伝えたい気持ち

〈4〉



朝、6時。

そろそろ起きようかなと思っていた矢先に、平次のケータイがメールの着信音を鳴り響かせた。

見ると、新一からで…『朝一でレポート出すから先行く』というものだった。


付き合いだしてからは毎朝一緒に行く事になっていたので一緒に行けないとメールが入ったのだった。

いつもの事ながら本当に素っ気なく簡潔な一文だ。


「なんや、工藤、えらい早いなぁ…」


その時はまだ、『朝弱いくせに大丈夫かいな…』位にしか思っていなかった。




しかし、そこで気付くべきだったのだ。





新一の微妙な変化に。





 






新一と平次は同じ講義をいくつも取っているので、休憩時間は二人で話しながら教室に移動。というのがいつものことだった。

しかし、今日は5分前になっても新一が現われない。


今日は朝早よ出たはずやから、来とってもええのに……


そんなことを思っていると、鐘が鳴った。その鐘と共に新一が息を切らせて入ってきて、そのまま扉の近くに座った。

いつもなら平次の隣に座るので、席は確保しておいたのだが…


ギリギリやから、しゃーないか…


その時も、その程度で済ませてしまった。

しかし、それだけで終わりではなかったのだ。











授業が終わると速攻で教室を出、また始まるギリギリに席につく。

休憩中に話そうと思っても、それより先に新一が出てしまうのだから取り付く島もない。


結局、今日一日一言も喋らなかった。


そのことに苛立ちを感じた平次は、最後の授業が終わると同時に新一のケータイに電話した。

その電話に何度もコールしたが、新一が出る事はなかった。

仕方がないので、家で新一の連絡を待つことにした。





 






10時頃、平次のケータイがなった。素早くディスプレイを確認すると、勢い良く電話にでた。

「もしもし?工藤?」


『あ、服部?電話掛けてきたよな?何?』


「………」



いつもの新一の口調なのだが、何だか素っ気ないような気がする。


『服部?』


「あぁ、すまんな」


『で?何?』


「いや、今日全然姿見えへんかったから、どないしたんかと思って」


『…別に…授業には出てただろ?』


「そうやなくて、いつもなら…」


『なぁ、俺今ちょっと忙しいからさ、今度にしてくんない?』


「は?…あぁ、そらええけど…」


『それじゃ…』



それだけ言うと、電話は切れた。


やはり素っ気ないと感じたのは自分の気のせいではないみたいだ。


何なんやろ…?何かしたか…?


考えるけれど、答えは出るはずもなく夜は更けていった。







ピッとケータイを切った後、新一はしばらくケータイを眺めつづけていた。

さっき平次に言った忙しいなんてことは全然ない。

先ほどまでは電話を掛けないための口実に本当にレポートをしていたが、後はケータイに映る平次の番号を見つづけていたのだから。


服部……変に思った…よな………


早くも自分の決意が揺るぎそうになり、慌てて首を振る。


駄目だ……アイツに言ってもらわなきゃ、意味がない……


辛そうに眉を顰めてケータイを握りしめた。





 






それから、次の日も、そのまた次の日も新一は何かと理由をつけて出来る限り平次と顔を合わせない。

電話にはでてくれる……が、用事がないとわかると、すぐに切りたがる。

平次が引きとめようとしても、電話はむなしく切れてしまう。


そんな毎日が1週間続いた。


自分でも何故だか分からないが、ひどく辛い。

さすがの平次も、理由もわからずにこんな態度を取られるのでは納得がいくはずもなく、とうとう電話で怒鳴ってしまった。



「何やねん、自分!そんなに俺の顔見たないんか!?」


『違っ…』


「何が違うねん!俺が何も分からん男て思うとるんか!?」



少しの間沈黙が流れる。




『…じゃあ、服部………お前、何か俺にいう事ないか…?』




自分が新一に追求しようと思っていたのに、逆に聞き返された平次は、苛立っていたのも忘れて間の抜けた声を出した。


「は?言う事…?」


『…俺、ずっとそれを待ってたんだぜ…?』


「それ…て…何や?」


受話器から、新一の悲しそうなため息が聞こえた。


『そか……分かってないなら……いいよ…』


「ちょお待て!ええ訳あるかい!」


『いや、本当いいんだ…じゃあな…』




一方的に納得して、新一は電話を切ってしまった。


こないな事やっててもらちがあかん!


そう思った平次は、バイクの鍵を取り、上着を羽織って外に出た。

夜はすでに暗く、細い月が出ているだけだった。




 






ピンポーン。

家のチャイムが鳴ったが、今は誰とも会う気分ではなかった新一は、ケータイを抱えたままベッドに伏せた。

飽きることなくずっと平次の番号だけを眺めていた。


ピンポーン。

無視を決め込んだ新一は、ケータイを持っていない方の手で耳を塞いだ。


ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

来客者はしつこくインターホンを鳴らす。

だんだんと新一も苛立ってきた。


ピポピポピポピポピポピポピポピポピポ……


ついに新一は切れた。ケータイをベッドの上に置いて、玄関までドスドスという音を立てながらドアに手をかけた。



「うるさい!!誰だよ!?」



来客者の顔を見て怒鳴ってやらなければ気がすまない。

新一は乱暴にドアを開けて唖然とした。


「居るんなら、早よ開けろや。工藤。」


服部だった。




新一は驚きのあまり、言葉が出なかった。

な……何で……ついさっきまで電話をしていた相手がこんなところにいるのだろうか。こんなに早いと言う事はバイクで来たと言う事で…。

そんな事を考えていると、平次が首を傾げた。


「工藤?」


「あ…あぁ」


返事をすると、急に頭がスッキリして状況が見えてきた。

「じゃなくて、何で来たんだよ!?」

「来たらあかんの?」

「駄目とかそういう問題じゃなくって…明日話せばいいだろ!?」


少しばかり荒げてしまった新一の声が響いた。

流石に近所迷惑だと思ったのだろう、新一はため息を一つ吐いてすぐ近くにある公園を指差した。


「あそこで話そうぜ。コート取ってくるから先行ってろよ」

その言葉に平次は頷き、ゆっくりとした足取りで公園に向かった。





新一の不可解な行動に悩まされる平次。
若い若い(笑)
これから新ちゃんの本音トークはいります
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