伝えたい気持ち

〈8〉



まず平次は新一の行きそうな所を考えた。

一度は行ってみたいと言っていた県や場所。楽しそうに語ってくれている姿を思い出してみる。


しかし、新一は平次が探そうと思っていることなどお見通しだと思う。なんせ、律儀に手紙にも書かれてあるのだ。

それを思うと、自分が以前行きたいと言っていた場所に足を踏み入れるなんて考えられない。

なぜなら、腐っても平次は西の名探偵。新一の行きたい場所を真っ先に調べるなんて基本中の基本。頭がいい新一は調べると分かっていてそこに行くことなんて、まずしないだろう。

それならそれで、新一を見た人がいないか聞き込みから始めればいいのだが、そんなにちんたらやっている暇はない。


平次は必死に思考を巡らせた。


その時、ふと思い出した。


そう、それはまだ新一がもとの姿に戻ったばかりの冬だった。





 






平次が修学旅行の写真を新一に見せようと思い、これでもかと言うほど持ってきたことがあった。

『工藤!見てみぃ、俺らの修学旅行の写真や♪』

いきなり写真を広げ始めた平次を、新一は眉を顰めながら見た。

『は?別にいい…』

『んな冷たいこと言わんと、な?』

嬉しそうに話す平次に、新一は折れた。

『…ったく、で?何処行ったんだ?』

『なんやぁ?行く前と行った後何回も言うたやないか!土産も買うてきたったゆうのに…』

『…悪かったなぁ』

『も〜、覚えたってやぁ?北海道や、北海道!』

『ああ、確かそんな事言ってたよな…』

『ほんま冷たいやっちゃなぁ』

『…いいから、見せろよ』

ぶつぶつと文句を言いながらも写真を渡した平次は、新一の反応を待った。

『どや?』

『……どうって…お前、バカすぎ…』

新一の言ったとおり、その写真の8割は平次がクラスのみんなとバカ騒ぎをしているところを撮ったものだった。でも、写真からはクラスの人気者な平次が伺える。

『せやかて、楽しかってんもん』

『ほんと、バカだな』

『バカて言うなや〜』

ふて腐れている平次を横目で見ながらくすりと笑った時、一枚の写真が新一の目に入った。

『……』

何も言わず見ている新一を不思議に思った平次は、ひょいと新一の見ている写真を一緒になって覗き込んだ。

『何や?』

『…服部、これって何処?』

真っ白な銀世界。その先には海があり、絶壁の岩に波が打ち付けている。崖みたいなその場所。

『ん?ああ、それは女笛岬て言うんやて。何や知らんけど、友達が撮ったの 気に入ったからもろたんやけど…』

『ふ〜ん…』

返事はそっけないものの、真剣に魅入っている。

『気に入ったか?』

『……ん』

『そかそか♪』

その言葉でご機嫌になった平次はコーヒーを入れようとキッチンに向かった。その時、

『……見てみたい…な……』

と新一がぽつりと言ったのを聞いたのだった。




 






これはもう、賭けである。

あんなに昔の事を覚えているはずがないかもしれない。

しかし、見てみたいといった新一の瞳が綺麗だったから……そこに行くのではないかと思わせた。それに、見てみたいと言った新一の言葉を平次が聞いていたなんて思ってもいないだろうから。

それがあかんかったら、パトカーでもなんでも使えるものは全て使こうてみせたる。

捜索願いも出したるわ!

指名手配でもしたる!

平次はすぐさま荷物を鞄に詰め込んで、飛行場に急いだ。





 






一面、真っ白な銀世界で静かだ。聞こえるのは規則正しい波の音だけ。

はあと吐いた息は白くなって、そして消えた。


平次の推理したとおり、新一は女笛岬に来ていた。

一度でいい……見てみたかった場所。それをしっかりと目に焼き付ける。


女笛岬という名には由来があると調べてみて、知った。

その昔、嵐の日に船を出したまま帰ってこなかった漁師の夫を、くる日もくる日もそこで待ち続けた妻が、とうとう岩になってしまったという言い伝えがあるらしい。その岩に風が当たると鳴り出す笛のような音が、愛する夫に二度と会えなくなってしまった妻の泣き叫ぶ声に聞こえるので、その名がついたという。



「愛する人に二度と…会えなくなってしまった…か」



自分も岩になってしまえば、少しは楽になるのだろうか…?




ふ…と笑って首を振った。


岩になっちまったら、二度と服部の顔 見れねぇじゃん…



たとえ楽になんかなれなくても……見つめていたい……


ここまでくると、本当にどうしようもないと自分でも思う。


アイツはこれから好きな人が出来て、結婚して、子供作って、幸せに暮らして……



俺はライバルとしてでいいから、傍に…いさせてくんねぇかな…



そうして年老いて………死ぬ時はこっそりと服部を想い続けたこの気持ちだけを持って逝こうかな……迷惑だろうけど………





くすっと笑って銀世界を見る。





なんだか真っ白な雪に自分も癒されているような錯覚も覚えて。


これから、何処へ行こうかな…


なんて事を考える。





 






運命は、本当に残酷で……やっと大切なものに気付いたのに、それをあっさりと連れて行ってしまう。

連れて行かれたくなければ、しっかり捕まえておけと誰かが言った。


やってやろーやないか!


飛行機の中、決意を新たにした平次は拳を握り締めた。


工藤の傍におるためやったら、何でもしたる!


そういえば、最初は新一との思い出を懐かしんでいたはずだった。それなのに、気が付くとそんなことを考えてしまっていた。

考えている間、自分の鈍さに笑いがでた。

新一を好きだと考えてみると、思い当たる節が、次々と出てきた。

一度分かってしまえば、後は簡単に納得できるもので…。

キスをしたかったのも、可愛いと思ったのも、ずっと一緒にいたいと思ったのも、とにかく全部の原点は、新一が好きだという事。

別れると言わなかったのも、自分が新一と別れたくなかったから。

実は、新一と同じ大学に行きたいが為に東京の大学を受けたという事も気が付いた。



北海道まで、あと一時間。


もっとスピード出せへんのかいな…


そんな、航空会社の人々が聞いたら怒り出しそうな事を考えた後、再び平次は新一を想った。





やっとここまできました(*T▽T*)次でラストになります
平ちゃんは絶対行動派だと思いますvv
考えるよりも行動♪特に新ちゃんのことに関してはハンパじゃありませんvv
早く新ちゃんを捕まえてあげて☆☆
ではでは
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