王様ゲームでは

参加者のノリが必要不可欠である。




O・U・SA・MA ゲーム

Game.3






とうとうこの日がやってきてしまった。

あの王様ゲームの罰ゲームとなった、合コンが開催される日である。


今日は金曜日ということもあり、大学が終わってから現地集合となっている。

大学の授業を終えた平次と新一は荷物を置くため、一旦マンションに帰ってきていた。


特に支度も必要ないので、新一は平次を待ちつつリビングで一人コーヒーを飲んでいた。

平次はと言うと、大学の帰りに向日に呼び止められて、何やらCDを貸してほしいとせがまれていたから、それを用意しているのだろう。

最後の一口を飲み干してしまうと、空になったコップを手の中で遊ぶように転がした。


―― ……何で何も言ってこないんだ…?


合コン日までに、平次から何らかの方法で新一に断ってくるだろうとの推理は外れ、当日になっても特に何も言ってこない事に首を傾げる。


本当に。平次が合コンの類の飲みが苦手なのは解っていた。


解っていたからこそ、断ってこない平次が不思議でならないのだ。


頭を悩ませていると、足音がして、リビングに平次が顔を出した。


「ほな、行こか?」


新一はコップを置いて立ち上がると、平次の前に歩み寄り、大きく息を吸って確認した。


「…ホンッッットにいいのか?」


まだ、今なら断っても大丈夫だぞ?という意味を込めて聞いたのだが、平次はクスクスとおかしそうに笑った。


「まだ言うてんのか?ホンマに俺がOKしたんが意外やったんやな〜」


ポンポンと優しく頭を叩かれ、その言葉に偽りがない事を知る。


「ホレ、行くで?」


その言葉に小さく頷くと、平次の後を追って玄関に向かった。










 











現地に着くとすぐに、よく知った声が掛けられた。


「何だ、遅ぇぞ」


振り向くと、入り口の近くの壁に寄りかかりながらこちらを見ている岩崎がいた。


「え、岩崎も呼ばれてたのか?」


向日から聞いたメンバーに岩崎は含まれていなかったはずだが、と新一が驚くと、思考を読んだのか、岩崎は軽く笑った。


「そ。誰かさん2人のおかげで女が増えすぎたから、人数合わせにな?」


意味ありげなその言葉に新一はピンときた。


「へぇ〜」


やっぱり平次はモテるのだと感心しながら本人を見る。


と、呆れたような顔をした平次と目が合った。


「…んだよ?」


何か言いたそうなその目に、新一は眉を顰める。

その瞬間、何故か岩崎が堰を切ったように笑いだした。


「あっははははは!! やっぱ工藤ってオモシレー!」


信じらんねー、などと言いながら爆笑している岩崎に視線を向けると、横から平次のため息が聞こえた。


「…誰かさんて、工藤、お前もやで?」

「えっ!? 俺!? 何でだよ!?」


予想外の言葉に、勢いよく振り返りながら平次を見ると、岩崎の笑い声がいっそう増す。


「…こーゆー推理は全然イケてへんからな、誰かさんは」

「…人を鈍い奴みたいに言うんじゃねぇよ」


その言葉に納得がいかず、ジロリと平次を睨み付けると、後ろから声が聞こえた。


「いや、鈍いだろ、工藤は」


クックッと笑いながら近づいてくるのは永瀬だった。



「ほら、お前ら、早く中入れって。向日が早く飲みてぇってさ」


反論しようとした新一より先に、永瀬は入口を指さして移動を促す。


先手を打たれて言葉を飲み込んだものの、それが表情に出ていたのだろう、新一の顔を見ながら永瀬はニッと笑った。


「本当のことだから仕方ねぇだろ?それとも、どうして岩崎があんなに笑ったのか、解るのかよ?」


言われて少し考えるが、全然分からない。

けれど、そんな事を素直に言いたくもないので、ささやかな抵抗としてボソッと呟く。


「……岩崎の笑いのツボなんて、解るやついねーだろ」


と、しっかりと聞こえたらしい岩崎が、新一の肩に腕を置いて、まだ収まらないのだろう笑いを噛み殺しながら異議を唱えた。


「んだよ〜?俺が変だとでも言うのか〜?」

「変じゃないとでも思ってたのかよ?」


ニッと笑いながらそう言うと、そうこなくちゃとばかりに岩崎が新一の髪をぐしゃぐしゃと乱した。


「んとにお前って、人を煽るの上手だよなぁ? 俺、そういう奴超タイプ♪」

「バーロ! オメーのタイプは明るくて可愛くて料理出来る子だろ!」


岩崎の彼女は代々そんなタイプの子が多い。


「頭いいけど不器用で挑発的な奴もタイプなんだっつの♪ …啼かせてみたくなんじゃん?」

「んじゃ俺は違うだろ! いいから、離れろ!」


肩に乗せられた腕をどかそうとする新一を余所に、岩崎は素っ頓狂な声を上げる。


「あぁ!?本気で言ってんのかぁ!?」

「しょーがねーって。 工藤って、恋愛方面に関してはこんなモンだよ」


二人のやりとりを見ながら笑っていた永瀬が、口をはさむ。


その言葉に岩崎は盛大なため息を吐いた。



「工藤〜? お前、ちょっと無防備すぎなんじゃねぇの〜?」




言いながら岩崎が再び新一の髪に触れようと手を伸ばした、瞬間。



「っわっ!?」


新一は誰かに腕を引かれ、岩崎の手から逃げる形になってしまった。


「おい、何だよ、服部〜?」


不服そうに響く岩崎の声に振りかえると、腕を引いていたのは平次だった。


「もうええから、中入んで? 向日が待っとるんやろ?」


短く言い捨てた平次は、そのまま新一の腕を引いて店へと足を進める。


誰に解らなくても、新一にはその一言だけで、平次がうっすら怒っている事に気付いた。

平次に引っ張られる形で店へ歩きながら、平次を怒らせた理由を必死で考える。


―― な、何で怒ってんだ? 俺、何か…


と、新一の頭をクシャリと平次が撫でた。


「何考えとんか知らんけどな、俺、怒ってへんからな?」

「え!?」


クスクスと笑う平次に呆気に取られるが、自分が平次の感情にいち早く気づいたように、平次も新一の考えが解ったのだろう。


先程感じた微かな怒気は決して気のせいではないはずだが。


けれど、優しい目をして見つめてくる平次に、新一は、解った、と頷くしかなかった。










 











最初のカンパイをして、1時間程経った。


お酒を飲みながら色んな話をしたり、たまにバカやって笑いが起こったり。

そんな、思ったよりも普通の飲み会。

ちらりと平次を盗み見ると、笑いながら盛り上がっているみたいだった。


―― よかった、結構楽しそうじゃねぇか…


少しだけホッとして、グラスを煽ると、向かいに座っている女の子がトイレに行くと立ち上がった。

すると連鎖的に他の女の子たちも立ち上がって、皆仲良くトイレに行ってしまった。


残ったのは当然、男だけ。


女の子の姿が見えなくなると、向日がニッと笑って立ち上がった。


「ハイッ、注目〜!この後、恒例の王様ゲームをするぜ〜!」

「え!?」


その口から出た単語に、新一は思わずグラスを落とした。

そんな新一を気にする様子もなく、向日は新しい割り箸を集めだす。


「ちょ、ちょっと待て!俺は絶対ぇしねぇぞ!」


バンッと机を叩いて講義するが、それに答えたのは王様ゲームの言いだしっぺではなく、何故か他の男達で。


「そんなこと言うなよ工藤〜。もっと女の子との距離を縮めたいんだよ〜」

「命令だったら、狙った子と手とか繋げるかもじゃん」

「んなの、王様ゲームしなくてもできっだろ!」


反論する隙を与えず、キッと睨み付けると、その男たちは新一の迫力に乾いた笑いを漏らした。

が、ここで丸め込もうとするのが永瀬という男で、ニヤニヤと笑いながら頬杖を付き、新一を見上げてくる。


「シャイボーイが多いんだって♪ つーか、工藤も前の飲みの時はOKしてくれたじゃん? 何で反対するワケ?」

「それはっ! ……前の時はどういうモンかあんまり知らなかったから…」


ポツリと言った新一の言葉に、平次は驚いて声を上げる。


「へ?工藤、王様ゲーム知らんかったんか?」

「あ〜、そうそう、工藤の奴ルールとか知んなくて、俺たちも驚いたぜ〜」

「バーロ!少しは知ってたっつーの!」


そのやりとりに、平次はなるほどと納得した。

新一の性格からして、王様ゲームをすることを何とも思わないのは平次としても少し違和感を覚えていた。

きっと、王様が命令できることは知っていたものの、その内容に『キス』や『ポッキーゲーム』など、そういう類のものがあるとは知らなかったのだろう。

王様ゲームがどんなものなのか新一が知っていたら絶対しなかっただろうことは簡単に想像がつく。


「なるほどなぁ」


クスクスと笑いながら視線を送ると、新一はバツの悪そうな顔をした。


「……悪ぃかよ…」


プイっとそっぽを向いた新一は、あの日の自分の愚かさを本気で呪った。






あの日、結構な量を飲んで気分も良くなっていた新一に持ち掛けられたのが、王様ゲームだった。

王様ゲームという言葉は一応知っていたが、実はルールを知らなくて。

『王様ゲームって、どういうゲームなんだよ?』と首をかしげると、みんな一斉に『ええーーーっ!!』と驚きの声を上げた。

とりあえずやっていけばルールなんてすぐに覚えれると言われ、その通りかもしれないとその場はゲームに参加することにした。


―― ようするに、籤で決まった『王様』が出した命令を、その番号の籤を引いちまった奴がするってことか…


少ししてみると、そんな感じですぐに王様ゲームの流れは解った。

最初は軽い命令ばかりで、正直、新一も王様ゲームを楽しんでいた。



が。



新一がそろそろ帰ると皆に伝えると、最後に一回しようということになり、悪しくも向日が王様を引いてしまったのだ。



『ふっふっふ〜♪最後だから濃い命令だすぜ〜♪』


そう楽しそうに笑う向日に嫌な予感がしたが、既に籤を引いてしまっていたから、後は自分の番号が呼ばれないことを祈るしかなかった。


『じゃあ、2番!2番が〜』

『げっ、俺だ…』


嫌そうな声を出す岩崎に同情しながらも、自分の番号でないことに新一はホッと胸を撫で下ろしたのだが。





『7番に〜』





続いて向日が発した番号に新一は本気で固まった。

見間違いであったらいいと恐る恐るもう一度自分の持っている籤を見ると、そこには紛れもなく7番と刻まれている。

が、それだけでは終わらず、更に向日の言葉は新一をどん底に叩き落した。



『キス♪』


『…………はぁ?』



やんややんやと周りが騒ぐ中、新一は一人思考回路をストップさせていた。

“7番誰だよ〜”という声に、隣にいた永瀬が新一の持っていた籤をひょいと取り上げて皆に見せるように振った。


『工藤が7番だってよ。ま、頑張れ』


予想外の命令に思考回路がついて行かず固まっている新一に、「ご愁傷様〜」とか「ガンバレ!」とか「俺じゃなくて良かった〜」とか言葉が投げかけられる。

が、何とか我に返ると、思わず立ち上がり、向日を睨んで抗議した。


『ちょっっと待て!! んな命令していいのかよっ!!』


聞いたことねぇぞ!と眼光をさらに鋭く睨むも、向日はやはりというか、全然堪えていないようで笑って頷く。


『あぁ、普通するぜ?』


なぁ?と周りの友人に声を掛ける向日に、周りのみんなも苦笑しながら頷き合っている。


『だな。盛り上げるために』

『まぁ、フツーじゃん』

『最後の命令だし、仕方ねぇよ』


皆正直者というか何というか、他人事だと思っていることがひしひしと伝わってくる。

絶句している新一に、永瀬がおもしろそうに『諦めろ』と諭してくる。


と。


不意に後ろに誰か立った気配がして。


『ん〜。ま、しょうがねぇか。工藤とだったら全然いいし♪』


そう言う岩崎の声が近くで聞こえたと思うと、腕を掴まれて振り向かされ、腰を浚われて岩崎に抱きしめられる形になっていた。


『へっ!?』


めまぐるしく変わった自分の体勢に付いていけないでいると、周りからおおーっという歓声が上がった。


顔が近付き頬を撫でられているのにまだ呆然としている新一に、岩崎はにっこりと笑った。


『ディープでやっちゃっていい?』


その言葉に、新一はついにブチ切れた。


『ざっけんな!!』


黄金の右足で岩崎の腹に華麗にキックを決め、怒りを隠すことなくその場を後にしようとしたのだけれど。

そこを向日や永瀬に宥めすかされ言いくるめられ、結果、平次も巻き込むという大惨事にまで発展してしまったのである。


そしてそれを原因に、新一はもう何があっても王様ゲームはしないと心に決めたのだった。


「とにかく、俺は絶対…」


やんねぇぞ、と言いかけたのだが、「頼むよ〜」と泣きついてくる友人たちを横目に見て、ぐっと押し黙った。


ここまで頼まれているのに否と言うには可哀想な気がしてきたし、このまま押し問答を続けている間に、女の子たちが帰ってくるだろう。

その時に男で揉めていては、せっかくの楽しい飲み会が台無しになってしまうかもしれない。

この場の空気を悪くしてしまうのは新一の望むところではないし、どうせなら楽しく飲みたいと思う。


新一は眉を顰めると、大きなため息を付いた。



「………変な命令しねぇんなら、やっても、いいけど…」



そのセリフを聞いて、「やったー!」と喜ぶ男たちに、ちょうど戻ってきた女の子たちは驚いたように目を丸くしたのだった。






















王様ゲームって、平次新一が混じるとかなり萌えますよねっvv

とりあえず、ゆーっくり進んでおりますvv
えっと、あらかたストーリーはまとまったので(やっとかよ)、後は頑張って文章にしていきますvv
ん〜、10話くらいになるかなぁ、と…vv
や、それ以上かも…ιι
鈍亀更新なので、『あぁ、そういや、そんなんもあったね』くらいの軽い気持ちでご覧いただければと思いますvv


(2011.02.02)
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