この『 謎 』



あなたなら … 解けますか ――?






謎解き

No.1






服部平次は自分に言われた言葉に、男らしく整った顔立ちを驚きに歪めた。

ともすればこの世の絶望を知ってしまったような、そんなどこか魂の抜けたような表情で。

平次をどんなに知っている人でも見たことが無いようなポカンとしたその顔は、お世辞にも男らしいとは言い難い。

それほど先ほど平次に向けられた言葉は衝撃的だったのだ。


その平次に大ダメージを与えるほどの言葉を放った人物は、特に慌てる様子も無く平次の顔をじっと見ている。

ぐらぐらとする頭を抑えながら、平次はあくまで冷静にしなくてはと目の前の人物にちょっと待ったとばかりに手でストップをかけた。


「えーと…今何や幻聴が聞こえたみたいなんやけど…」


「これからしばらくの間、俺に話しかけるなって言った」


まるで、「今日一緒に帰れないから」とでもいうような軽いノリでサラリとその一言を言ってのけた工藤新一は、そういうことだから、と平次に背を向けた。

平次の迅速かつ冷静な思考回路を一刀両断したばかりか、更に追い討ちをかけるように去っていく新一を平次は必死になって引き止めた。


「な…納得いかへんで!!なしてそないなことになっとんねん、工藤!!」


声を荒げる平次と対照的に、新一はいたって普通だった。


「何でって、俺がそう決めたからに決まってんだろ」


逆に、どうしてそんなことを聞くのか解らないというように平次を訝しげに見る新一に、平次は本気で頭痛がしてきた。






昨日までは、新一は普通だったのに。

4月に同じ大学に入り、新一の家に近いアパートを借りていた平次は朝が弱い新一を毎日迎えに行くのが日課にまでなっている。

事件が起これば二人して警部に呼ばれて謎を解いたり、同じ講義のときは隣の席に座るのも日常で。

他の友人達にも仲が良いなと口をそろえて言われる関係。

平次にしてみれば、こんなに気が合う人は初めてで。気が合うだけでなく、傍にいると安らげたり、特に何もしてなくても新一といるだけで楽しい。

だからずっと二人でいた。

親友だと、思っていたし、新一も平次と同じように感じていることも知っていた。



今日もいつも通り新一を迎えに行って、一緒に大学へ連れて行った。お昼も一緒に食べたし、同じ講義のときは隣の席に座った。

そして、その帰りもいつも通り二人で帰っていた。





それなのに。





特に喧嘩も口論さえもなっていないこの状況時に、新一は唐突にそんなことを言ってのけたのだ。


「お、俺、何や工藤の気に障ることしたんか?」


もうこれ以上回転しないだろうと思うほど頭を回転させて、新一に問う。

理由があれば是非とも本気でお聞かせ願いたかった。





しかし。






「否、全然。」




新一の口から出た言葉は本当に何でもないという言葉だった。

新一の表情から見ても、それは嘘偽りのない言葉だと解る。


「ほ、ほしたら何で…」


それならば、そんなことする必要がないではないかというニュアンスを含めて新一に詰め寄る。

もしかしたら考え直してくれるきっかけになるかもしれないと希望を見出していた平次を新一はスパッと切り捨てた。


「それは俺の問題だから、服部は気にしなくていい」


そんなこと言われても、その被害は全部平次に皺寄せがくるのだから、気にしないでいられるはずもない。

どうにかして先ほどの言葉を撤回してもらおうと平次が口を開く前に、新一はニッコリと笑って先手を打った。


「と言うわけで、これから俺に話しかけんなよ。もちろん、俺からも話しかけねぇし近づかねぇから」


周りに居る人を虜にしてしまうほどの麗しい微笑みなのに、口ではとんでもないことが紡がれている。


ぐわわわわ〜〜ん、と、平次の頭の中で痛いほど盛大にドラが鳴り響いたという。










 










―― わ…ワケ解らへん…


何度も何度も頭の中で繰り返した言葉をまた繰り返す。

文字通り、頭を抱える平次を取り巻く空気は重く、仲のいい友人達も遠巻きから見ているしかないというほどの落ち込みようだ。

昨日から幾度と無く吐いてきた溜息をふうと吐く。

ずっと考えてみても、原因と言う原因が思い当たらない。


新一の問題だと本人が言うのならばそうなのだろう。けれど、どうして平次だけなのだろうか。

他の友達とはいつものように会話し、笑顔を向けるのに。



どうして、自分だけ。



それがすごく納得いかないのだ。


平次が何かしでかしてしまったのなら、謝りようもある。

でもその心当たりは微塵もないし、新一もそうではないと言った。それなのに平次に話しかけるなとはどういうことなのだろうか。

考えれば考えるほど解らなくなるなんて、性質が悪いとしか言いようが無い。

正直、今まで解いてきた事件よりも何百倍も複雑で難しい謎だと思う。

そして、夢ならば覚めてくれと本気で願う。



新一はしばらくと言ってはいたから、おそらく期間限定なのだろうということは覗える。

が、しばらくというのがどれくらいの間なのか見当もつかない。

一週間かもしれないし、一ヵ月かもしれない。

まさかとは思うが一年もそれが続いてしまうかもしれないと思うと、平次の胃がキリキリと痛む。


―― 嘘やろ…ジョーダンきっついで、ホンマ…


新一の言葉など知ったことじゃないと、強引にでも話し掛けてもいいのだけれど。

それで更に話が拗れてしまわないとも限らないし、新一を怒らせてしまったらと考えるとそれもできないでいる。

昨日までは楽しかった新一と同じ講義も、隣に座れないばかりか遠くのほうで他の友達と楽しそうに話している新一を見るのがすごく苦痛になってしまう。

有言実行とはよく言ったもので、新一は完璧なまでにそれを行う。

新一の方から平次に話しかけないばかりか、本当に近くにも来ないのだ。



―― 俺が何したっちゅーねん!!



そんな心の叫びは授業開始の鐘の音にかき消された。







あははははvv(笑)平次がとても可哀想ですvv(アンタ鬼や/笑)
でも、書きたかったんです、こういう平次vv
ワケが解らずパニックに陥ってる平次は可愛いですね〜vv(悪魔や、アンタ/笑)

今回の話は1話1話が少々短いとは思いますが、ご容赦願いたいですιι
さてさて、次は新一サイドでお送りいたしますvv
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