16本のRote Rose




「あ・・・。おい、戸叶どうすんだ?」

 「は?何を」

 極度の疲労ですでに眠りについた黒木を挟んだ、その向こうに見える戸叶の

顔は、十文字の問いを理解していない。

 あまり大きな声を出すと黒木が起きてしまうので、小声で“こいつの誕生日”と

伝える。

 「ああ。いや、一応リクエストは聞いてんだけどな。どっかで電話しねーとなぁ」

 「はぁ?電話??」

 誕生日と電話が、一体どうつながるというのか。

 「何々?何の話だ?」

 緊張感の欠片もないモン太に、十文字は言葉を遮られた。

 「るっせ。関係ねーって」

 片手で追いやるしぐさをすると、逆効果だったらしくますますつっかかってきた。

 「ムキャー!まさか今更逃げる相談か?!」

 「は?」

 「はぁ?」

 まったく見当違いの指摘に、呆れて言い返すのも面倒だ。

 「バカはほっとけ」

 「だな」

 しかし、耳ざとい者はヒル魔だけではなく、3人の話を聞いていた姉崎が

クスクスと笑う。

 「別に、隠さなくてもいいんじゃない?誕生日くらい」

 「誕生日ぃ?」

 「そ、黒木君の誕生日の相談なんでしょ?」

 あぁまったく、面倒な事になったと、2人は小さくため息をついた。

 「いつなんだよ?」

 「―――9月2日」

 騒ぎを聞きつけたセナや雪光達の視線に耐えられず、諦めて短く告げる。

 「あー、時間ないねぇ」

 最悪、9月1日に走り回ることになりそうだ。

 「ラスベガスまで後どんくらいだ?」

 「半分・・・は過ぎたと思うよ?」

 心もとない雪光の推測だが、今はそれを前提とするしかないだろう。

 「パーティー・・・はちょっと無理だけど、プレゼントくらいは用意したいわね」

 「「あーもー好きにしろ」」

 雪だるま式に転がり膨れていく話に、投げやりな気分になるのだった。











     −当日―



 ふらりと(ヒル魔を除く)全員が集まった屋上で、即席お誕生日会は行われた。

 『おめでとう!!』

 「あ、りがとうゴザイマス」

 あっけにとられた黒木の両腕に、どさりとプレゼントが積まれる。

 大小様々な包みが、色とりどりに自己主張している。

 「ちょっと、ケーキは用意できなかったの。ごめんね?」

 季節柄、生ものは危ない。

 「いやいや、そんなんいいっすよ」

 一体何がどうしてこうなったのか、デス・マーチ中のやりとりを知らない黒木は、

慌てて首を振る。

 「あれ?戸叶君は?」

 盛り上がるメンツの中に、戸叶の姿がない。

 「戸叶君、さっきフラッとどっか行っちゃったんだ」

 教室を出て行こうとする戸叶に声をかけたが、すぐに戻ると言われたのだとは、

セナの話だ。

 「そうなの。・・・?」

 ふと、校舎内が騒がしく、ざわめきが開かれたままの扉から聞えてきた。

 それは段々と近づいてくる。

 「何だぁ?」

 モン太が、扉を覗こうとした瞬間・・・。

 『?!』

 真っ赤な大輪の薔薇の花束を脇に抱えた戸叶が、いつもの無表情で現れた。

 「おめでとさん」

 バサリと花束を黒木に渡す。

 「お〜!トガありがと!!」

 それを大喜びで受け取り、黒木はにかりと満面の笑みを浮かべた。

 「はぁ?リクエストってこれかよ!」

 黒木が戸叶にリクエストしたもの。

 それこそがこの花束だ。

 「そーそー。前に映画で見ててさぁ」

 ちょっといいなぁって。

 「その後さらに『100万本の薔薇の花』聞いたからな」

 影響受けまくったんだろ。

 「だって、好きな人から誕生日に花束もらうのって、何か良くね?」

 「って、ねだられたしな」

 ((ねだられたからって、本当に買ってくるか?!))

 呆れるメンツなどお構いなしに、2人はマイペースに話を続ける。

 「でも、これ、高かったでしょ?こんな大輪の薔薇・・・」

 薔薇の本数は歳と同じ16本。

 あまり薔薇の価格になど詳しくないが、花束に使われているそれがかなり

高価なものだという事はわかる。

 「金額なんて、ヤボなこと聞かねぇでください」

 姉崎の言葉に、唇を引き伸ばして戸叶が微笑む。

 ((オトコ前だ〜!))

 花束を抱いて嬉しそうに笑う黒木の頭を撫でる戸叶は、とても高1とは思えな

い程大人っぽい。

 「しかしまぁ、たくさんもらったな」

 ごちゃっと広げられたプレゼント。

 食べ物がほとんどのその中に、そうではなさそうな包みも。

 「?えらい軽いな」

 紙袋に入ったそれは、大きさに比べて随分軽い。

 「ぁ、あー、それオレ。帰ってからあけろよ」

 ニヤリと笑う十文字は、悪戯っ子の顔をしている。

 「・・・・・・」

 何となく、袋の中身がわかる気がするのだった。





 ザワリ。

 一度は落ち着いていたざわめきが、ふたたび校内に広がっていく。

 しかし、その原因達はざわめきを気にも留めず、ただ仲間内での会話に

いそしむ。

 (ねぇ、すごい視線集めてるけど・・・)(セ)

 (気がついてないトコが怖ぇーな・・・)(モ)

 コソコソと後ろでの会話も耳には入らないらしい。

 花束を大事そうに抱えた黒木と、他のプレゼントを持ってやっている戸叶は

かなり目立っている。

 (そういえば、戸叶君ってあの花束持ったまま校舎の中歩いてきたんだ

よね?)

 (それで余計に人目引いてんのか)

 戸叶が花束を持っていたのを目撃した方から見れば、花束が黒木に渡って

いる事に疑問を持つだろう。

 よもやイマドキの男子高校生が、誕生日に花束をリクエストしたなどとは

思うまい。



 ((プロポーズ?プロポーズしたんですかぁ?!!!!))



 そんな目撃者さん達の本音。













 「トガー、ご飯まだ??」

 部活後、戸叶の家に上がりこんだ黒木は、夕食を作る戸叶の背後でもらった

プレゼントを開けていた。

 「もう少し。結局、何もらったんだ?」

 「ん〜、雪さんからテーピング。猿からヤキソバパン。セナからメロンパン。

姉崎さんから湿布。フゴデブから・・・」

 実用的であったり、食べ物であったり。

 「で、これは十文字から・・・はぁあぁあ?!」

 「何だったんだ?」

 ガサガサと紙袋のこすれる特有の音がやみ、黒木の叫び声が狭い部屋の

中で響く。

 背後から黒木の手元を覗き込んで、ソレを確認した。

 「・・・やっぱりか」

 あの笑顔はこれが理由だったかと、戸叶は呆れて黒木の持つソレを取り上げた。 

 「・・・イチゴ味、ねぇ。ん?メッセージカード・・・」

 箱の隙間に挟まっていたメッセージカードには、十文字の手書きメッセージが

書かれていた。

 『ま、頑張れ?』

 何をだよ、とは心の中で突っ込んで。

 「せっかくだし、使うか?」

 「はぁあ?!(//□//)」





さて、今夜の浩二君の運命やいかに?







Happy Birthday!!









楼楼様より。浩二誕生日記念フリーSS。
まんまと頂いて帰りましたvvもう、素敵すぎなんですけどっ!!
つか!トガ男前だーvv最高だーvv
バラの花束持って廊下を歩く姿…想像しただけでも涎がとまりません(y^^y)
本気で幸せになりました〜vvありがとうございました☆ミ
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