おベンキョしましょ☆




レッスン

Lesson1




3日ぶりの宿に辿り着いた三蔵一行は、部屋を4つとって、夕飯までの時間のんびりと過ごしていた。



のだが。



解散したというのに、何故が自分の部屋には子猿が居座っている。



沙悟浄は、椅子に座ったまま一言も喋らない子猿…もとい、孫悟空に視線を向けた。

何も喋らないのなら追い出してもいいのだが、いつもの五月蠅い悟空ではないから。茶化したりできる雰囲気ではないことは解る。


「何だよ、悟空。さっきから黙ったままでよ? 言いたいことでもあんのか?」


そう言うと、悟空の体が小さく跳ねる。


―― …分っかりやすいヤツ…


心の中で苦笑しながら、煙草を口に咥えて火をつけ、大きく吸い込む。

吸った煙をゆっくり吐き出しながら横目で悟空を見るが、難しそうな顔で拳を握りしめている姿が映るだけで、話を聞くにはまだ時間がかかりそうだ。

仕方ないと思いながら、再度深く煙を吸った瞬間、悟空が顔を上げ、驚くべき言葉を発した。





「なぁ、俺さぁ……俺っ、悟浄のこと好きなんだ!!」





その言葉の意味を理解するのに、どのくらい時間を要しただろうか。

聞き間違いだといいと願いながらも、咄嗟に頭が意味を理解してしまっていたのか、数分、固まった。


話はもっと後になると思いこんでいたのも手伝って、その言葉が悟浄にもたらした破壊力は抜群のものだった。




「っっっ―――――!!!???」




言われた意味を理解した瞬間、肺に溜まっていた煙が一気に逆流して、盛大にむせてしまった。


こんなにむせたのは人生初めてだ。


「え?おい、大丈夫かよ?」


心配そうに椅子から腰を上げた悟空に、大丈夫という意思表示として軽く手を挙げてみせる。



とりあえず少し治まったところで煙草を揉み消し、悟空へ視線を送った。


「ゴホッ……な、何のジョーダンよ?」


コイツがこんな冗談を言えるだなんて思っていない。

思ってはいないけれど、それを言わずにはいられなかった。

案の定、心外だとばかりに悟空は声を荒げた。


「冗談なんかじゃねぇよ!俺は悟浄が好きだ!」


―― …アッタマ痛ぇ…


一回告げてしまえばもう抵抗がなくなったのか、悟空は悟浄に好きだと連呼してくる。


「聞いてんのかよ!? 俺、悟浄が好きだ!」


ちゃんと聞いている。

それこそ、脳みそが爆発しそうなくらいの衝撃を受けている。


とりあえず、悟空を黙らせる為に口を開いた。


「…わーった!お前が俺を好きなのは解った! ……で?俺にどーしろっつーの?」


そう投げかけると、悟空は何を言っているのか解らないという表情で首をかしげた。

頭の上にハテナマークが浮かんで見えるのは、決して気のせいではないはず。

とりあえず、悟空が何故か悟浄の事を好きになって、告げに来たことは分かったけれど、好きだと告げた後の事を考えていないのだろう。

好きだから、キスしたいとか、Hしたいとか、そういう考えには至っていないようだ。


―― お子ちゃまだよなぁ、マジで…


悟空の発想は、『好きだと想った。だから、告げる』と、そこまでが精一杯。

だから、その後の、深い関係になりたいとかそういったことには、考えが及ばないのだろう。


悟浄が思わずため息をつきそうになった時、閃いたように悟空が顔を上げた。


「だから……だから、えっと……そうだ!俺と付き合ってくれ!」


今思い付いたのが痛いほどよく解る言葉だ。

とにかく、旅はまだまだこれからも続くし、旅仲間としてはいい関係を築いた方が楽に決まっている。

そう考えた悟浄は、分かりやすい理由をつけて危なげなくフッてしまおうと考えた。


「おい悟空、よーく考えろ? 俺は男!お前も男! ………な?付き合うなんざ無理だろ?」


これならば無難な意見だから納得もするだろう。





と、そう考えていたのが甘かった。





「何で男だったらダメなんだよ!?」



「あのなぁ〜…」

「そういうのは差別って言うんだぞ!」


―― 誰だ、このバカ猿に“差別”なんて大それた単語を教えやがったのは……?


これ見よがしに大きなため息を吐いて、口を開く。


「んじゃ、俺は悟空をそういう意味で好きじゃねぇから、無理!」


ハッキリ、キッパリ、自分の意見を告げる。

ここまでバッサリと切り捨てれば、例え悟空でも諦めざるを得ないだろう。


「…じゃあ!どうやったら好きになってくれるんだ?」







……予想外の言葉だ。







「………しぶといね、お前…」


思わずげんなりと肩を落とす。


「仕方ねぇだろ!俺、悟浄が好きなんだ!」


とりあえず少しは余裕が出てきたので、煙草を取り出して火をつけた。

大きく吸い込むと、煙草独特の美味さが広がる。


「俺のタイプは知ってんだろ?ナイスバディな色っぽ〜いお姉ちゃんなんだぜ?何も知らねぇガキ相手にソノ気になるかよ」


そう、自分は女が大好きだ。セクシーな美女が。

自分の好みのタイプを喜々として教えてやると、悟空はカッとなって睨んできた。


「ガキじゃねぇよ!」

「ふーん?んじゃ、キスしたことあんの?」

「っ……」

「ガキじゃねぇってんなら、それくらいあんだろ、悟空?」


本当は悟空がキスをしたことがないと分かっていて、あえてそう言ってみせる。

そう言われれば、悟空も引くしかないだろうから。


悟空は悔しそうに唇を噛みしめて、ポツリと呟いた。


「…………ねぇ、けど…」

「だろ?だったら、ガキって言われても仕方ねぇよな、子猿ちゃん?」


そこで『したことがある』とウソをつけないところが悟空だな、と思う。

シュンとなっている悟空の姿に、後ひと押しだと確信し、一気にたたみかける。


「な、悟空?悪いこた言わねー!考え直せ、な?」


が、先ほどまで下を向いていた悟空は、その言葉で復活し、いつもの強気な瞳を向けてきた。


「考えたって!すっげぇ考えた!!でも俺、悟浄が好きなんだ!」

「………だから…」


―― ど〜してそう猪突猛進してくるのよ、お前は…


「お前みたいなお子ちゃま猿の相手してられるほど暇じゃねぇのよ、俺」

「ガキ扱いすんなって言ってんだろ!!」


いきり立つ悟空に、疲労感が増してくる。

大体にして、悟空は付き合ってからの事なんて想像できていないのだろう。


悟浄にしてみれば、そんなの恋ではない。唯の気の迷いだ。


「つーかお前、付き合うって意味分かってんのかぁ?ただ一緒にいるだけじゃないんだぜ?俺と付き合いたいっつーんなら、そこんとこよーく勉強してきな」

「勉強って、何をすんだよ?」


悟空は意味が分からないとばかりに、首をかしげている。

そういう反応をするとは思っていたが、案の定なその態度に、思わず笑いが出る。


「ほら、わかってねぇだろ?だからガキだっつーんだよ」

「馬鹿にしてんじゃねぇ!」

「ホントの事だろーが。大人はガキにゃできないような、腰が砕けるような激しい運動するんだよ。それも分かんねぇような奴はガキだっつーの」


とにかく、悟空に納得させるのは諦めて、手っ取り早くフッてしまおうと思った。


―― な〜にを血迷ったか知らねぇが……さっさと目ぇ覚まさせてやった方がいいだろ…


こんな間違った道ではなく、正しい方向に目を向けさせてやりたかった。


悟空が何かを考えるように黙り込んだのをいい事に、すばやくこの話題を終わらせようと口を開いた。


「そーゆーガキは、俺のタイプの範囲外もいいとこなんだよ。……分かったらこの話はもう終わりだ」


念を押すようにそう言うが、悟空からの返答はない。


じっと一点を見つめて、固まったように動かない。



―― …どーすっかねー…



最初は、初めての男からの告白に戸惑っていたものの、今では、『男が男を好き』というタブーさえも、『ま、そういうこともあるわな』と受け入れつつある。

が、正直、自分が悟空と付き合うなんて、本当に考えられないのだ。


ガキでアホで大食いで子猿のクセに腕っ節が強くて……バカやって騒げる唯一の旅の仲間。

三蔵や八戒とバカやって騒ぐなんて考えられないし、そんなことしたくもない。

元気だけがとりえの小猿だが、このまま下手に断って、騒げなくなったら…と考えると、この後の旅がかなり憂鬱なものになるのは間違いないだろう。


大体、悟空の元気がないだけで、旅の道中の4人の雰囲気は一気に重苦しいものになるし、三蔵と八戒は責任を俺になすりつけて、悟空をどうにかしろと殺気立った視線を送ってくる。

いつもは悟空なんかどうだっていいという風を吹かしている三蔵も、我がままを言われて困った顔で苦笑する八戒も、本音では悟空のことを気にかけまくっている。

そういう自分も、悟空の元気がないと、わざとちゃかしたように話しかけて、元気付けたりしてしまう。



結局のところ、みんな悟空が可愛いのだ。………変な意味でなく。



何も言わない事に困りきってポリポリと頬を掻いていると、ふと悟空が顔を上げた。


「…………ガキじゃなくなれば、いんだな?」

「は?」


何を言ったか聞き取れなくて聞き返すと、焦れたような顔で、睨みつけてくる。


「だから!悟浄のタイプは大人な奴なんだな!?」


鬼気迫ったような表情で返答を待つ悟空に、少し考えた後頷いてやった。


「……あ〜…まーそうね」


後腐れないほうが楽でいいのは本当だ。

『大人』というだけが悟浄のタイプになるという訳ではないのだが、それを言ってしまうとまた面倒な事になると思い、肯定するだけに留めた。

すると、悟空は先程のだんまりが嘘のように元気よく椅子から立ち上がり、笑顔を見せた。


「わかった! んじゃ、とりあえず腹減ったから飯行くぞ!」


言うが早いか、もうドアに手をかけて夕食の待つ食堂へと足を進めている。


「…………てめ、ホンット〜に色気より食い気だな」


切り替わりの速さにため息を吐きながらも、笑顔を見れた事でホッと胸をなでおろす。




―― 分かったって言うけど、ほんとに解ったのかね…




そんな少しの不安を残しながら、出て行く悟空の背中を見送り、新しい煙草に火をつけた。


















初☆最遊記ノベルですvv
モチロン、悟空総受け 至上主義ですvvvv

このお話は、ちょっと切なくしていきたいと思いますvv
説明にも書きましたが、浄空ですが、三空アリアリでございますvv
それこそ、「ホントに浄空かよっΣ」ってツッコミを入れたくなるくらいには、三蔵悟空を絡めますvv
ほんのちょこっと、八空テイストも含む予定だったりvv
でも最後には浄空なので、ご安心くださいませvv

そして、基本的に微エロでございますvv
作者の趣味ですvv
争奪戦とエロ、大好物なのですvv(笑)
ダメな方は、即回れ右してくださいませね


(2009.06.16)
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