答えを …… 見つけてください ……





謎解き

No.2



『これからしばらくの間、俺に話しかけるな』と平次に告げたのは一週間前。

新一は机の上にあった雑誌をぱらぱらと捲ると、興味なさげに閉じた。


―― 服部、呆気に取られてたな…


いつもの平次だったら考えられないほどマヌケな顔でポカンとしていた平次を笑う気持ちにはなれなかった。


「…ごめん、服部…」


ポツリと口にしてみるけれど、あの言葉を訂正するつもりは微塵も無い。

パタリとベッドに倒れこむと苦しげに息を吐いて瞳を閉じた。






―― 俺、おかしいんだよ…服部…






そう、平次を遠ざけたのはちゃんとした理由があった。

最近、やけに夢に出てくるのが平次だった。

それだけならば何ら問題はない。


けれど。


その内容に問題があるのだ。





夢の中の平次は新一を抱きしめる。





キスをする。






…新一を…抱く…。



平次に抱かれている自分は、泣きそうになるくらい幸せを感じる。




平次に触れられて。




キスを与えられて。




熱が…上がっていく…。






もっと…もっと欲しいと、切望する…。






と、新一は強く頭を左右に振って雑念を追い払った。

その夢を見始めてからというもの、どうも平次が気になって仕方ない。

平次の表情はもちろん、ふとした仕草や新一に触れる指… 平次の全てが新一の心に雷を落としたような衝撃を与える。

そして平次を見ていると…キスしてくれねぇかな…なんてことを考えたりしてしまうのだ。


これは、すごくおかしいことだ。


自分でも解っているのだ。

しかし、どうして自分がそんなことを平次に対して思うようになったのかは全然解らない。どうしてあんな夢を見てしまったのかさえも。

だけど、近くに居るとポロッとそれを口に出してしまいそうで。





…怖かった…。





今の関係はすごく心地いい。それが壊れてしまったらと考えると恐怖が襲ってくる。

だから、離れるように平次に言った。

平次と離れていれば、このおかしな考えが変わるのではないかと思って。

それ以上に、こんなことを考えているなんて平次を汚しているようで居た堪れない。

近くにいれば、触ってしまいそうで。

平次にしてみれば気持ち悪いとしか思わないだろう、この感情。


何が原因なのか、どうすれば治るのか、解らない。






この胸を焦がすような…切ない感情の名前も、解らない……。
















 

















大学の講義が終わり、放課後になった。

ふと窓から外を見ればどよーんとした空気を纏った平次が目に入る。

その姿に思わず追いかけようとした足を理性で留めて、無理やりに平次から視線を逸らす。




離れていれば、このおかしな考えは消えると思っていたのに全然消えない。どころか、平次を見るだけで胸がドクンと大きな音を刻む。



離れてすでに1ヶ月が経つというのに、新一は自分の気持ちの整理が出来ないで居た。

毎日毎日考えているのに、少しも答えなんか出ない。

どころか、悩みの種であるあの夢もしょっちゅう見るようになってしまった。



すごく、焦る…。



早く自分の中で解決して。



おかしい感情を根こそぎ消し去って。




早く、平次の元へと行きたいのに。





触れたいと願う気持ちは日に日に大きくなっていき、おかしいと思う感情は更に大きく心に根をはる。





自分がこんなに行き詰ることなどないと思っていたのに。





事件の時だって、冷静沈着でいれた。推理も衰えたということは全く無い。





それなのに…この謎が、どうしても解けない…。




解っているのは……離れていても辛いだけ、ということ。



見なければ大丈夫という新一の考えも甘かったと知る。



目が、勝手に平次を探してしまう。



気がついたら探している。見つめている。




落ち込ませているのは自分だと解っているのに、平次が落ち込んでいると辛い。

新一は苦しそうに瞳を閉じると、空を仰いだ。

















新一の尊敬するシャーロック・ホームズなら解けただろうか?











こんなにも苦しくて…。

























こんなにも胸を焦がす、謎を…。




















彼なら…答えを見つけてくれるのだろうか――?





















 





















夜、新一がお風呂から上がって自分の部屋でくつろいでいる時、新一の携帯が鳴った。

11時を回っている時計を見て眉を顰め、こんな時間に誰だよ、と心の中で悪態をつきながらも新一は電話に出た。


「はい?」

「あ、工藤?ごめんな、寝てたか?」


その声は友人の一人、高橋のものだった。どうして高橋が自分に電話などしてくるのだろうかと首をかしげる。


「いや、起きてたけど…どうしたんだよ?」

「あ!そうそう、お前、服部の家知ってるんだろ?」


いきなり高橋の口から出てきた平次の名前にドクンと胸が高鳴る。


「…知ってる、けど…それが何?」

「あのさ、今日皆で飲んでたんだけど、珍しく服部がすげぇ飲んで酔って寝ちまったんだよ。考えてみれば俺達、服部の家知らねぇからこうして工藤に電話したんだけど」


高橋の言葉に、新一は一瞬息を呑んだ。

平次が酔って寝てしまった?

何かの間違いではなかろうかと疑いたくなる単語だった。


「酔った?服部が?」


どうしても信じられなくてもう一度確認のためにそう聞くと、電話の向こうで高橋が苦笑するのが解った。


「そ。酔っちまったの。服部が。」


しっかりと肯定する高橋に、まだ疑う心が消えないではないが、ようやくその言葉が本当なのだと解る。


そこまで聞いてもまだ信じられないのも無理はないことだと自分でも思う。

平次はお酒にかなり強いのだから。


以前新一と一緒に飲んだときもかなりの量を飲んだというのにこれっぽっちも酔っぱらうことなどなかった。

新一も強くはないがそこまで弱いわけではないのだが、平次には到底及ばない。

そもそも、新一はあんなにお酒が強い人間を平次と出会うまで見たことがなかった。


そこまでザルな平次が…?


「…服部、そんなに飲んだのか?」

「ああ、そりゃもう。俺達があれくらい飲んだら死んじまう程の量を飲み干しやがってよ。最初は何か落ち込んでたみたいだから声かけたんだけど、こんなに落ち込んでたなんてな〜」


何気ない高橋の声が新一の心に響く。悩ませたのも、落ち込ませてしまったのも他ならぬ新一だから。


「わーった。じゃ、俺が迎えに行くよ。今、どこ?」


助かった、という高橋から公園にいるということを聞いて電話を切ると、新一はすっくと立ち上がった。

近づくなと言った手前、平次を迎えに行くなんて言語道断だが、理由が理由なので仕方ない。

それに、そんなに酔っぱらっているのなら新一が平次を迎えに行ったことなど明日には綺麗サッパリ忘れてしまうだろうと推理した。

平次の近くにいけるということが何だか酷く嬉しい。

その気持ちを振り払うようにぐっと手のひらに力を入れると、新一は家を後にした。
















ハイ、新一には新一の葛藤があったのですよ
自分の感情に気付かない新一が愛しいvv(笑)
次は平次サイドですvv 悶々させますvv(爆)
Index > Top > ノベRoom > 謎解き2