ソレを吸うのは 何のため?




たばこ

-アナザートーリー 前編-





―― 工藤の様子がおかしいて気づいたんは…ホンマ言うと、かなり前やったなぁ……。


平次はタバコをくわえ、大きく吸い込んでから、ゆっくりと紫煙をたなびかせた。

離れてもう3ヵ月以上経っている今も、思い返すのは新一のことだけだ。


離れる前は、ずっと一緒にいて、笑い合った。

ライバルで親友で、大切すぎるほど、大切な人。


そんな新一の態度がおかしいと気がついたのは、何もここ最近のことではなかった。

馬鹿な話をしながら傍にいた日々の中でも、ふとした時に新一の違和感を感じ取っていたのだ。

気付かれないほどさりげなく、一定の距離をとる。

触れると、ビクッとして…逃げる。

そうあからさまな態度ではなかったものの、探偵の洞察眼をもってすれば、それに気づくのにそんなに時間はいらなかった。


始めは平次のことを意識しているのかと少しだけ考えたが、あの誇り高い東の名探偵の工藤新一が男の自分を好きになるなんて、間違ったってありえないだろう。

自分は新一が好きで…好きで好きで堪らなかったから、スキンシップと称して触れていたけれど。

もしかしたら、自分のこの気持が新一にも多少なりとも伝わっていて。

気持ち悪い、と。

感じてしまったのかもしれない。


そりゃ、男が男を好きになるなんて、大半の人間がそう思うのは当たり前のことかもしれないが。

好きな相手に気持ち悪いと思われるのは……キツい…。


「……工藤……」


思わず零れてしまった想い人の名前に、酷く胸が締め付けられる。

眉をよせて目を閉じ、キツク拳を握りしめて耐えるように深いため息をついた。



あの夜。



新一と会話をした最後の夜を思い出す。

とにかく、新一の態度が変になっていた理由をちゃんと聞こうとして、二人だけで飲みをしようと誘った。

平次のマンションで二人きりになることができて。

嬉しい反面、好きな人と二人きりというシチュエーションがどんなに理性を試すものになるか、思い知らされた。

お酒のせいで少し頬を染めた新一を見ていると、触りたくなって。

けれど、いつもみたいに逃げられたらショックなので、どうしても触れられなくて。

そんな事ばっかり考えていたから、いつものようにノリのいい会話をすることができなかった。

何でもない話をしながらも、新一の些細な行動までも気になってしまうから、新一をできるだけ見ないようにお酒を飲むことに集中しようとした結果、飲みすぎて久しぶりに酔いが回ってしまった。



飲み始めてから少し時間が経ったころ、お酒の力も手伝って、ずっと気になっていた事を聞くことに決めた。

けれど、直球で『俺が傍に居んの、ホンマは嫌なんか?』とは聞けない。

こういう話をどう切り出していいか分からない。

とりあえずは、新一の好きなものの話から入って、それから徐々に話を変えていこうと考えて。

『好き』という単語に、ふと、新一に好きな人がいるのかという疑問が沸いてきた。


―― …これは、別に…聞いてもええ、よな…?


親友として、この質問をすることに違和感がないだろうか。

頭の中で考えて、大丈夫だと思った平次は、思い切って口を開いた。


「…工藤、好きなやつ、おるんか?」

「…え…?」


不思議そうにこっちを見つめる新一の表情を見て。



ギクリとした。



問いかけたのは自分なのに、答えを聞くのが怖くなった。

もし、『いる』と言われたならば、親友としては『協力する』と返さなければならない。


それは、できない。


応援は……してやれないのだ……。


咄嗟にこの答えを聞いてしまってはダメだと、心の中で警報が鳴った。

焦って頭の中で考えを切り替え、こうなればせめて自分が嫌われていないかだけでも聞いておこうと、口を開いて。


「…工藤は俺のこと…」


『俺のこと、嫌いなんか…?』と言おうとした、その言葉を飲み込んだ。



…また、怖くなって、しまった…。



仮に、『そうだ』と言われたら…?

自分は、どうなってしまうのだろう。

嫌いと本人の口から聞かされるのが……こんなに、怖いものだったなんて……。


その答えだけは…どうしても聞くわけにはいかなかった。


「…いや、何でもあらへん」


さっと新一から視線を反らし、先ほどの言葉を無に帰そうとした。




けれど。




「…お前…まさか…知ってんの、か…?」




驚いたように呟く新一の態度に。



絶望感が、襲ってきた。



やっぱり、と。



そう、思った。



「……」



―― 俺のこと嫌いなんちゃうかなって…そんなん、気ぃついとるに決まっとるやろ…



そう思いながらも、喉が張り付いたように言葉がでなくて。

知っていたという意味をこめて、横を向いた。


瞬間。


新一が立ち上がって、そのまま、平次のマンションを飛び出して行った。

そんな新一の顔を、姿を見ることはできなくて、顔を反らせたまま引き留めることもしなかった。

走り去っていく新一の足音が聞こえなくなってから、平次はゆっくりと膝に顔をうずめた。


―― …っ…逃げんでも、ええやんか……ホンマ…ムカつくっちゅーねんっ…


嫌いならばどうして今まで傍にいたのかと、ムカついて。

あんなに嫌いだという態度をとっておいて、本気で平次に気づかれていないと思っていた新一が…可愛いと思ってしまう。


解っては、いた。


解っては…いた…けれど……。



―― っめっちゃ…痛いっちゅーねん……ドアホ……



心が。


焼けるように、痛い。



ふいにジワリと込み上げてきた熱い滴に、ギュッと目を瞑った。


もう、おしまいなんだと、思った。

新一の傍にいて、笑いあった…幸せな日々は、もう終わってしまった。




…傍に……いられない……。



新一の為になることだったら何でもしてやろうと思っていたけれど。


唯一、してやれることが……離れることだなんて……。




さっき、平次の部屋を出るときに……。




いっそ。




この記憶も …… 想いも ……。





全部 持って行ってくれれば …… よかったのに ―――。










 











それから平次は、できるだけ新一を見ないように努めた。

同じ授業がほとんどで、見ないようにするにはすごく大変だけれど。

新一の為には、傍にいない方がいいと、自分に言い聞かせながら。

けれど、ふと新一の笑い声が聞こえると、イライラとするのを抑えられない。


―― オレ居らんのに…そないに笑ってんなや…


そう思うのに。

新一の笑い声が、甘く、平次の耳を侵してくる。

息もつけないほどの、苦しさ。


何とかしてこの感情を抑えるために、いろんな事を試して……タバコを、見つけた。


タバコを吸うと、イライラが少しだけ収まった気がした。

新一の代わりになど、なりはしないけれど。


このイライラを。


この胸の深くに根付いている想いを。


タバコの煙と一緒に吐き出すために。


少しでも忘れるために…。




…忘れようと、がむしゃらに、タバコを求めた…。




タバコの灰が落ちそうになっていることに気づいてハッとして、急いで持っているタバコをもみ消した。

すぐに別のタバコを取り出して加えると、火をつけて深く吸い込む。

汚れたような白い煙が上がるのを、ボーっとしながら眺めた。


タバコの煙が充満しすぎて白くなった部屋で、時計が刻む音を聞きながら過ごす毎日。


色のない、この世界。


いつまでこうして、時間を消化し続けていけばいいのだろうか。


と、ふいにマンションのチャイムが鳴る音が響いた。

チャイムが鳴ったのに特に急ぐでもなく、平次は再度タバコをくわえて大きく吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

正直、誰とも会う気分ではなかったが、この無駄に遅く流れる時間を消費できるならと、タバコの火を消して立ち上がった。

友人が遊びに誘いにきたとしたら、即OKをしようと考えながら玄関へと進む。


―― 気ぃ紛らわせるんやったら、何でもええわ…


そんな、どこか諦めにも似た言葉にも気づけぬまま、平次は玄関の鍵を開けた。


そして。


ドアを開けた、瞬間。


鮮やかな色と 光と。


何よりも愛しい人の姿が。


目に 飛び込んできた。



―― っ……くど、お……っ…?



思わず体が新一を抱きしめようと動こうとしてしまって。

瞬間、素早く頭の中で静止がかかった。

体が動いてしまうのを抑えるために、ぐっとドアを持つ手を引いた。


逢いたかった…。



逢いたくて……たまらなかった…。



死ぬほど逢いたかった…けれど…。





二度と、逢いたくなんか、なかったのに。





「あの、さ…話、あんだけど…いいか?」


その言葉にハッと我に返った平次は、突き放すように口を開いた。


「…俺は別にあらへんけど?」


―― 俺ン傍、おりたくないやろ…?


一瞬、新一が息をのんで押し黙ったのが分かったが、すぐに顔を上げて平次を睨んできた。


「お前になくても、俺にはあんだよ」


強気な瞳でそう言われ、平次は思わず深いため息を吐いた。


―― …アカン…工藤にそない言われたら断るなんてできへんやん…


入って来いという意思表示として、ドアを開けたままリビングへと足を進めると、焦ったような声が後ろから飛んできた。


「おい!話があるつってんだろ!」


―― …何で入ってええって解らんねん…


そんな、探偵としたら少し抜けているとしか思えない行動も、可愛いとしか感じない。


「……入れや…」

「…え?」


間の抜けたようなその声にフッと笑みを浮かべながら、足を進める。

しかし。


「あ、いや、俺、いい!」

「……」


新一の口から出た否定の言葉に驚いて、足を止めた。

自分は当たり前のように部屋に上がって話すのだと思っていたのに、新一はそんなこと思ってもみなかった様子だ。


―― 部屋に上がんのも嫌なんかい…


ぐっと拳を強く握り締める。

すると、そんな平次の怒りを感じ取ったのか、新一が必死に弁解してきた。


「そ、そんな長く話す訳じゃねぇから、気ぃ使ってくれなくていい!す、すぐ終わるし、ここでも全然…」

「…入れや」


思わず、ドスの効いた声が出てしまった。

そんなに、少しの間も一緒にいたくないのか、と…ムカついてしまってそう言うと。

戸惑った気配の後、ゆっくりと新一が部屋に上がってきた。










 











コーヒーを淹れると言った平次に、いらないと言われたが、コーヒーを飲む時間さえも惜しむほど早く帰りたいと考えているだろう新一をこのまま帰してしまいたくなくて、あえてその言葉を聞き流した。

と言っても、平次が淹れたコーヒーなんて、飲まないだろう事は覚悟の上だ。

けれど。

そんな平次の推理も外れ、新一は渡されたコーヒーを何のためらいもなく飲んだ。


「……飲まんかと思てたわ…」

「…へ?」


思わず零れてしまった言葉を聞き逃したのだろう新一がこっちを見るが、そのまま本題を切り出した。


「…別に。そんで?話って何やねん?」


嫌っている相手の家にまで来てまで、何の話があるのだろうか。

事件の話だとしたら、とりあえず話をちゃんと聞いてやって、アドバイスをしてやろうと考える。

ここまで来るくらいだから、とても困っているに違いないから。

けれど、新一の口から出たセリフは予想を遥かに超えたものだった。



「お前、タバコやめろよ」


「………は?」



―― ………………タバコ………やて…………?


思わぬ方向から話を投げかけられ、平次は思わず固まってしまう。


「最近、すげぇ吸ってるみたいだし…体に悪いだろ?って、んなの本人が一番解ってるだろうけどな」


最初は驚愕で固まっていた平次も、新一が話を進めるにつれ、言いたいことを理解した。

その瞬間、立ち上がって怒鳴ってやりたいような、そんなどうしようもない気持ちに苛まれた。


―― 嫌いなんやったら、ワザワザそないなことでウチ来んなや!!


心の中で、叫ぶ。

どうして新一はこうなのだろうか。

人が必死で新一の為に距離を取っているのに、タバコを吸いすぎという理由だけで近づいてくる。

心から平次を心配しているのが伝わってくるから、尚更、腹が立つ。


―― …っ…嫌いなんやったらっ!…俺の心配なんかすんなや!!


本気で心配して…家にまで来て…… 心の中を掻き乱していく ……。

泣きたくなるくらいの、怒りを感じる。

こんなにムカつくのは、世界中探しても新一しかいない。


憎くて。


憎くて。



憎くて……。




…こんなにも……





…… 愛しい ……。






もう、狂ってしまいそうだった。

ずっと憎ませてくれるだけならよかった。

実際、嫌っている相手に対しても心配して家にまで来た新一に苛立ちが募った。


けれど。


憎いと思う、その強い感情さえも瞬時に消し去ってしまうほど…。




…… 愛おしい ……なんて………。




……救われない。




いっそのこと、このままベッドへ連れて行って押し倒して…抱いてしまおうかとさえ考えてしまう。

愛しいと想うのと同じくらい、めちゃくちゃにしてやりたくて堪らない。

自分の部屋に囲って。

誰に目にも触れさせず。

一生……。


そんな…。


どうしようもない、凶暴なキモチ…。


だけど……大切だと、想うから……。


こんな気持ちを抱いている平次から、この黒い感情に気づかせないままに新一を逃がしてあげたいと、思う。



平次は理性を総動員させ、気づかれないように息を吐いた。


「…何や、それだけのために来たんか」

「…余計なお世話だって、解ってっけど…」

「ホンマ余計なお世話や」


―― ホンマ、おせっかいっちゅーかお人よしっちゅーか…


そんな新一を、平次は好きになったのだけれど。


「じゃ、やめろよ!お前も吸いすぎだって、解ってんだろ?タバコやめたら俺は何も言わねぇし!大体、この部屋もすげぇタバコ臭いぞ!どんだけ吸ったらこんなになるんだよ!」

「工藤には関係ないやろ」

「関係ねぇ俺に、ここまで言わせてんのはオメーだろ!」


本気で心配して本気で怒る新一の言葉を一刀両断するが、よほど平次にタバコをやめさせたいのだろう新一は食い下がってくる。


「…何でそないにやめさせたいねん。別にええやんか」

「バーロ!よくねぇから言ってんだよ!」


話を聞いてもらおうと必死なその姿も、可愛くて。

弛んでしまいそうになる口元を、コーヒーを飲むフリをして隠した。


「俺が言いに来るなんて、相当の事だぞ!いきなりやめるのがダメなら、少しずつ本数減らすとか、軽いものに変えるとか…」


次々と打開策を打ち出す新一に、頷いてやりたい気持ちがないわけではない。

けれど、タバコを使っても少しの気休めにしかならないのに、それすら止めてしまったら、この気持ちがいつ爆発してしまうか解らないから。

そんな事を知らず、タバコを止めさせようと必死な新一に心の中で苦笑する。


―― アホやな…そないなことして、いっちゃん困んの、工藤やで…?


「そないな話ならもう帰れや。今日は約束あんねん」


本当は、約束などないけれど。

そんなこと、新一なら瞬時に見破ってしまうだろうけれど、あえてそう告げることで、早く帰れと無言の圧力を送った。

しかし、平次の意図に反して新一は更に睨んでくる。


「タバコ、やめるって約束しろ。そしたら俺、すぐにでも帰ってやるよ」


―― ちゃうやろ…?早よ帰りたいから、約束しろ、やろ…?


新一の胸中を読んで、心の中でそう呟くと、キュウッと胸が痛む。

それと同時に。

約束をしなければ……ずっとここにいてくれるだろうか……と…。

そんな卑怯な考えが頭の中に渦巻いた。


何よりも愛しいと想う新一を見つめながら、帰してしまいたくないと強く願う。

タバコをやめなければ、優しい新一は平次を見捨てられない。

例えどんなに嫌っていたとしても、心配をしてくれるだろう。


傍に……いてくれるかも……しれない……。


けれど……そんなこと、できるわけがない…。

本当に平次が望むのは……幸せそうに笑う、新一なのだから。

平次の腕の中で新一を幸せそうに笑わせることができて、初めて自分は幸せという気持ちを知るのだろうと思う。


だから…新一の笑顔を奪わないためには……ここで、頷かなければならないということは、良く解っていた。



解って……いたのに…。



実行するとなると、上手く行くなんて思えなくて…思わず視線をそらせてしまった。


「…無理や」


―― …ホンマに、無理や…


心の中で嘲笑する。


「服部!」

「無理や」

「何でだよ!」


タバコをやめられるとすれば、新一を想っても胸が痛まなくなったときだろう。

だから。


「無理やから無理やて言うとるんやろ」


―― …工藤を忘れるなんて…俺には出来へんのや……


絶対に、忘れられはしない。

これ以上口を開くと、行き場を失った思いが口からこぼれてしまいそうで、平次はカップに手をかけてコーヒーを飲んだ。


「お前、前は全然吸ってなかっただろ!?口が寂しいだけなら別のモンにしろよ!」


別のもの…と、軽く言ってくれるものだと平次は目を閉じた。


タバコを使って、新一への想いを煙と一緒に吐き出せているけれど、どんなに吐き出しても積もる想いの方が断然多くて。



それこそ、タバコなんて意味をなさないくらい、想いが募って。



けれど、ほんの少しの気休めだろうが、行き場のない想いを散らさなければ、自分がどんな愚行に走るか分からない。

だから平次は想いを吐き出す術としてタバコを吸うしかなかった。


「オメー、本当は解ってんだろ!どうにかしてタバコやめろよ!タバコやめれる方法を考えろ!」


タバコをやめる方法など簡単だ。

新一が、傍にいればいいのだから。

でも、そんな簡単なことが、簡単ではないから。

別のモノを求め続けるしか、方法がないのだ。


「お前がタバコやめる為なら、俺、何でも手伝ってやる!やめれる方法も考えてやる!だから、タバコなんてやめろよ!」


その言葉に。

平次の心がドキッと跳ねた。



……何でも……?



―― …せやったら……俺を好きになれや……



思わずそんなことを考えてしまい、心の中で苦笑をもらした。

好きになってもらえるなんて、そんな幸せな思考は持ち合わせていない。

大体、人の感情は命令などで変わるものではないから。

けれど、平次の気持も知らずに何でもしてやるなんて軽く言う新一に、怒りを覚えるのは仕方ないことだろう。


「…口先だけやったら何とでも言えるで」


新一だったら平次の望むことを叶える事は容易いのかもしれない。

…平次が本当に望むこと以外ならば…。

できないなら、できないでいい。

ただ、これ以上、こんなにも辛く、切ない想いをさせて欲しくない。


「口先だけじゃねぇよ!何でもしてやるって言ってんだろ!!」


そう言う新一に、ギリッと奥歯をかみ締めながら、視線を戻した。

本当に、どうしてこんなに平次を怒らせるのが上手いのだろうか。

『何でも』と言われたら、平次の頭の中で勝手に新一を自分のものにする為の言葉が浮かんでくる。


今なら、触れられる。


抱きしめて、キスだって……何だって出来る距離に、いる。


その気になれば、力の強い平次の思うままに、新一に自分を刻みつけてやれる。


…望めば…自分のものにしてしまえるのだ。




けれど、これ以上嫌われたくはないから。

それを考えないように…実行しないように我慢しているのに。

それを嘲笑うかのようにそんな言葉を吐く新一に、ならば絶対に新一にはできない事があるのだと…教えてやろうと思った。





「せやったら……キス、せぇや…」





言葉にした途端、驚愕し、凍りついたように固まってしまった様子の新一を眺める。





思い知ればいい、と。


そう思ってそんな事を口にしたけれど。







本当は…。







それが………。








それが…たった一つだけの…… 本当に欲しいモノ ……だったのかもしれない……。
























      
「たばこ」平次バージョンでございますvv
平次には平次の思うところがあったのです、という言い訳として書きましたvv(笑)
平次の心境を切なく書いていければと思いますvv
とは言いましても、前後編なんで、次で終わりですけれどvv

……お、終わるかなぁ…ιι …いえ、終わらせますvv
  
      
(2009.07.20)
Index > Top > ノベRoom > たばこ3