この深い迷路の先に



光があるのが 見えますか ――?





謎解き

No.3



は〜、と自分で吐いた溜息の深さに気付かないくらい、平次は落ち込んでいた。

もう1ヶ月も新一と話していない。

平次は自分でも驚いていた。


新一と言葉を交わせない日々がこんなにも辛い。


いつもならば1ヶ月などあっという間に過ぎてしまう。新一と一緒に居れば時間が過ぎるのが早いから。


壁に背を預けてもたれ掛かるとポケットから煙草を取り出して火をつける。

一回大きく吸って、吐き出す。


「…マズ…」


新一が嫌うので煙草は止めていた平次だったが、今は新一が傍にいないので再び吸うようになっていた。

このごろ吸いすぎだという自覚はあるのだが、気がついたら灰皿の中には溢れんばかりに煙草の吸殻が収まっている、というのは日常茶飯事になりつつあった。

最近はやる気が起きず、学校がないときは一日中家の中で煙草を吸うという不健康極まりない生活をしていた。



新一がいないのがキツくて煙草を吸うが、その度に新一がいない事実を平次に知らしめる。結果、また煙草を吸う、という悪循環。

新一がいないだけで自分の生活リズムも全部、こんなに簡単に狂ってしまうとは思わなかった。

一口吸っただけの煙草をもみ消すと、平次は再びため息を吐いた、その時。


「お〜い、服部〜!」


向こう側から悪友が平次に向かって走ってくる。高橋だ。


「…おう」


覇気の無い声で返事をする平次に怪訝な顔を向けると、高橋は小さく溜息を吐いた。


「おい、最近どうしたよ?元気ねぇんじゃねぇの?」

「…せやな〜」


同意するように平次が頷くと、高橋は更に眉間の皺を増やした。


「何があったか知らねぇけどよ、落ち込んでてもいいことねぇって!それより飲みに行かねぇ?川崎や田辺もくるぜ?」

「今日か?」

「あぁ、俺達も飲みたい気分でよ!服部も気分転換にどうだ?」


ついでのように平次を誘うが、明らかに自分に気を使ってくれて飲みに行こうと計画を立てたのだろう友人達に、平次はくすっと笑った。


「せやな、ほなら行かしてもらおか」

「そうこなくっちゃな!7時にいつもの場所で!遅れんなよ!」

「ぬかせ!」


悪態つく高橋に笑いながら手を振ってその背中を見送ると、少しだけ浮上した気持ちに笑みを浮かべた。












 














約束の7時に集合場所に行き、全員揃ったところでいつも行く居酒屋へと足を進めた。

それからくだらない話などをしながら飲んでいたが、平次はいつも以上に急ピッチに飲んでいた。


そうせずにはいられなかった。


度数の高いお酒ばかりをロックでどんどん飲み干していく平次に、友人達は止めたのだが、それにも構わずに飲んだ。

どんなに楽しく悪友たちと盛り上がっても、頭の中から新一が消えない。


それどころか、考えまいとすればするほど新一の存在が焼き付く。






会いたい、と…。






傍に…いたいと……。





心が痛いほど叫んでいる。







消そうと思って、さらにグラスに残っているお酒を一気に飲み干した。


お酒に強いことを嫌だと思ったことは一度も無いが、この時だけは自分の体質を少々恨んだ。



飲んで、酔っぱらって。






忘れることができたなら…。






それがほんの一時のことでしかないのを知っていても。






平次は、そう願わずにはいられなかった。






どんなに飲んでも消えない新一の姿に、小さく溜息を吐いて更にピッチを上げていった。













 














平次はふわふわする思考の中で、自分を呼ぶ声を聞いた。


「おい、服部!?」


それはずっと。

ずっと、ずっと…ずっと聞きたかった、声。


「ん〜、くどぉ〜?」


ぼんやりとしながらも目を開けると、紛れもない新一が平次を心配そうに見ている。

それだけで何だか、泣き出しそうになってしまう。


「ホントに何やって…うわ、酒くさっ!お前、飲みすぎだろ!!」


肩を貸そうとして平次に近づいた新一は、その酒臭さに眉を顰めた。


「…俺、店で飲んでたんやけど…」


本当は、そんな質問がしたかった訳ではないのに、口から出た言葉はソレだった。

実際、そんなことどうでもよかった。目の前に新一がいるのだから。



夢だとしても…良かった…。



「バーロー、今何時だと思ってんだ。高橋たちはとっくに帰ったぜ」


怒ったようにそう言う新一の声だが、心配してくれているということが解って嬉しい。


「ほら、帰るぞ!立てるか?」


そう言って、平次の手を新一が握る。

久しぶりの新一の体温に、平次は心底ホッとした。


そして、心配そうに平次に向けられる視線が、平次には何だかとても泣きたくなるほど優しく見えた。


どのくらい見てなかっただろうか、この瞳を。


平次を見る、新一の蒼い瞳が何よりも好きだった。



新一が平次の腕を取り肩を貸して立たせようとしたよりも早く、平次は新一の身体を抱き寄せた。


「っぅわっ!?」


驚いたような声を上げた新一は、力の差もあり、易々と平次の腕の中に納まった。

ぎゅうう、と新一を力任せに抱きしめると、ふわりと新一の香りが平次の鼻孔をくすぐる。


腕の中にある新一の体温と香りが、平次を更に酔わせていた。








何だかとても…いい、気分だった。









「服部、帰…っ!!」



気がつくと平次は、腕の中にいる新一の唇を奪っていた。



「っんん、…ん!!」



驚いて平次の腕の中でもがいている新一の抵抗を難なく押さえつけると、更に深い口付けしかけていく。


新一の唇をくすぐるように舌で舐めると、歯列を割り、驚いて縮こまっている新一の舌を絡め取る。

ゆっくりと舌を絡め取ったと思うと、すぐに激しく暴れるように口内を侵す。



新一の首に手を這わせると、ビクンッと敏感な反応が返ってきた。

キスをしながら愛しそうに新一の細い首筋をつつーっと指で撫でる。


新一の身体の力が抜け切ったのを見計らってようやく唇を離してやり、そのまま頬にキスを一つ落とすと耳朶を甘噛みしてペロリと舐め上げた。


「…工藤…」


吐息を漏らすように新一の名前を囁く自分の声が、思った以上に掠れていて。

自分が本当に新一に飢えていることに気付く。


「…何で俺が話し掛けたらアカンねん?…もお、工藤と話せんの、限界やで…」


お酒の酔いも手伝って、ずっと言いたくて言えなかったことを新一に伝えていく。





「工藤…傍におれや…俺ん傍に…ずっと…」





少しでも離れていたくない。




離したく、ない…。







ぎゅっと抱きしめて再びキスを仕掛けていく。


新一とのキスは、甘い……。

心地よく、溶けていく、という言葉がピッタリなくらい。蕩けそうになる程、とてもいい。




だけど。





まだ、足りない――。






身体を、開かせて…自分を刻み付けてしまいたい……奥まで……。















瞬間、ドカッという鈍い音が響き、遅れて平次は腹に与えられた激痛に顔を顰めた。


「っつ〜」


襲ってきた痛みのする腹に気をとられている隙に、新一は平次の腕の中から飛び退いた。

そして平次はハッと我に返る。


―― 俺…今…何…


サァッと血の気が引く。お酒なんて一瞬にして抜けてしまった。

ゆっくりと顔を動かして立ち上がっている新一を見上げると、次の瞬間罵声が降ってきた。


「っこ、の、バカ!!何っ…でっ…!!」


顔を真っ赤に染めて目を潤ませて平次を睨んでいる新一に、こんなときだと言うのに平次の熱が上がったのが解った。



ゾクリ…と。背中に何かが駆け抜ける。



「っ…馬鹿服部!!…っバーーーカ!!」


まるで小学生のような捨て台詞を残し、新一は踵を返すと平次を置いてそのまま走り去ってしまった。


呆然とその背中を見送りながら、自分のしてしまったことに頭が混乱する。







そして一拍後。







ぷっと平次は吹き出した。そしてお腹を抱えて笑い出した。


「っく、何やねん、あの可愛さはっ!!っははは!!」


笑うと蹴られたお腹が痛むけれど、構わず平次は笑い続けた。

笑いすぎて呼吸も苦しいというほど笑った。






ようやく笑い終えた頃には、平次は涙目になっており、苦しそうに、でも表情は楽しげに壁に寄りかかる。


「…あー、アカンわ…反則やで、工藤…」


肩で息をしながら、平次は空を見上げた。



確かに見えた、自分の想い。


身体で感じた、新一への情欲。




空に星が瞬いているのを視界に映すと、平次はゆっくりと瞳を閉じた。







―― 好きやで…工藤……








自分でも信じられないくらい凪いだ気持ちで新一を想う。


夜空で一等光を放つ星が、キラリと輝いた気がした。











おわわ〜!!平次酒に酔ってやっちゃいました〜!!(をい/笑)
腹を蹴られて逃げられるなんて、可哀想〜vv(あんさん、大魔王や/笑)
こんな扱いですが、平次は愛してますよ、もちろんvv

平次の方の謎は解けましたねvv
後は新一ですvv
頑張れ、新一vv
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