知りたいから


教えて――?




レッスン

Lesson2




悟空からの告白を受けて、1週間ほど経った。

告白から今迄、特に何を言ってくるでもなく、悟空はいつもの調子で『腹減ったー!』などと喚いている。

とりあえず、雰囲気を壊すことなく旅を続けられていることに安堵する。


「あ〜腹減ったぁ!メシまだぁ〜!?」

「うるせぇ。黙ってろ」

「もうすぐ街に着きますからね、もう少しの辛抱ですよ」


ジープの上のいつものやりとりに、八戒が苦笑しながら悟空をなだめている。


「お前、『腹減った』以外言えねぇのかよ〜?」


フー、と煙草を吹かしながら言うと、単純な悟空は悟浄の挑発に簡単に乗ってきた。


「んだよ!腹減ったモンは仕方ねぇだろ!」

「ボキャブラリー少ないからなぁ、お猿ちゃんは」

「んだとー!」


悟空がいきり立った所で、いつものごとく、三蔵の銃が火を噴いた。


「うるせぇっつってんだろぉが、バカどもが!!」

「「わ゙〜〜!!」」


「今日も平和ですね〜」


どんな事でも動じない八戒は、銃をぶっ放す三蔵を横目に、ニコニコしながらジープを走らせた。










 











目的地に着いた三蔵一行は、寝所を確保する為、宿屋に来ていた。

今日の宿はあいにく1人部屋が4つ空いておらず、2人部屋を2つ借りる事になった。


「チッ…」という、心情を如実に表した三蔵の舌打ちに、悟浄と八戒は苦笑する。


「では、こちらがお部屋の鍵になります」


そう言って差し出された2つの鍵を見ながら部屋割りを決めようとした時、悟空が手を上げて3人を見上げる。


「あっ!俺!三蔵と一緒がいい!」

「おや、悟空からそんなことを言い出すなんて、珍しいですね?」


「たまにはいいだろ!な、三蔵!いいよな!」

「喚くなバカ猿。うるさいお前と同じ部屋なんて冗談じゃねぇ」


そう言いながら、三蔵は部屋の鍵を1つ持つと、さっさと部屋へと足を進めた。

けれど、悟空の提案を拒否していないのが雰囲気で分かる。

悟空も気づいているのか本能で分かっているのか、嬉しそうに笑いながら三蔵の後を追い、「今日の晩メシ何だろな〜」などと三蔵に話しかけてはハリセンで殴られている。


「まったく、元気ですねぇ」


クスクスと笑いながら呟いた八戒の言葉に、悟浄は激しく同意した。


「ほら、僕たちも行きますよ、悟浄」

「お〜」


悟浄は、もう一方の鍵を手に取った八戒の後に続いた。










 











部屋に到着してベッドに腰掛けた矢先、悟空が目をキラキラさせながら離しかけてきた。


「さんぞー!」

「断る」


何も言っていないのにそう断言され、悟空は口を尖らせた。


「んだよ、まだ何も…」

「何も言ってないが、テメェのくだらねー頼み事につき合ってられんからな」


そう言うと、悟空は驚いたように目を見開いた。


「え?何で頼みがあるって分かったんだよ?」

「……バカ猿…」



―― 分かり易すぎんの、気づいてねぇのかよ…



げんなりした様子で備え付けのお茶を注いで口をつける。

そのお茶は思ったより美味しくて、三蔵は思わず片眉を上げた。




のだが。




「あ、んなことより、三蔵!大人がする、腰砕けの激しい運動って何か分かるか?」




「っ――!?」




そんな悟空の爆弾発言に、盛大にお茶を吹き出しそうになったものの、何とか耐えた。

ただ言葉の衝撃は軽くなかった為、コップの中のお茶を机の上にこぼしてしまったのは致し方ないところだろう。



―― …あンのクソ河童…!!



心の中で低く毒づく。

悟空にそんなことを吹き込むのは悟浄くらいだろうと、確信を持っていた。



三蔵の態度に、悟空は嬉しそうに声を上げた。


「知ってんだな!よかったぁ! だったら、やってみせてくんねぇ?俺、覚えなきゃいけなくてさ〜」


「…………………………」




今のは冗談だと思いたい。




むしろ冗談だと言え。




「さんぞー、頼むよー!俺、どーしてもそれ覚えたいんだ」


『三蔵の心、悟空知らず』で、先程の言葉はどうやら本当に本気らしい。


「……馬鹿が」


アホらしいとばかりに新聞を広げ、読み始める。

今度、本気で赤ゴキブリをシメてやろうと決意しながら。


「何でだよ!ちょっとやって見せてくれたら、ちゃんと覚えるからさ! ……あ……さては三蔵も知らねぇな?」

「阿呆!あんなの一人でどうしろって…」


カッとなって叫んだ自分の声でハッと我に返る。

これでは知っていると告げたようなものだ。


「え?一人でも出来るんじゃねぇの?じゃ、何人だったらできるんだ?」


不思議そうに首を傾げる悟空に、知らず知らず大きなため息が出る。

知らぬが仏、という言葉があるが、むしろ知らない事は罪なのだと、こんなところで痛感するとは。


ここまできたらもうどうでもいいと思い直し、答えを待っている悟空に教えてやる。


「二人だ…普通はな」


教えてやったからもういいだろうと思った矢先、悟空は嬉しそうに声を上げた。


「なーんだ!んじゃ、問題ねぇじゃん! 三蔵と俺で二人だから、一緒にやろーぜ!」


本気で頭痛がしてきた。これ以上ないというほどの、頭痛だ。


「冗談じゃねぇ」


頭痛の種を怒りとともにジロリと睨みつけるが、悟空はどうして怒るのか不思議そうな顔をしている。

睨んでいる自分がバカに思えるくらい、きょとんとした表情だ。


悟空に察するという芸当はできない事を重々理解した三蔵は、新聞を読み始めて無視を決め込んだ。


「何でそんな怒るんだよ?いいじゃんか、ちょっとくらいさ〜!」

「…………」

「1回だけだし、ケチケチすんなよな!」

「………」

「さーんーぞーー!! 頼むって〜! ちょっとでいいんだって!」

「………」

「んじゃ、ヒントだけでも! な? それくらいならいいだろ!?」

「………」

「聞いてんのか、さんぞー!!」

「うるせぇ! 黙って座ってろ、このバカ猿!」


あまりにもしつこく喚く悟空に、気づいたらハリセンで殴っていた。


「いってー! 何で殴るんだよ、さんぞー!」

「てめぇがバカだからだ。 分からねぇんなら、もう一度殴ってやる!」

「いやっ!いいって! さっきの、すげぇ痛かったし!」


ハリセンを構えると、悟空は慌てたように後ずさった。

力ずくでも何でも、悟空の口をふさぐ事に成功した。これでこれ以上しつこく聞かれることはないだろう。

拗ねたように「んだよ〜」と呟いている悟空を横目に、再び新聞に視線を戻す。



と。



「じゃ、いいよ。俺、八戒に教えてもらうから!八戒なら優しく教えてくれるもんね!」

「っ――!?」


思わず新聞をぐしゃりと握りつぶしてしまった。


八戒。今、こいつは、八戒に教えてもらうというバカ極まりない事を言っただろうか。


―― んな事してみろ! アイツに喰われちまうだろうが!!


そう、八戒ならば、聞いたが最後、そのままおいしく頂かれること間違いなしだ。

あの手この手で悟空を可愛がっている八戒だが、その瞳に獲物を狙う色がある事に三蔵は気づいていた。

もちろん、無理強いはしない奴だと知っているが、悟空からそんな事を言われたら、これ幸いとばかりに丸め込み、結果、悟空は八戒の手に落ちてしまうだろう。



そんな三蔵の葛藤を他所に、悟空は部屋を出て行こうとしていた。


「悟空!待て!」


思わず引き止めていた。


「?何だよ?」


振り返ったその大きな金色の瞳をじっと見つめる。



手に吸いつくように滑らかな肌。



艶やかな唇。



細い身体。



見た目よりも柔らかい、髪。






―― …触らせてたまるか…






三蔵は深い深いため息を吐いて、覚悟を決めた。


「…………分かった。 ……俺が教えてやる」

「え?マジで!?」


嬉しそうにパッと表情を輝かせた悟空に、再度ため息を吐く。

読んでいた新聞をテーブルの上に投げ、ベッドに座ると、悟空を呼ぶ。


「……こっちに来い」

「おう!」


これから何をされるのか全然分かっていない悟空は、嬉々として隣に座った。



「……本当にいいんだな?どうなっても知らんぞ」



最後通告として告げてやるものの、悟空はきょとんとした顔をして三蔵を見上げるだけだった。


悟空に気づかれないように何度目かになるため息を吐くと、グッとその腰を引き寄せる。



不思議そうにしている悟空を気にかけることなく、顔を寄せて。










キスを した ―――。

















はーい
ここからは三空でございまーすvv
ちょっとばかし、エロがレベルアップしますvv
や、まぁ、ホント、微々々エロですけどねvv
早く切なくさせたいものですvv

そして、長編になりそうな予感がすごいです…ιι


(2009.06.25)
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