絆

番外編 〜平蔵の受難〜




新聞を広げながら、この家の主、服部平蔵は心底後悔していた。

久しぶりに休みが取れ、家でのんびりと過ごそうと思っていたのにどうしてこんなことになっているのか。




原因は自分の息子服部平次と工藤新一。




以前、二人の関係を打ち明けられ、認めて欲しいと二人揃って平蔵と静華に会いに来た。

もちろん最初は全然認めるつもりもなかったし、許されるはずもないと怒り心頭だった。

馬鹿なことを考えていると思った。




けれど。




二人のお互いを想い合う気持ちに心を打たれて。





新一といることで力ではない強さを手に入れることのできた平次を誇りに思った。





そして分かり難い言葉ではあっただろうが、認めはした。





二人の絆を見せられて認めないわけにはいかなかった。









それほど、深い、想いだったから……。



































が、しかし。





























今の状況はさすがの平蔵でも頭が痛い。


新聞越しに、並んで食卓に付いている息子平次とその恋人新一をチラリと見やった。



今二人は大学の夏休みらしい。

その休みを利用して大阪へ帰ってきたのだ。

数日前から大阪の平次の実家に泊まっているのだが……。





「工藤、あーんしてみ♪」


平次はニコニコと笑みを絶やさずにおかずを箸でつまむと、新一に差し出した。


「ばっ!何言ってんだ!」


瞬間、頬を朱に染めた新一がその恥ずかしさに軽く平次を睨み付ける。

が、それはまったく効果がない上に平次の機嫌を更に良くしているだけで。


「ええやん、ホレ、口開けぇや?」


ほれほれ、と新一の口元に箸を近づけ誘うように上下させると、新一は頬を染めたまま複雑そうな顔をした後、覚悟を決めたようにぱくっとソレに食いついた。

そして自分の息子はその様子を満足そうな笑みを浮かべて眺めている。



「………」



そう、問題はこの二人。


否。この二人のイチャつきぶり、だ。



平次と新一は平蔵や静華の前であっても少しも構うことなくイチャイチャしている。


恋人なのだからイチャつくのは構わないのだが、こうも隠されないと逆にこっちが困ってしまう。

認めてはやった。

二人で生きていけとも言った。

男同士の恋愛は平蔵が考えるより遥かに大変な事なのだろうと思う。だからこそ解ってくれる自分達がいることが嬉しいのだろうことも、二人の態度から伝わってくる。

この家では、世間では隠さなければいけない関係だけど、それをする必要はない。そう平蔵も思っているし、息子に気なんか使われたくないのも本心だ。


が、しかし。


しかし、である。


だからと言ってこの家の中で堂々とイチャつかれるのは勘弁して欲しいと何百回思ったことだろうか。

もちろん、新一は平次より理性があるのだろう、彼から仕掛けることは皆無だが、平次から仕掛けられると一応やめろとは言うものの、結局平次を受け入れてしまうのだ。



目の前でキスシーンを見てしまったときは、泣きたくなった。

ディープキスではなかったのが救いと言ったところだろう。



二人の空気はピンク一色で、近くにいるとハートマークまで飛んできそうな勢いだ。



むしろ隠して欲しいと本気で思った。










「工藤、付いとるで?」

「ん?」


新一の口元に付いているご飯粒を平次が教えてやるのだが、新一は反対の頬に手を伸ばした。

何処だよ?と頭にハテナを付けている新一に蕩けるような笑みを浮かべると、平次は新一の肩を抱きよせた。


「ココやって」


新一の頬に付いたご飯粒をペロッと舐め取ってやった平次は、「ごち」と嬉しそうに笑っている。

新一は弾けたように舐められた頬を押さえる。


「バーロー//!口で言えっ!//」


恥ずかしそうに平次を睨む新一だが、その瞳に怒りはこれっぽっちもない。

むしろ、平蔵にはじゃれているようにしか見えない。


二人が付き合い始めて1年以上経っているというのに、この蜜月っぷりはどうしたことか。


『バカップル』という言葉の意味をこんな形で痛感するとは。


思わず新聞を持つ手がわなわなと震えた。










食事を終えた二人は食器を流しに持っていくが、その間も平次が空いた片手で新一の腰を引き寄せて首筋にチュッとキスを落とす。

キッチンから出てきた静華がその食器を受け取りながら「あらあら、仲えぇねぇ」とニコニコ笑っている。

どうして突っ込まないのだと静華に問い質したい。

静華も最初は目のやり場に困っていたようだが、順応能力が高いのかすぐに二人の行動にも慣れてしまったらしい。


結局、慣れない自分だけが内心あたふたと慌てているのである。





「工藤、工藤♪早よ部屋戻ろおや?」


先ほど食べ終わったばかりだというのに平次は急かすように新一の耳元に囁きかけた。


「?何でだよ?」


きょとんとした表情で平次を見つめる新一だが、平次はそんな鈍いところも可愛いと思っているのだろう、だらしない笑みを浮かべている。


「決まっとるやん♪…もっと工藤とイチャイチャしたいねん…」


その意味を正確に理解した新一はボンッと赤くなるものの、少しも嫌そうではない。




と言うか、睦言は人に聞こえない程度の小さな声で話すべきだと、平蔵は心底思った。


会話が丸聞こえである。




もう限界とばかりに平蔵はガタンと大きな音をさせて立ち上がった。




その音に驚いたようにシーンと静まり返った三人の視線が平蔵へ向く。

平蔵は溜まりに溜まった意見をぶちまけてやろうと大きく息を吸った。





…のだが。






「…ちょお、出てくる…」





口から出た言葉は全然関係のない言葉だった。



新聞を片付けられたテーブルの上に置くと、平蔵はいつもより少しだけ早い足取りで部屋を出た。


二人はあと数日はここに滞在するという。


平蔵の受難はまだ終わりそうになかった。










〜 fin 〜


あははははvv平蔵が可哀想ですvv
でも、平次新一なら、これくらいするでしょうvv
というか、自分達がイチャイチャしている事実にも気付いていないでしょうvv

「絆」を読み返していて突発的に思いついたお話ですvv
いや〜、書いてて楽しかったです、かなりvv(笑)
ギャグって、いいですね、ホントvv
次の作品も頑張りますっvv
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