王様ゲームは

誰に命令が下されるのか

分かるすべは 全くない。




O・U・SA・MA ゲーム

Game.4






「っし、んじゃ、クジ引けよ〜♪」


という声に、皆が箱の中にある割りばしをそれぞれ手にした。

「王様だ〜れだ♪」という言葉と共に、一斉に自分の引いた割りばしを確認する。


王様ゲームが始まって、30分くらい経過したが、命令も比較的簡単なものばかりだったので、新一も少しホッとしていた。

「5分間手を繋ぐ」とか「一発ギャグ」とか「ものまね」とか、そんな定番な命令が飛び交う中、今のところ新一は罰ゲームに当たっていない。


「工藤、何番だよ?」


王様に聞こえないようにこそっと聞いてくる向日にだけ見えるよう、手にした番号を見せてやる。

向日もそれにならい、同じようにこそっと籤を見せてきた。


「工藤〜、ひでぇ罰ゲームに当たったらどうするよ〜?」


笑いながらからかってくる永瀬に、「バーロォ」と返した時、王様が声を上げた。


「それじゃ、次はコレを一気飲みってことで♪」


今回の王様ゲームで王様を引いたのは悪友で、並々と注がれたジョッキをテーブルの上に置いた。



その命令に、その場にいた全員が、一瞬固まった。



量が多いのは、まだ何とかなるけれど。問題なのは、そのキテレツな色だ。


王様の籤を引いてから何かこそこそとしていると思っていたが、まさかこんな事をしているとは、と、新一は絶句した。


王様は、テーブルにあったチューハイやカクテル、焼酎やビールなど、手あたり次第混ぜたのだ。



いわゆる、ちゃんぽん。



大丈夫なのかと思う新一に反して、周りはワッと盛り上がった。

その反応に、新一はぎょっとして、向かいに座っていた永瀬に話しかける。


「え、女の子が当たったらどうすんだよ? あんなの、飲めねぇだろ?」

「そりゃ、その子を狙ってる男が代わりに飲んでやるに決まってんだろ?」


誰も名乗り出なかったら、この場で一番の盛り上げ役が飲むか、男で回し飲みをするのだという。

そう言われ、なるほど、上手い具合にできているな、と納得した。


「よし!決めた!番号、言うぞ〜!」


王様のその声に、みんなの視線がいっせいに集まる。






そして―――。

















「……………………………………………………」







新一は、あのキツイ色をしたジョッキを目の前に固まっていた。




そう、一気飲みはみごと、新一に白羽の矢が立ったのである。

盛り上がっている周囲を余所に、平次がこそっと新一に耳打ちした。


「工藤、これはヤバイやろ。やめとき」


平次のその言葉がなくても、新一もジョッキを見た瞬間、逃げたいと思った程だ。

ウォッカをベースにいろいろ混合されたソレは、見るからにヤバイと思う。

味が不味そうとか言う以前の問題で、これを一気飲みしたらどんなに酒に強い人でもアウトだろう。

だが、せっかくここまで盛り上がっているのに自分が断って空気が悪くする事は、新一にはできなかった。


「…飲めばいいんだろ、飲めば!」


覚悟を決めてガッとジョッキを掴むと、思いっきり中身をあおった。

瞬間、強いアルコールが一気に体を駆け巡り、ぐらりと倒れそうになる。


が、ここで倒れてなるものかとお酒を流し込む。

おお〜という歓声が上がる中、平次の制止するような声が聞こえたが、新一は構わずに気力だけで全てを飲みほした。

ダンッと机の上に空になったジョッキを置いて、口元をぬぐう。


「っ…飲、んだぞっ!」


本当に一気に飲み干した新一に対して、喝采が起こる。


が、今の新一はそれどころではない。

喉の奥が、頭が、体が、熱い。

やはり一気飲みはお酒が回るし、ましてやそれが色んなお酒を混ぜ合わせたものだとしたら、尚更。

近くにあった水を少し飲んで中和させようとするが、あまり効果はないらしい。


お酒に強い方ではなかったし、そんな飲み方をしたのは本当に久しぶりだったから、急速にアルコールが体内を巡っていく。

と言っても、気持ちが悪いわけではなく、どちらかと言うとフワフワとして気分も良かったが、気を抜くとどんな失態をするか解らない。


新一が条件をクリアしたことにより、みんなそれぞれの会話に戻って行って、次の王様ゲームが始まるには少し時間が取れそうだ。

少しの間は何とか顔に出すことなく会話をしていたが、それも5分くらいで限界だった。

その間、水をたくさん飲んで少しでもアルコールを薄めようとしたのだが、モノがモノだった為、焼け石に水だ。

ぐらぐらする頭で、ここでツブれるわけにはいかないと、ポーカーフェイスを駆使してニッコリ笑いながらトイレに行くと言って席を立った。





皆の死角までたどり着くと、はぁ、と熱い息を吐き出しながら、壁に寄り掛かる。

この飲み屋はとても広く、トイレは近いところと遠いところ2箇所あって、それぞれ近くに休憩用のソファがあったことを思い出し、そこで少し休もうと考えた。


―― …近、い…ところは、ダメだ………みんな、気づいちまう、し…


グラグラする思考で、冷静に考えながら、新一は遠い方を選んで足を進める。

よろよろと、しかし少しずつ歩いていき、ちょっと時間はかかったものの、次の角を曲がって少し奥に行けば目的地というところまで来た。

ホッと胸を撫で下ろしながら、角を曲がって2、3歩歩いた瞬間、足に力が入らなくてガクリとバランスを崩した。

咄嗟に何とか壁に手をついて、倒れるのは免れたものの、座り込んでしまったまま動けない。


―― …う、わ…カッコ悪ぃ…


そう思うものの、やっぱり足に力が入らなくて。



と。



新一の背後から焦ったような声が聞こえた。


「工藤! 大丈夫か!?」


「…っと、り?」


体が重くて振り向けなかったが、声だけでその正体が解る。

そして、泥酔状態の新一の頭でも、平次が一気飲みをした新一を心配して追いかけてきてくれたのだろうことが解った。


すぐに隣に平次がしゃがみ込んで、ふらふらしている新一の肩を支えた。


「気分悪なったんか? せやから一気飲みはやめろ言うたんや! 吐き気とかあるんか?」


早口でまくしたてる平次に、新一は少しだけ首を横に振ってみせた。


「違、くて…体に力、入んねぇ、だけ…」


気分は、いい。


良すぎてこのまま眠ってしまいそうだ。


それを空気だけで悟ったのか、平次は少しだけホッと息を吐いた。


「工藤、掴まれや」

「――…?」


何がしたいのか意味が解らないまま、言われるままに平次の肩に腕をまわした。

すると、平次は新一の背中に左手を回し、残った右手でゆっくりと新一の膝をすくった。


いわゆる、お姫様だっこ、だ。


その動作は決して強引ではなく、ゆっくりとしたもので、これ以上お酒がまわらないようにとの配慮だろう。

いつもならば死ぬ気で抵抗するはずのお姫様だっこも、今日は何故か嫌ではなく、新一はおとなしく平次の腕の中に収まった。


そのままあまり揺れることなく運ばれ、椅子にそっと降ろされた。

背もたれに体重を移して長い溜め息を吐いて少しでもアルコールを散らしていると、隣に平次が座って、肩を抱かれる。


「ホレ、俺に寄りかかっとき。 少しは楽になるやろ」

「……悪ぃ…」


他人の体温が心地よくて、眠気が加速した。

それに気付いたのだろう、平次は笑いながら腕時計を見て、少し考えてから口を開いた。


「気にすんなや。 ちゅーか、眠ってもええで? …せやな、15分したら起こしたるわ」


何も言っていないのに、どうしてここまで新一が考えている事が解るのだろう。

本当に不思議な奴だとぼんやりとした頭で考えながら、小さく頷いた。


「…うん…サンキュ…」


お礼を言うと同時に、アルコールに引き込まれるように、新一は眠りに落ちた。




そのあどけない寝顔を見て平次がフッと笑みを溢したその時。




素っ頓狂な声が飛んできた。


「あ? 何でいんの?」


平次が顔を上げると、トイレから岩崎がひょっこりと出てきているところだった。

岩崎は二人がここに居たことに少し驚いた様子だったが、平次の腕の中にいる新一の異変に気付いて近寄ってくる。


「工藤、どうかしたのか?」

「あぁ、一気飲みがアカンかったみたいやで」


声を顰めてそう言うと、岩崎も「あ〜、あれな〜」と苦笑した。


「つか、大丈夫なのかよ?」

「て、本人は言うとるけどな。今は寝とるだけやし、ちょお休んだら連れて帰るわ」

「そっか」


岩崎は、そうホッと胸を撫で下ろして新一を見て……――動きを止め、目を瞬かせて…。

改まってまじまじと新一の顔を覗きこんだ。



「つーか、コイツ、ホンットに綺麗な顔してるよな? 寝てる時もやっぱすっげぇ綺麗だし…」



お酒が回っているのだろう、ほんのり赤い顔をしたまま無防備に寝ている新一は綺麗としか表現できない。


それに加え、いつも射抜くように真っ直ぐな瞳が伏せられているというだけで、幼く見える。




岩崎は無意識に新一へと手を伸ばし、その頬を触ろうとした――。





その時。





伸ばした手をガシッと掴まれた。







「触んなや」





「……」






視線を移すと、眼光鋭い平次と目が合う。

平次から放たれているのは、怒気だ。


「工藤、起きてまうやろ」


グッと掴まれた手に力を込められ、わずかに感じた痛みに顔をしかめる。

触れるのを諦めて素直に手を引くと、平次もあっさりと手を放してくれた。


「……へ〜え?」


意味ありげな声と視線を向けられ、平次は片眉を上げる。


「…何やねん」

「いや? 別にィ?」

「別にやあらへんやろ。 言いたいことあるんやったら、言うてまえや」


そもそも隠すつもりもないのだろうが、岩崎は「あ、そ? なら言うけどなぁ…」なんて少し勿体ぶりを見せつけて来る。

そんな岩崎は軽く置いておいて、自分の肩に頭を預けて眠っている新一をチラリと見た。

小声だったとはいえ、平次と岩崎が話していても起きないなんて、よほどアルコールが回っているのだろう。

ふっと視線を和らげたその時、耳に入って来た言葉に、平次はピタリと動きを止めてしまった。






「…つーか…お前って、工藤のこと……好きなワケ……?」






また悪ふざけが始まったのかと岩崎を見ると、そうではないらしい真剣な目と視線がぶつかる。

本気で聞いてきているのなら、本気で返すのが礼儀だ。


「……そら、好きやで?」


言うと、岩崎は小さな舌打ちをした後、大げさな溜め息を吐いた。


「はぐらかしてんなよ。 そういう意味で言ってるって事くらい……解ってんだろ?」




途端に、二人の間の空気が音を立てて凍る。





相手の意図を探るような鋭い視線を互いに交わし合い、長い沈黙が続いた。













そして、おもむろに平次が口を開いて―――。























そんなやりとりがあったとは知らない新一は、フワフワした夢の中にいた。





















酔い潰れる新一って、いいっすよねvv
自分で呑んで潰れるっていうシチュエーションもいいですけど、意図的に呑まされて(新一は気付いてないけど)潰されるのも、またいいシチュエーションですよねvv
書きたいですvv
意外とシリアスな場面なのにこんなこと書いててすみませんvv
でも反省はしてませんvv(うぉい/笑)


(2011.12.25)
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