謎を解く鍵を握るのは ――






謎解き

No.4






―― っ何でっ…何で何で何でっ…!!


新一はかつて無いほど混乱していた。

呼吸も苦しくなり、足も疲れ果てていたが、新一は走ることをやめなかった。


家に着き、震える手で鍵を開けると一気に寝室へと飛び込む。

バタンとドアを荒々しく閉めてから、ずるずるとその場へ座り込んでしまう。






さっき、平次は何をした?








自分は……。








思い出すと顔に血が集まって沸騰したように赤くなった。
























起こそうとして抱きしめられて。


驚いたけれど全然嫌じゃなくて…むしろ、安心してしまった。



平次の、温もりに。



思わず瞳を閉じて身を任せてしまいそうになったが、気を引き締めて再び立たせようと平次を見た瞬間。

目の前に平次の整った顔があって。

唇に柔らかな…少し震えている感触があって。



心が…喜びに奮えた…。



だけどそんな考えをぎゅっと目を瞑ることによって振り払うと、力を込めて平次を押し返そうとした。










それは、『オカシイこと』だったから。










が、どんなに力を入れても平次が新一を放してくれることなどなく、更に深く口付けられてしまう。

酒を飲んでいるのにどこからそんな力がでるのか、と本気で聞きたいと思ってしまったくらいだ。


けれど、そんなことを考えていられたのはほんの一瞬しかなくて。



優しく新一の舌を掬い取るくせに、次の瞬間、ソレは激しく貪るような口付けに変わっている。





―― 気持、ち…い……





うっとりと目を閉じると、平次の熱い手が首筋に当てられて撫でられる。

それだけのことなのに、新一の身体は敏感に反応を返してしまった。

抵抗する気が失せたのが解ったのか、平次は長い口付けを解くと耳朶をカリッと噛んでねっとりと舐めた。

そして紡がれた言葉に、新一は泣きそうになった。





「…工藤…」





どうして、と思う。


どうして名前を呼ばれただけなのに、こんなにも苦しいのか。



「…何で俺が話し掛けたらアカンねん?…もお、工藤と話せんの、限界やで…」



―― そんなの、俺だってとっくに思ってる!!



言わなければよかったと、自分の言葉を後悔している。

平次が落ち込んでいるのを見るのも、胸がとても痛んだ。




それに…ずっと、触れたかったのだ。


肩に、手に…髪の一房でもいい。



いけないと思いながらも。



…解っていても…それでも…!









だけど、傍に居たら、絶対迷惑をかけてしまうから。それだけは、嫌だから。


「工藤…傍におれや…俺ん傍に…ずっと…」


平次の声が泣いているのかと思うくらい震えていて。


それ以上に。


平次のその言葉に、心が喜びで溢れて…。




再びぎゅっと抱きしめられたかと思うと、キスを与えられていた。


チュッ…チュクッ…という舌が絡み合う小さな音でさえ、夜の公園には響いているような気がする。



平次は熱くて。



思う存分新一の唇を味わうとふっと少しだけ離し、すぐにまたそれを重ねて絡め取る。


何度も何度も、角度を変えて。


優しく。時には飢えた肉食獣のように、激しく。








瞳を閉じて平次の背中に腕を回そうとした新一は、そこでようやく自分達のしていることが何なのか気付いた。


瞬間、思い切り平次のお腹にキックが炸裂していた。


「っつ〜」


痛みに悶える平次に、新一は息を乱しながら罵声を送った。

言いたいことはたくさんあるのに、口から出るのは子供みたいな捨て台詞で。

平次が何か言う前に一目散に逃げ帰った。

それから何処をどう走ったか覚えてはいない。







座り込んだことでようやく少しだけ荒い呼吸が収まってきた。

だけど相変わらず新一の心臓は早鐘を打つばかり。

どうして、と投げかけてみるけれど、それに答えてくれる人はいなかった。













 














新一は眠れない夜をすごし、ついには朝を迎えてしまった。

疲労がたまっているのは重々承知しているが、学校に行かなくてはと新一は支度を始めた。

それでも昨日のことが頭に浮かんでは消えと新一の頭を悩ませる。結果、新一が支度を終えて家を出たのはもうお昼になろうかという時刻だった。




歩きながら、新一は今だ解けない謎に頭を悩ませていた。

平次が酒のせいで何もかも忘れていて欲しいと思う。

けれどそれはそれでとても悲しいとも、思った。



結局、自分がどうしたいのか、平次にどうしてほしいのか解らない。



こんな状況で平次と会うのはかなり不安だが、『俺に話しかけるな』と言ってあるから平次から話しかけてくることはないだろう。

一つの大きな謎を解こうと頑張っているのに、平次からもらったのは更に大きな謎。

ふう、と溜息を吐いてふと顔を上げると、新一はビキッと固まってしまった。



平次が待ち構えたかのように新一の行く手を遮っていたから。



新一の頭の中が更に混乱する。

どうしてここに、と思ったが、新一を待っている訳ではないかもしれないのだ。

ただ、たまたまここに平次がいただけで…。

そんなことを考えていると、平次が新一に気付いたように顔を上げた。


「!工藤!」


呼ばれた瞬間、新一の思考回路は完全に停止してしまった。

そんな新一に平次は近寄ってくる。


「工藤、昨日…」












瞬間。












新一は考えるより早く、平次に背を向けて全速力で走っていた。


どうして逃げるのか、自分でもよく解らない。けれど、新一は人生で一番、死ぬ気で走った。







残された平次はというと。やはり、固まっていた。

それはそうだろう。話しかけるなとは言われたものの、昨日のことはやはりハッキリしておかなければと勇んでいたのに。


これは少々…というか、かなり堪える。




平次は笑おうとして失敗し、口元をひくつかせた。


「ほぉ、おもろいやんけ…俺から逃げられるとでも思うてんのか!」


ぐっと掌に力を込めると、逃げられたショックを打ち消すかのように前を見据えて走り出した。












新一がぐるぐるしています。平次もぐるぐるしています。
次で決着がつけばいいなと思いますvv
それにしても平次が可哀想vv(まだ言うか/笑)
次は最終話ですvv
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