どうして……








どうしてあの時…自分の気持ちを言ってしまったんだろう―――…















言わない方が良いこともあるって









知っていたのに――――…














伝えたい気持ち

〈1〉






同じ屋根の下でお酒を注いだグラス同士をコツンと軽く合わせて、乾杯をした。

晴れて同じ大学に合格したこともあり、今夜は工藤新一と服部平次の二人は飲み明かそうという事になって、平次の借りたアパートにいた。

とりとめもない話や事件の話で盛り上がったりしながら飲んでいた。





気が付くともう飲み始めてから4時間以上たっており、時計は2時を回っていた。

今日はいつになくおびただしい量のお酒を飲んだ。いつもなら酔う手前で飲むのをやめる新一だったが、なぜか今日は良い気分で、自分が酔っていることも忘れてただひたすら飲んだ。


……飲みたい気分だった。


考えてみれば、その時からもうすでに危険信号は鳴り響いていたのかもしれなかったが、お酒の所為で気がつかなかったとでも言うのだろうか。

お酒を飲み交わしながら他愛無い話をとりとめもなくしている時に、ふと平次の顔を見た新一は胸の鼓動が高鳴るのを聞いた。そのまま見惚れたようにじっと見つめていると、平次はいつもの笑顔で、

「ん?」

と言った。

そのいつも通りの笑顔が嬉しくて…好きだと…改めて確認してしまって……気が付いたらもう口から出ていた言葉―――。





「…好き……」





その瞬間、平次の瞳は心底見開かれた。




新一は心の中でしまったと思った。言ってしまったことに少し後悔をした。

今ならまだ冗談で済ませられるかもしれない。しかし、今は逃げれてもまた自分は平次に想いを告げてしまうだろう。



もう、友達でなんて……友達のままでなんて……… いられなかった。




「…何……やて…?」


普通、友達に改めて好きなんて言わない。だから『好き』の種類は西の名探偵には簡単すぎるほど分かってしまった。だが、聞き違いかとも思い、口に出して聞いてみた。

新一は平次から視線を外し、揺らいだ瞳を下のほうへ向けている。



「っ……」



切なげに揺れていた瞳が静かに閉じられた。かと思うと、今度はゆっくりと目を開け、平次をまっすぐに見た。









「俺は… 服部が…… 好きだ……」








やはり聞き違いなんかではなかったらしい。


しかし、平次は男から生まれて初めて告白されたのだ。驚くのも無理はないことだろう。

こういう場合、女と同じように考えるべきなのか、それともここは怒るべき所だろうか……?

そんな事を思っていると、新一は下を向いて少しお酒の入ったグラスをキュッと握りしめた。


「……イヤだと思ったら……ハッキリ……言ってくれていいから…… ……何か……言ってくんない?」


「…せやかて…それって…」



上手く言葉が出ない平次の気配を感じて、新一は少し自嘲気味に笑った。


「……分かんねぇのは当たり前だよな………男が男に告白してんだから………」

新一がグラスに目線を移した事で、少しだけその表情が見えるようになった。その表情は東の名探偵といわれる工藤新一の強気な瞳の輝きなどなく、ただ今にも泣きそうに蒼い瞳が揺れていた。





「でも……意味くらいは………解ってくんねぇ……?」





新一が平次を好きだと思ったのは一体いつからだっただろうか?

考えてでる答えは、ただ平次が好きということだけ。

コナンの姿なのに唯一、俺を工藤新一だと気が付いてくれた人。

体が縮むなんて非現実的なことさえも受け止めて、傍にいてくれた。

どんな姿でも『工藤新一』と呼び、その存在を確かめさせてくれた。

呼べばいつでも来てくれ、相談に乗ってくれ、励ましてくれた。

服部にどれだけ助けられたか解らない。



それがどんなに嬉しかったかなんて……知らないだろ…?



これからは俺がお前を助けてやりたい。例えそれがエゴだったとしても…解らないようにする手助けくらいは……許してくれよな…?






自分で自己完結を済ませた新一は少し気が楽になり、ちらりと平次を目だけ動かして見た。

「………」

新一が予想した通りで、平次は何も言葉が出ないようだった。


バカな奴…こういう時は、怒ってもいいのに…


あまりの平次らしさに思わずくすっと笑ってしまった。

「…ごめんな。困らせるつもりじゃなかった……って言っても、まぁ困るよなぁ。」


「………」

まだ驚いている平次に、本気で笑いが出た。


「いいよ、もう解ったからさ。気持ち悪いと思ったらもう話掛けてくれなくていいからな。 じゃあ、俺帰るよ。」

吹っ切れたように笑って言った言葉に、平次は我に返る。

「ちょ、ちょお待て!」

平次が言葉を発したのに驚いた新一は振り返って平次の顔を見て…




… そして、笑った。




「まだ…話し掛けてくれんの?」


その綺麗な笑顔にほんの少し見とれてしまった。





「そ…そんなん、当たり前やないか!俺かて工藤んこと好きやし…」

「知ってる。」

「へ?」

「お互いライバルでもあり、友人でもあるから… だろ?」

目をぱちくりとさせている平次に向かって、いつもの不適な笑みを見せた。そしてすぐににっこりと笑顔を作った。

「お前は優しいからな。結構罪作りだぜ、気をつけろよな?」

「………」

やはり、くすくすと笑って新一は言う。平次はぽかんとした顔でそれを見ていた。

そうなんやろか……いや、自分が言いたかったんはそういうことじゃない思たんやけど……

「いいんだ、服部。お前が出す答えは『断る』か『付き合う』。二つに一つだ。男相手じゃあ出す答えは決まってるんだから。」

「二つに一つ…」

「そ。お前は悪くねぇよ。」


「……ほなら……『付き合う』でもええんやな…?」




「………は?」




今度は新一が驚く番だった。


「せやから、付き合う言うてんのや」

「……誰が……誰と…?」

咄嗟の事で、言葉がしどろもどろになってしまう。

「工藤、お前東の名探偵やろうが!そんくらい分かるやろ!?」

「………だっ…て… …ウソだろ…?」

「…何?アカンの?」

「いや!…んなことねぇ…けど…」

そんな事あるはずがないとばかりにすぐさま否定したものの、何だか腑に落ちなくて怪訝そうな顔で服部を見た。

「何や?」

「……服部…酔ってる…?」

「工藤の告白で、酔いなんて醒めたわ」

「……じゃあ…寝惚けてる…?」

「いくら大阪人かて寝てへんのに寝惚けられんよ」

「……じゃあ…」

平次は続きを言おうとした新一の言葉を遮った。

「工藤は嫌なんか?」

「嫌なわけねぇだろ!」

何言ってんだ、コイツ!!俺が告白したんだぞ!?聞いてなかったのかよ!?

ある程度はバカだと思っていたが、さっき言った言葉まで忘れないで欲しい。少し苛立ちを交えて新一が言うと、平次はケロッとした顔でさらりと言ってのけた。


「んじゃ、ええやん」


「………」



「な?」

平次が同意を求めると、新一は静かにコクンと頷いた。

こんな形で付き合いが始まるなんて、誰が考えていただろう。

新一も、つい口を滑らせてしまったものの、その言葉は本心だったので怒鳴られるのを覚悟して平次に言ったつもりだった。

男同士なのだからそれくらい当然だと思う。なのにそれを簡単に受け入れてしまう平次が、新一には不思議だった。





平新長編小説第一段でございますvvこれはかなり昔に書き上げたものです
やっとこさUPにこぎつけました〜vv
えー、まずは自分の気持ちを告げてしまった新ちゃんのお話
それをあっさりと受け入れてしまう平ちゃん。
人の気持ちって不可解ですよねーι
というわけで、ぜひぜひ続きも読んでくださいませvv
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