伝えたい気持ち

〈2〉

〜新一side〜




そうこうしている間に、付き合いだしてから3ヶ月経っていた……



付き合いだしたといっても、大して何も変わらなかった。しいて言うなら、毎週土日には二人で遊びに行ったり、家でゴロゴロしたりという、二人の時間が増えたという事だろうか。

なんだかそれだけのことなのに、新一は嬉しくて、平次を見る瞳が優しくなる。とはいえ、性格上、ほとんどが素直になれず、ついキツイ言葉を言ってしまう。

平次も、新一の性格を良く知っているので、笑って許してくれる。

ふと言われた言葉でも、本当に嬉しくなり、つい顔が笑ってしまう。

ぽんぽんと頭を撫でたりしてくれる時もある。そんな平次の仕草全てが好きだと思う。それは、決して口になど出せないけれど……。





 






待ちに待った週末がやって来た。

今日は家でゴロゴロしようと言う事になり、新一は新しく買った推理小説をお気に入りの平次のソファに寝転んで読む。

平次の方は、この前新一が大絶賛して平次にも読むよう勧めた推理小説を片手に持っている。おそらく、新一の言った事を覚えてくれていて、読もうと思ってくれたのだろう。自然と顔が綻ぶ。

新一は二人でいる時間が何より大切で、好きだった。

新一が推理小説を読むのに夢中になっていても、平次は何も言わず傍にいてくれる。そして平次は平次の好きな事をやりながら一日が終わる、なんてことはしょっちゅうだった。

たまに平次が気付いてコーヒーなど入れてくれるが、小説に夢中な時は、全然気づかない時もある。それでも平次は笑って傍にいる。

していることは全然違うのに、同じ空間で存在を確かめ合える。互いに話はさほどしないが、暖かい雰囲気がある。そんな関係に、新一は本当に満足していた。





 






あたりが暗くなってきたので、そろそろ帰ると平次に告げた。

「そか。ほなら、送るわ」

「え?いいよ、大丈夫。今日は歩いて帰りたいんだ」

買ってきた小説が思いのほか、面白かったので新一は機嫌が良かった。

「ん〜、そしたら、俺も歩くし」

唸り声を出す平次をみて、新一はくすっと笑った。

「ん。じゃあ、送ってもらう。」

にっこりと笑うと、平次もつられて微笑んだ。


今回の小説はよかったな♪複雑に入り組んでるのにトリックが細かい。

犯人に行き着くには、結構力を入れて読まねばならなかった。

少し買うのを躊躇していたが、買ってよかったと素直に思う。


歩きながらも上機嫌にそんな事を考えていると、平次がふと笑った。

「そんなにおもろかった?あん小説」

「うん!すっげぇ面白かったぜ!なんか、今までとはちょっと違ってて、いくつもの事件が重なってんだ!」


先ほど読んだ小説を思い返しながら平次に語って見せた。もちろん、大まかな流れだけ。

トリックや犯人なんかを言ってしまったら、平次としても面白くないだろうと考えての事だ。



「でさっ…」


楽しかった事を平次にも聞かせたくてウキウキとした調子で話を続けていた新一は、ふと平次が自分の顔をじーっと見ていることに気付き、少しだけ胸が高鳴った。

「服部?聞いてんのか?」


「あ…あぁ…」


「どした?」


「いや、工藤ってめっちゃ可愛ぇよなぁ」







一瞬、何を言っているのか分からなかった。が、意味を理解した瞬間、自分が真っ赤になるのが手に取るように分かり、ぷいっと顔を背けた。

「うれしくねぇよ、バカ!」

何考えてんのかと思って心配した俺がバカみてぇじゃねぇか!!

男が可愛いって言われて嬉しいかよ、服部のあほ!!


心の中で悪態を吐きながら顔を見られまいと必至に歩く。

平次はしまったとばかりに新一の後を追いかけてくる。

「工藤、怒らんといて!?」

「っ…怒ってねぇよ!」

口で言った通り怒っていないはずなのにどうしてここまで顔が赤くなるのだろうか。服部の言葉に真っ赤になった自分の顔をおそらくは見られたであろう恥ずかしさもあるのだろうと思う。


そんな事を考えていると、新一の肩を平次に掴まれて耳元に囁かれた。



「な…工藤…」



その瞬間、自分の身体がピクンと跳ねる。更に真っ赤になるのが分かる。でも、さっきみたいな恥ずかしさは、ない。



「………お前……ずるい……」


俺がお前の事好きだって知ってるくせに……んな声で…耳元で…俺の名前なんか 呼ぶなよな………

結局惚れたモンが負けってことか……



でも、そう簡単に納得できるほど素直でもない新一は、精一杯の反抗の意味をこめて平次を睨みつけてやった。

ふ…と平次が笑った気配が感じられたかと思うと、自分の頬に平次の手が添えられた。


そしてそのまま引き寄せられ、唇が触れ合おうとしたその時、









「ちょっ……ちょっと待てっ!」














ここまできておいて待ったを掛ける新一は、当然のことながら平次のしようとしていた事に気付き、真っ赤になって体を引き離した。


「…ええやん」

「やっ…よくねぇって…」

そんな新一の抗議を無視して平次の手が再び頬に掛けられた。

「何で?付き合うてんのに?」

「でもっ…それは…」


それは――――……


言い終わる前に新一の唇は平次のそれで塞がれた。

触れるだけのキス。


これが永遠に続けばいいのにと新一は思った。

キスを拒んだのは嫌だったからでは決してない。新一は口には出せないものの、平次が好きだから、正直嬉しい。





でも…………服部…………お前は……違うだろ………?






キスをしていても心がすれ違う。繋がらなくて…切ない……




「! んっ…!?」


突然、平次の舌が新一の口内を侵し始めた。

「んんっ…!」

更に深く舌を絡めてくる。新一の全てを奪うかのように。

「も……やめ…」

抵抗するものの、両手首を簡単に掴まれて、また深いキス。


「…ふっ…」


新一は涙が出そうだった。心が………満たされない…


バ…カやろ……何で…何でこんなキスすんだよっ!!


平次のキスは上手くて、心地よくて…熱くて………

まるで自分が愛されてでもいるかのような錯覚さえも覚える。

好きじゃないのに……キスなんかするなよな!!



そんなの………辛いだけじゃねぇか……







「く…工藤…!?」

驚いたように平次の目が見開かれる。おろおろとした平次をみて、初めて自分が涙を流していた事に気付く。

「っ………」

「す、すまん!な、工藤、泣かんといて?」

何故だか涙が止まらない。

嫌じゃないのに………どうして………?









………ああ…そっか………そういう事………か………






そう、多分新一は気付いてしまったのだ。

もともと気付いてなかったのかと聞かれれば、それはNOだったが。


それは、新一が気付きたくなくてふたをしていた事。


新一は、平次に気持ちを伝えた事を、もう、幾度となく後悔していた。

あのまま言わなければ、確かに苦しかったかもしれない。


だが、言わなければよかった……


こんなにも胸の奥が ズキズキと 痛い。

逃げていては何もならないと解っていながら、現実から目を背けていた自分のバカさにあきれ返る。





 






家に着いてもまだ一緒にいると言った平次を断った。平次に泣き顔なんてこれ以上見られたくなかった。


その夜、ベッドに伏せて新一は少し泣いてしまった。


そして、一つの決意を胸に、平次を想う切なさでまた涙が出た。










新ちゃんは何を思ったのでしょう。
答えは、また、後ほどvv
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