ただ 君を護りたい


それだけ  だったんだ  ――




White lie

-序-




コロリと寝返りを打つと、すぐに腕が伸びてきて抱きしめられた。

工藤新一がうっすらと目を開けて後ろを振り返ると、まだ夢の中にいる恋人、服部平次の顔が見える。

きっと抱きしめたのは無意識だったのだろう。

まだボーっとする意識の中、それだけのことがとても嬉しくて、新一は再び寝返りを打って平次に向き直るとその背中に腕を回した。

すると少しだけ強く抱きしめられる。これもきっと、無意識だろう。

思わず頬を緩ませながら、再度眠りにつこうと瞳を閉じた。


幸せとは、きっと、こういうこと。

平次と付き合ってから、新一はいろんな感情を知ったと思う。

怒りを。悲しみを。楽しさを。嬉しさを。


…幸せを…。


そしていろんな、言葉では言い表せないような、カタチのない暖かいモノも、もらった。

平次と一緒にいると、毎日が幸せで幸せで。



多分、絶対。



平次と一緒にいられる自分が、世界一幸せな奴なんだと思う。



トクン、トクン…という、少し早い自分の心臓の音が酷く心地良く聞こえる。

何だか幸せすぎて、眠るのがもったいないとさえ思ってしまう自分は重症なのだろう。


と、抱きしめられている腕にぎゅうっと力が入った。


「ん…工藤?どないしてん?」


次いで眠そうな、寝起きの掠れた平次の声が聞こえてきた。


「悪ぃ、起こしちまった?」

「ええよ。何や、眠れへんのか?」


くすっと優しい笑みを浮かべた平次は新一の髪をそっと撫でた。

新一の髪が本当は柔らかい事を知っている人間は、恐らく、少なからずいるだろう。

でも、新一が大人しく髪を撫でさせる人物は自分だけ。

そう思うと平次は嬉しくて堪らなくなる。


「ん、何かもったいねぇなと思ってさ」

「何がや?」


平次は純粋に疑問を口にしたのだが、新一は何やら少し考え、ペロッと舌を出して見せた。


「……秘密。お前、調子乗るから言ってやんね」


言ってクスクスとあまりに楽しそうに笑う新一に、思わず許してしまいそうになるが、それではイカンと気を引き締める。


「ほぉ?俺に隠し事出来ると思てんのか?」


ニッと不敵な笑みを浮かべた平次は一瞬のうちに、逃すまいと新一の上に覆い被さった。


「わっ、はっと…」

「言うまで許さへんで♪」


言うが早いか、新一の弱点の一つである耳の裏に舌を這わせる。


「っぁ!」


ビクッと跳ねた新一の反応にふっと目を細めながら、丹念に耳を愛撫していく。


「ぅあっ、はっとっ…!や、めっ…!」

「ホレ、言えや?」

「っ…わかっ…んぅっ」


新一はいとも簡単に陥落して頷いた。が、平次は新一の言葉を聞くことなく、いざ新一が口を開こうとしたその瞬間を狙ってその唇を塞いだ。

すぐに舌を滑り込ませ、新一を堪能する。


「んっ…ふ、ぁっ……も、言うっ…んぅっ…か、らっっ…」


平次の肩を押し返しながら必死に言葉を紡ごうとする新一に、平次は喉の奥でクッと笑った。


「…っ…全然、聞こえへんっ…」

「ぇっんんっ…!!」


意地悪く新一の言葉を遮り、キスをしながら胸の突起に手をかける。途端に平次の肩に置かれた手にぐっと力が込められた。

新一は本当に敏感で、少しの愛撫でも面白いほど反応する。


そうなるように……平次が、教えた。


「んっ…は、なしっ…っぅ…はぁっ…っ…聞、け…って、ぁあっ!」


頑張って平次に話をしようとする新一に、平次はようやくキスを止めてやった。


「…ええよ。話、せぇや………… 出来るんやったら、な…?」

「え、なっ…ぁ、待てっ!!」


新一の制止の声も聞かずに平次は新一自身に手をかけた。


「っぁあ、あっ!…ぅあ、……やっ!!は、とっ――っあっ!」

「何言うてるか、解らへんで…工藤っ…?」


平次は新一の感じるポイントを的確に、集中して愛撫を続けた。

こうなってしまえば誰にも平次を止めることなど出来ない。

最初は本当に口を割れば許してやるつもりだったのに。新一があんなに色っぽい声を出したから。


止まらなくなったのは……平次の方………。


新一の高ぶりを抜きながら、体中にキスの雨を降らせる。


「ひゃっ、あっ…もぅ、んんぅっ!」

「…ほーんま…ええ声、出すなぁ……」


声を聞くだけでゾクゾクする。体の奥から熱くなっていく。

最高のBGMを聴きながら、昨夜の事情の残る後ろの秘孔に指を沈める。

指を動かすたびに、増やすたびに、新一は声を上げ、体がビクンと跳ねる。

その反応もとても可愛い。


自分に感じてくれている証拠だから、とても嬉しい。


「っ…あ、はっとっ…も、…」


新一から懇願するような瞳で見つめられ、自分の高ぶりがドクンと脈打ったのが解った。


けれど、まだだ。


もう、少し。


「ん?何や、工藤?」


新一が求めていることが何なのか解っているのに、解らないフリをして愛撫を続ける。


「っ…こ、のっ…ぅあっ」


秘孔に埋めた指を新一のイイ所に掠めながら、責めるように涙を浮かべて睨む新一の耳元に意地悪く囁く。


「言わな、解らへんで?」


新一は顔を真っ赤にして唇を噛み締めながら、少し戸惑ったように視線を泳がせる。



しかし、平次のやむことの無い愛撫に涙ながらに声を上げさせられて。

やがて、消え入りそうな声で呟いた。


「っ〜〜…っほ、しぃ……服部、早くっ」

「ええでっ…俺も工藤が、欲しい…」


望む言葉をもらい満足した平次は、自分ももう我慢の限界だとばかりに一気に新一の中に欲望を埋めて行った。










 











「ほんで?結局何やったん?」


行為を終えて。一息ついて。

事の発端となった質問を平次は繰り返した。

新一はぐったりとベッドにうつ伏せながら、ジロリと平次を睨んだ。


「…言う、って俺、言ったのに…お前が言わせてくれなかったんじゃねぇか…」

「せやかて、工藤が可愛えんやもん」

「も、絶対ぇ教えてやんねー」


少しも悪びれずに言う平次に憤りを感じた新一は、ぷいっとそっぽを向いた。


「ふーん?」


呟いた平次の声色に、新一はギクッとした。


「そないな事、言うてもええ思てんのか?言うたよな、工藤?言うまで許さへん…て」


ギシッとベッドを移動すると再び新一に覆い被さってきた平次に、新一は本気で焦った。


「わ、ちょ、待て!」


平次に抱かれることはそれ事体が幸せで、嫌なんかではない。

が、先ほどしたばかりなのに、こう続け様にされては新一の体が持たないのだ。


「せやったら、言うてみ?」


ニッコリと笑う平次を新一はぐっと言葉に詰まった。

意地っ張りな自分から言葉を引き出す力を平次は持っている。

ホレホレ、と新一の髪を撫でながら優しく囁く平次に、新一はとうとう折れた。



「だ、から…服部が 傍にいるのに…眠っちまうのはもったいねぇな、って思ったんだよっ!それだけっ!」



「っ――!?」



瞬間、平次はがくーっと力が抜けたように布団に顔を埋めた。

今のセリフは、キた。

どうして自分の恋人はこんなにも可愛いのだろうか。

こんなに可愛すぎる恋人を持つと、心臓が幾つあっても足りないと本気で思ってしまう。


「…どないするつもりやねん」

「え?」

「今でも相当ヤバイゆーのに、これ以上工藤に惚れさせてどないするつもりやねん」


新一の顔が一瞬で朱に染まり、口をパクパクさせている。


「お、おまっ……」


平次はクスっと笑って、耳まで赤くなる照れ屋な恋人をぐいっと引き寄せて抱きしめた。


「好きやで、工藤…めっちゃ、惚れとる」


いくら言っても、足りないくらい。

こんなにも際限のない想いがあるなんて。

頬に、額にキスを落としていると、ゆっくりと新一が平次の背中に腕を回してすり寄ってきた。


「…俺、も…お前、好き…」


そう嬉しそうに笑って言うから。

愛しさが止められない。

止められる、わけがない。


再びぎゅーっと強く抱きしめると、ずれてしまった布団を新一の肩まで上げ、眠そうな新一に微笑んだ。


「もうちょい眠り。時間なったら起こしたるから」


新一は素直に頷いて眠気から来る舌足らずな言葉を告げる。


「ん…おやすみ、はっとり…」


言うと、すぐに新一は眠ってしまった。少しばかり無理をさせてしまった所為だろう。

平次は起こさないようにそっと新一を抱きしめ、寝顔を見ながらポツリと呟いた。


「帰したないなぁ…ホンマに…」


今新一は平次のマンションから歩いて10分程度の距離のところに住んでいる。

大学が決まると同時に新一は工藤邸を出、マンションに引っ越した。

本人いわく、いつまでも親に頼りっぱなしじゃ申し訳ないし自立してみたいから、だそうだ。

平次も同じ大学が決まったものの、その頃はまだ片想いで、両想いになれるなんて夢のまた夢の夢だと思っていた。だけど少しでも近くに、と平次は新一のマンションの近くの物件を探して契約したのだった。

しかし、晴れて両想いになった今思うのは、『一緒に住みたい』ということだった。

最近の平次の頭の中はいかにして新一と一緒に暮らすかということが大部分を占めている。

今の家も悪くないし、新一の家とも近いのだが、やはり足りない。

平次が新一の。新一が平次の帰る場所になりたいのだ。


―― もうちょい金貯めたら、言うてみよ…


そんな事を考えながら、徐々に迫りくる睡魔に身をゆだねる。

新一の額に一つキスを落とすと、腕の中にいる大切な存在を確かめながら、平次も眠りについた。




幸せで。




温かい、日々。





そんな幸せが……。








ずっと続くのだと、信じていた―――――。












ようやくUPすることができましたvv
15000リク小説ですvv
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