伝えたい気持ち

〈6〉



「バイバイ……服部………」



それだけ言い残して新一は平次に背を向けて公園を出た。



新一がどんどん小さくなっていくのを、なんだか客観的に見ていた気がする。


新一の本音が聞けた…


……しかしそれは自分を想ってのことだったのだ……自分がここまで新一を追い詰めた………




『服部は優しいから…』と工藤は言ったが、優しさだけで人と付き合えるということはないだろう。

『人のことばかり優先しやがって』なんて言葉は、新一にこそピッタリなのではと思った。


いつも平次を見て、平次の事を想い、平次を一番に考える。

告白した時も、俺の幸せ なんてこと考えとったんか…?

せやから、俺が驚いとった間に一人で自己完結しとったんか…?



ほんま… アホちゃうか、工藤は……



東の名探偵が聞いて呆れるわ。


俺の気持ちなんか、全然分かってへんやんか………


告白された時も、嫌悪感など全然なく、びっくりしたが、 むしろ……










ふと自分の考えに首を振り、考え直す。


………これで………良かったんや……




  ズキン…




俺は工藤の事……好きやなかっ…た…し………?




  ズキン……




工藤は……もうこれ以上辛ぅないんやし………




  ズキン………




なのに………何でこないに胸が痛むんや……?




  ズキン…………!




わけ………分からへんわ………




  ズキン……………!

  ズキン……………!!




家に帰り着いても胸の痛みが取れることはなかった。





 






気が付くと、平次は真っ白な空間に一人たたずんでいた。



  何処や、ここ……







一面に広がる純白の世界。辺りを見ても白しか見えない。

その時、 声が、した。




















「服部!」


















胸がキュンと締め付けられるような痛みに襲われる。そして、自分がこんなにもこの声を探していた事に気付かされた。




「服部!」




再び呼ばれた。声のするほうを振り返ってみると、そこには、あの幸せそうな綺麗な顔で笑う… 














新一がいた。
















「どした?服部?」



その声に誘われるままに新一に走り寄る。


  工藤…!


思うように速く走れない。もどかしさが胸を焦がす。

一刻も早く新一の所へ行きたいのに…足が重い。


  工藤…!!


新一はずっと笑顔で手を広げて待っている。その頬に、髪に、全てに触れたくて……手が触れた瞬間、引き寄せて抱きしめた。


  工藤!!

  もう二度と離したらへん!!



思いのままに口付ける。それをすぐに深いものにして、新一の存在を確かめる。その暖かさに、溺れるように、新一を抱いた。


服を脱がせるのももどかしくて、そんなことしている時間が勿体無くて……たくさん新一に触れたくて……夢中になって新一の身体を貪る。


  工藤!


真っ白な肌に一つ一つ所有印を刻んでいきながら、平次の手は常に新一を求め、留まる所を知らない。


  工藤!


何度も、何度も。熱に浮かされたように繰り返し新一の名を呼ぶ。

身体が熱くて……新一が欲しくて………

平次に抱かれている新一はとても色っぽく、その全てで平次を誘う。

潤んだ大きな瞳。上気する頬。口から出る声は平次を駆り立てるのに十分すぎるほどだった。


  工藤!


平次が呼ぶと、ふと新一は瞳を開けて平次を見、平次の大好きな顔で






微笑んだ。








  工藤!!












  好………























そこまで言った瞬間、腕に抱いていたはずの新一が消え、少し離れた所で新一はあの時と同じに、瞳に涙をいっぱい溜めて笑った。








「バイバイ……服部………」








一言言い残すと、新一はどんどん遠ざかっていく。



平次は何とか体を動かそうとするのだが、金縛りにでもあったかのように、ピクリとも動かない。叫ぼうとするが、声も出ない。




  工藤!!行くな!!





  まだ……まだ伝えてへんのや!!


















そこで目が覚めた。

ガバッと起き上がり、浅く短い呼吸を繰り返す。

辺りを見回してみるが、真っ暗で何もない。

ようやく目がなれた頃に、自分は家に帰ってすぐに寝てしまったことを思い出した。


「……なんや……夢か……」

平次はくしゃりと自分の前髪を掴んだ。

どうしようもない思いが胸を駆け巡る。


胸が…張り裂けるかと思った……


心が…痛い………



もうとっくの昔に分かっていたはずなのに………



「ほんま…あほや……」

なにが『俺は工藤の事好きやなかったし…』、やねん……


こないに工藤の事が好きやのに………


工藤の事しか……見えてへんのに………


今更気付くて……ほんま………あほやんか………


身体が…心が…全てが……自分の求めている人を知っていた。

笑った顔。困った顔。泣いた顔。怒った顔でさえも全てが愛しい。






後悔の念は激しく、夜中平次を悩ませた。






やっと平ちゃん自分の気持ちに気づきました♪これからどう出るのでしょう??
しかし平ちゃん。鈍すぎるんとちゃいまっか??(笑)
まぁ、失ってから初めて気づくって言いますしね。
さて、次はどうなるやら〜(笑)
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