決まってないよ!?ないよね!?と激しく心の中でツッこむ。

えぇ〜!?、と間延びする声を聞いてようやくからかわれたのだと気付いて冷静になるとともに殴りたい衝動に駆られる。

というか、言っていい嘘と悪い嘘がある事はちゃんと教えておかねば。


「いや、おかしいから! 兄弟で結婚とかないから! つーか、そういう冗談ヤメロよ」


本当に心臓に悪い。図らずもショック死というものを体感しそうになったではないか。

ガシガシと頭をかきながらふつふつと湧きだして来た怒りを乗せて諭そうとするも、いきなり声を荒げた日々人にかき消される。


「おかしくねーし、冗談でもねーよ!」

「…え…?」

「冗談で結婚なんて言わねーし、指輪も用意しねーよ! ムッちゃんだって、嬉しいつって指輪受け取ってくれたじゃん!」

「えぇ!? あれってそういう意味だったの!?」


てっきり婚約者に渡す指輪を見せて、プロポーズと同時に渡すに相応しいものであるか兄に確認しているのかと。

驚いて思わず本音を溢すと、日々人はますます拗ねたように唇を尖らせた。


「そういう意味じゃねーと婚約指輪なんて渡さねーだろ!」

「そりゃ…いや待て待て待て! お前子ども欲しいって言ってただろ!?」

「え、ムッちゃん子どもいらねーの? 俺、ムッちゃんが俺の子産んでくれるって楽しみにして…」

「産めるかぁあぁぁあ!! アホかぁ!! 俺は男だっ!!」

「んなん知ってるよ! 一緒に風呂入ったこともあるし!」

「ああぁぁホントお前ネジ探して来い! 会話が成り立たねーだろ! …って、そもそも! お前って俺の事好きだったの!? それって兄弟愛と混同してんじゃねーの!?」






「違げーよ! つーか、毎日毎日ムッちゃんに愛してるって伝えてきただろ! 今更何言ってんの!」






「……………………………………………………」






沈黙の天使、再びご降臨。どうやら居心地がよくて舞い戻って来たらしい。気に入ってもらえた様で何より。


って、現実逃避してる場合じゃない。


「いやいやいやいやいや! 初耳ですけど!?」

「え?」

「今初めて知ったわ! なにそれ!」

「え? アレ? …しまった、思ってただけか…」

「〜〜〜〜っっっ!!!!」






こ の 野 郎 !!!!






例えば家を支えるのに一番重要な大黒柱があるとすれば、その柱を固定するネジが全てとれている状態。それが日々人である。

こんな風に育てた覚えは断じてない。

怒鳴ってやろうと思うものの、怒りのてっぺんを越えると、どうやら疲れが押し寄せてくるらしい。

怒りがどこかへ行ってしまった事に頭を抱えたくなりながらも、ドッと身体に掛った疲れに溜め息を吐いた。


「…も…お前、ヤダ…」


力が抜けた体をソファへ投げ出すと両手で顔を覆い、ポツリとそれだけ言った。


断言してもいい。


こんなに頭が混乱したのは生まれて初めてである、と。


もう一度深い溜め息を吐こうとした時、両手首をそっと掴まれ顔を覆っていた手を外された。

思わず目を開ければ隣にいたはずの日々人がいつの間にかソファに座る自分の前で膝を付き、微笑んでいる。


「ひび…」








「ムッちゃん、愛してんよ。 俺と結婚して」








「っ!!」


一瞬面食らって、言葉を理解すると頭が沸騰したかのようにボンッと真っ赤になる。

パクパクと口を開閉しながら声にならない声を上げている六太の手に日々人は口付けを落とした。


「っ――!!!」


唇の感触に驚き手を引こうとしたが、グッと力を込めて逃げる手を取られて阻止されてしまう。


「ムッちゃん、逃げないで」

「っ…」


縋るような声でそう言われ、まるで今の心情を読まれたかのような的確な言葉に驚いて息を詰める。


そう、六太は咄嗟に逃げなければと考えていたのだ。

仮に自分も好きだと告げたとしても、そんな関係、不毛だし間違っている。

兄として、弟が間違った道に進もうとした時はそれを止めてやらなければならない。それが兄というものだ。


けれど。


日々人が結婚すると聞いた時の…明日にでも結婚したいと強く望む程愛している人がいると知った時の、胸を抉られるような痛みと。逃げないで欲しいと痛切する日々人の言葉に、心が切なくなった。


そして、強く想う。





もう二度と御免だ。





日々人と離れて過ごす時間なんて…日々人がいない日常なんて…もう二度と――。





「…ひびと…」


呼んで手を伸ばし、目の前に跪いている日々人の首に腕を絡めてギュウッと抱きついた。


「っ!!! ムッちゃ…」

「…言っておくが、兄弟は結婚、出来ないからな。法律的に」

「えぇぇ〜!?」


思わせぶりな態度取っておいて言う事がソレ!?と不満そうな声に、思わず口元が緩む。


では、早とちりな弟に教えてやろう。


「……でも……」


回した腕に少し力を込めて。震える唇を開いた。







「……結婚指輪選ぶ時は、俺も付いてくから……」










一緒に、選ぼう――。










囁くように、そう告げた。


瞬間。


抱きしめている身体がビクッと跳ねて固まって。え?と思った時には痛いほどキツク抱きしめられていた。


「っ、日々…」

「ムッちゃん!ムッちゃん、ムッちゃん! っ…ムッちゃん!!」


自分の想いが相手に伝わったのが解って、どこかむず痒くも幸せな気持ちになりながら口を開こうとした途端。


ふわり、と身体が浮いたかと思うとドサッとソファに再び座らされ、それに驚く暇もなく日々人の顔が目の前に迫っていた。


「う、わっ!? っ! ん、ぅっ!?」

「んっ…ムッちゃ、っ、ちゅっ…」


息つく間もなく重ねられるだけだったソレが深いものに変わり、六太の思考を追いつかせない。


「ん、むっ!?…ふ、っちゅ、んっ…はっ、んんっ…」


いきなりの事に驚いて咄嗟に離れようと押し返すが、それに気付いた日々人によってソファの背もたれに身体を押しつけられ、まるで上から喰われていると錯覚しそうなくらい、キスが更に深くなる。


「ん、ぅ、ちゅっ…ふっ…ん…ムッちゃん…おいしっ…」

「ふぅ、んんっ…ふ、ぁっ…っむっぅんっ…ん、まっ…っびっ…んーっ!!」


舌を絡め、唾液を啜られて、渡されて…正直、息が出来ない。気付いてほしくて日々人の背中をバンバン叩くがキスが止む気配が一向にない。


「んぅっ、んちゅ、んむっ…は、んぐ、んっ…」

「ぁ、んんっ…まっ、て、んぅっ…ちゅ、むっ…、び、とっ…ふっ…」


日々人とのキスを想像しなかったとは言わない。しかし。しかし、である。


―― 長ぇ!!!


酸素が足りずどんどん頭がボーっとしてきて身体に力が入らず、何とか最後の気力を振り絞って日々人の服を引っ張った。

と、ようやく気付いた様に日々人が唇を離してくれる。


「ん、ぁ……はっ、ムッちゃん…」

「っ、はっ! は、はぁ、――はっ、ぁ!」

「ごめん、夢中になっちゃった…ムッちゃんの口ン中、キモチよすぎて…」

「は、はっ…、言う、なっ…」


本当に、喰い殺されるかと思った。けれどそんなに夢中になってくれるという事が嬉しくて、そんな日々人が可愛く感じて仕方ない。

息を整えようと日々人の肩にポテンと額を乗せると、間髪入れずギュッと抱き締められる。


「っ! っ〜〜好き! も、ホント、すっげぇ、好き! 可愛い! ムッちゃん、愛してる!」


全身全霊でそう伝えてくる日々人の声を聞きながら、その背に回した自分の薬指に光る指輪を見つけて頬を緩め、六太はゆっくりと瞳を閉じた。













「……俺もだよ」











〜 fin 〜

この後、初めて六太の想いを言葉で聞いて頭パーンってなった日々人に襲われますvv

とゆーわけで、pixivにアップしてた初の宇宙兄弟小説ですvv
宇宙兄弟、いいですよねvv


(2013.9.3)
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