何にも代えがたい 一番 ――




君の隣

-3-




最近、自分の許容範囲外な事が起こりすぎている気がする。

平次にされた事、田崎に言われた事が頭の中でループしている。

しかしながら元凶の2人はあの後も普通に、本当にいつも通り接してくるから始末に負えない。


田崎の方は冗談だと思い込むことに決めた。

たとえ、田崎がそういう冗談を言わない奴だと知っていたとしても、だ。

田崎に平次とのあの場面を見られたのは……とてもいたたまれないけれど。

それも、考えないようにしている。


「…う……どう…………工藤!」

「えっ!?」


強い口調で呼ばれ、ハッと我に返って顔を上げた。


「あっ、な、何?」


机を挟んだ向かい側に座っている平次と目が合うと、盛大にため息を吐かれた。


「何やあらへんやろ。どないしたんや、ボーっとしよって」

「別に、ボーっとなんかしてねぇよ」


構内の食堂で昼食をとっている事を思い出し、止まっていた箸を動かす。


「ソレ、全然説得力ないんやけど? 何かあったんか?」


―― オメーの所為だろうがっ!!


そんな心情に微塵も気づいていない様子の、原因を作った色黒男を睨みつける。

平次は不思議そうに首を傾げ、ふと何かに気付き微笑んだ。


「工藤、ついてんで?」

「え?」


すっと伸ばされた手が新一の唇のすぐ下辺りに触れ、離れていく。



瞬間、あの時の平次の熱が鮮やかによみがえって来た。



平次の身体、重み、熱、表情…その全てが、色あせることなく心に残っている。


新一の身体に触れて、これ以上ないと言うほど何度も何度も、キスをされて。


―― そういえば、コイツとキス、したんだよな……


あれは、ヤバかった。脳みそが溶けてしまうかと思うくらい、ヤバくて。


とても……気持ちがよくて……。



咄嗟の事で驚いたけれど、胸にこみ上げる涙が出そうな位の暖かな感情が溢れ出る事を止められなくて…。






あの、感情は……。







「工藤!」


声と同時に頭に被せられた視界を遮るものに驚いて、我に返った。


「!! な、何!?」


咄嗟に確かめるとそれは平次の帽子で。


「簡単にそないな顔人に見せんなや。 せやからお前は無防備やっちゅーてんねん」

「え? 何? 顔?」


早口でまくしたてる平次の言葉の意味が理解できず、帽子の隙間から様子を窺う。

怒っているのかと思ったが、どちらかというと焦っている様にも見えて。

だから、余計何を言いたいのかが分からない。

どうするべきかと少し思案すると、それが伝わったのか盛大なため息が聞こえた。


「……無意識てアカンやろソレ……頼むでホンマ…」

「えっと……悪い、聞いてなくて…何だった?」


とりあえず思い当たる点を謝ってみるがどうやら違っていたらしい。平次がガクッと肩を落とした。


「そーゆー事やのォて…いや、ええわ…」

「よくねぇだろ。 ちゃんと言えって」

「ええねんええねん。次の授業もあるし、早よ食べてまえや」


更に追求しようと思ったが、新一がボーっとしている間に平次は既に食べ終えているようで。

これ以上待たせるのも悪いと思って言葉を呑みこみ、箸を動かした。

もちろん、後でちゃんと聞き出してやろうと心に決めながら。










 











今日最後の授業が終わり、一緒に帰宅しようと待ち合わせ場所のA棟中庭に来たところで携帯がメール着信を告げた。


『すまん、教授に捕まってしもた! ちょお遅なるさかい、待っといて!』


メールの文面を見て、その様子がありありと浮かび、思わず笑みが零れる。

今日は最後だけ平次と違う講義だったので、こんなこともあるかと考えて推理小説を持って来ていた。

幸い新一の外には誰もおらず、静かに集中できそうだ。


平次にメールを返してベンチに腰掛け、推理小説を読み始めて数ページの所で人の気配がして顔を上げ――。



固まった。



推理小説を取り落とさなかった自分を褒めてやりたい。


「お、工藤。 一人か?」


現れたのは元凶その2、田崎である。


「あ、あぁ。 今、服部待ってて…」


何とか冷静を装えたのだろう、田崎は新一の動揺に気付くことなく隣に腰掛け、自分の鞄から何かを取り出した。


「丁度良かった。 コレ、借りてたCDな」

「あぁ」


そういえば結構前にCDを貸していた事を思い出し、受け取る。

ふと、渡されたCDが2枚ある事に気付いて顔を上げると、田崎は笑みを浮かべた。


「ソレ、すげーいいから聞いてみろよ。 俺のオススメは2、3、8、10曲目な?」

「ん、サンキュ」


田崎とは音楽の趣味が結構合う。

遠慮なく借り受けて、2、3、8、10曲目と頭にインプットしていると、楽しそうな声が聞こえた。


「で、都合いい日は?」

「へ? 何が?」


いきなりの質問にクエッションマークを浮かべると、少し眉を顰めた田崎を目が合う。




「だから、いつになったらヤらしてくれんだよ?」




カシャァンン――!!!




思わずCDを落としてしまった。

悪い冗談だと思い込んで忘れる努力をしまくった事をいとも簡単に掘り返してきた。

固まったままの新一に、田崎の眉間の皺が深くなる。


「何その反応…テメ、まさか忘れてたとか言わねーよな?」

「わ、忘れるも何も、冗談だろ!?」

「はぁ!? 俺が冗談なんか言うかよ。 で?いつならいいんだよ?」


冗談であってくれという切望も田崎には届かなかったみたいで、軽く一蹴された。


「いつになってもいいなんて言うわけねーだろ!」

「あ? 何でだよ!? 服部にヤらせといて、俺は駄目ってか? 差別じゃねーの!?」

「だから違っ…」


違うと言いかけて、言葉に詰まった。

本当ならヤってなんてなくて。ただ抜き合い――一方的ではあったが――をしただけで。

でもそれを言ってしまえば、今度こそ何をやっていたか本当にバレてしまうわけで。

あの時の事は口が裂けても言えない。否、言いたくない。

本当の事がバレたとして。ヤってなかったとしても、服部にさせたという理由で抜き合いっこをさせろと言ってくるだろう。

冗談ではない。




―― あれは服部だったから抵抗なかったけどっ! 他の男に触られるのなんて、死んでも嫌だっての!




心の中で叫んだ言葉に、思考が止まった。



言葉の、意味。



その、理由。




けれど焦れた様な田崎の声で、解りかけていた何かが消えてしまった。


「最近、あの時の工藤の夢ばっかり見ちまうんだけど! 何とかしろよ!」

「!」


ハッと我に返ると距離を詰められており、腰に腕が回される。


「わ、何す…」

「うっわ…ホントだ、マジ腰、細すぎ。 皆、お前ならイケるって言うわけだぜ」


腰を触られている手から逃げるために立ちあがろうとして、田崎の台詞に含まれている違和感に首を傾げた。


「え? 皆?」

「あぁ、工藤ツブれちまってた時、そういう話が上がったんだよ。 男とセックスするとしたら、工藤ならイケるって」

「……はぁああ!?」


一瞬、言葉の意味を理解出来なくて――したくなくて――頭が真っ白になって。

けれど、その理不尽極まりない事に声を上げた新一に、田崎は少し笑って話しだした。










 











あの夜の呑みで、新一が一番最初にツブれてしまって。

その後、悪友の一人がちょっと前に男同士の事情を見てしまったという話を始めたのがきっかけだった。


「男同士でセックスってどうなんだろな〜? ま、俺は絶対遠慮するけど」

「え〜? 男とぉ!? ムリムリムリムリ絶対無理〜!」

「気持ち悪ぃだろ、ありえねぇって」

「萎えるっつの〜」


お酒の力も借りて、くだらないながらも盛り上がって。

只の酒の席での笑い話になるはずだった。



………のだが………。




「……ん……」




小さく聞こえた声に、男達の視線が声の主、新一に集まった。


「あれ、工藤、起きた?」

「起こしちまったか?」


五月蝿かっただろうかと少し声のトーンを落として様子を窺って見るが、どうやらまだしっかりと夢の中にいるらしい新一の寝顔が見える。


「あ、なんか大丈夫みてぇ」

「工藤、酒弱いよなぁ」

「な、問題だよな」


笑いながら言う皆の言葉の端に隠しきれない優しさが見えるのは、新一の人望故だろう。


「こいつ、ほーんとキレーな顔な」

「眠ってる時はちょっと幼い感じだよな」


自然と新一の寝顔を見ていた悪友の一人が、ふと気付いた様に呟いた。


「あ…! 工藤なら、俺イケるかも」

「ん? 何が…あぁ、さっきのか。 …あ〜、そーだなぁ。工藤なら、いーんじゃん?」

「こんだけキレーな男なら、俺もOKかも」

「まぁ、可愛いしな、コイツ」


他の皆も否定することなく、頷き合っている。

と、その中の一人、肯定も否定もしなかった色黒関西男がふいに立ちあがって新一に近づいた。


「ホレ、工藤連れて行くからどけや」

「え、何で?ここで寝かせとけばいーじゃん?」


皆の不思議そうな視線に平次は冗談めかせて笑った。


「こない飢えたヤローしかおらへんところに置いておかれへんやろ?」


そうして何時の間に隣に準備していたのだろうか、布団の中に新一を運んだのだった。










 











お酒が入った為の話だろうが、全然嬉しくない。

話を聞いた新一は脱力して溜め息を吐いた。


「そーゆー話があってさー。 だから俺もちょっと興味持ったってわけ」


―― 服部、も…?


不意に浮かんだ疑問に、ズキリと音を立てて胸が痛んだ。

そういう話があったから、つい新一に手が出たのだろう、きっと。

自分でも解っていたはずだ、ちゃんと。

あれがただの興味本位の延長上の出来事だと。


それなのに何故、こんなに苦しくなるのだろうか?



どうして、こんなに傷ついているのだろうか?




何故こんなにも……泣きそうになっているのだろうか……?





「? 工藤? どうかしたか?」


どこかおかしい新一の態度を不審に思ったのだろう、田崎が心配そうに覗き込んできた。


「え…別に…何でも…」


何でもない様に言ったはずなのに、声が震えていて。


気が付いたら、視界が揺れていて、涙が零れた。


「っ――!? く、工藤!? 何、泣いて…わ、悪い、俺、何か変なこと言っちまったか!?」


慌てる田崎の所為ではないと、涙を止めて言いたかったのに止められなくて。


「ち…がっ……俺っ…がっ…」


そう、問題は、自分なのだ。



気付いてしまったのだ。





この、気持ちに……。






本当はずっと。ずっと前からなのだろう。




ただ気付かなかっただけ、それだけなのだろう。




些細な事にも涙が出てしまうくらい、どうしようもなく平次を好きになっていた事を、自覚してしまっただけ――。




例え気持ちに気付いていなくても、心はちゃんとそれを知っていたから……。




キスされて溢れ出した気持ちは、愛しいと想う、それだったのだろう。










「…工藤、泣くな……」


いつもは遠慮ない田崎の手がそっと新一の頭を撫で、ふいに抱き寄せられて呆気なく腕の中に収められた。

壊れ物を扱うような優しさに、驚いて涙も止まってしまう。


それに気付いたのか腕の力を緩めて少し距離をとり、新一の顔を覗きこんで、小さく笑った。


「お前ホント可愛いのな。 やっぱり、お前とヤりてぇ。 ……なぁ、ヤらせろよ?」


「それは無理や!」


田崎の問いに答えたのは新一ではなく、怒りを纏った平次だった。


声の方向に顔を上げると、いつの間に現れたのか平次が足早に向かってきていて。

顔を見るだけで、ドクン、と心臓が痛いくらいに高鳴る。

呆然としている新一の腕を少し強く引いて自分の腕の中に閉じ込めた平次は、田崎に冷たい一瞥を投げた。


「俺ら、付き合うから。 せやから、工藤に触ってええのは俺だけや」


―― …え…? …………えええええええっ!!??////


衝撃の発言に、新一の顔が一気に赤くなる。

思考回路が爆発してしまった新一を余所に、平次と田崎は睨みあって……やがて、諦めた様に田崎が溜め息を吐いた。


「んな今にも殺しそうな眼で睨むなって。 本気になった服部には叶わねぇし…どうやら工藤もそうみたいだから、な?」

「当然や! ちゅーか、よぉも工藤泣かしよったなァ?」

「それは……まぁ、ちゃんと慰めたし? って、オイオイオイオイ、怖ぇよ! ヤキモチ妬きだな、お前」


平次の本気の怒りに苦笑し、落ちていたCDを拾い上げてベンチに置くと、田崎は立ち上がった。


「んじゃ、俺は行くな。 これ以上ここにいると誰かさんに視線だけで殺されそうだし、な?」

「あ、田崎…」

「ええから」


振り返ろうとして、けれど平次の腕に力が込められてそれをさせてくれないうちに、田崎の気配が去って行った。



田崎が去って行ってしばらく無言が続いて…ようやく、新一は気付いた。

平次が怒っている事に。


「…服部、何、怒ってんだよ?」


恐る恐る口に出すと、火に油を注いでしまったのか、黙って怒りを堪えていたらしい平次が弾けた。


「アホか!! お前の所為やろが!! せやから! 無防備すぎるっちゅーて教えたったのにこのアホ!!」


何やら平次の怒りが自分にある事に疑問を覚えながら、とりあえず謝ろうとして、次の言葉に固まった。


「せやから田崎にああ言うしかなかったんやろ。 ホンマなら、こないややこしゅーするつもりなかったっちゅーねん」


そう、解っていたのに。解っていたはずだったのに。

『俺ら付き合うから』という言葉は、田崎から新一を護るための方便なのだ。

助けてくれた事は感謝するし、理解も出来るけど。


心は納得してくれなくて。


また泣き出しそうな位、胸が痛んで。


「……離せよ…」


出した声は震えていて、でもそれを気付かせないように唇を強く噛みしめて平次を押し返した。


「嫌や」


が、平次はそんななけなしの新一の虚勢をいとも簡単に却下した。

瞬間、止まってくれていたはずの涙がまた浮かんできて。

こんな一言に左右されて、一喜一憂されることが悔しくて…その心地良い腕から逃れようと必死に抵抗した。


「や、だっ!! 離せよっ! 服部!!」

「離すかい! 何で逃げんねん、工藤!」


そう言って、強く。


強く抱き込まれて…。


こんなにも悔しくて腹も立っているのに、これだけで嬉しいと思う気持ちでいっぱいになってしまって。


我慢も何も出来ずに、涙が溢れ出た。


「何っでっ…あの夜っ…あんな事したんだよっ! 俺っ…ずっと悩んで…」

「っ――! …工藤、それは…」


一瞬言葉に詰まった平次に、更に心が傷つく。


「うっせぇ聞きたくねぇ! 興味本位だった事位解ってる! っ最低だ、バーロー!」


もう何も聞きたくなくて再度抵抗をしながら、憤りをぶつけた。

が、それは一瞬で何倍にもなって返って来た。


「興味本位なわけあるかい!!何考えとんねん、ドアホ!!」


本気で心外そうに眉を吊り上げた平次に、呆気にとられる。


「そら、やり方間違うてたかもしらんけどなぁ!!あんなん、オマエの事好きやなかったらできへんわ!!お前探偵やろ!!そんくらい気づけや!!ボケ!!」

「………へ?」


上手く、頭が、働かない。

今、平次はとても大切なことを言ったと思ったのに。

けれど、興味本意ではないと否定してくれた事で心が浮上して…そして、先程の言葉の意味が解らなくなった。


「だって、こんなつもりなかったって…さっき…」


言ったよな?と平次を見ると、そういう事かと納得しつつ複雑そうに苦笑した。


「俺が言いたいんは、そういう事ちゃうねん。 ……あの夜、無防備に寝てるオマエ見てたら我慢できんよーになって手ェ出してしもたから……告白だけは、ちゃんとせなアカンて決心しとったのに……せやのに、先に田崎に付き合う言うてまうて…順番ちゃうやんけ…」


落ち込んだように溜め息を一つ吐くと、平次は抱き締める腕を強くした。


「スマン。 もっと早よ言わなアカンかったのに…」


真摯な謝罪が胸に届いて、けれど何も言えないまま両肩を掴まれ、平次の瞳と視線が重なって。




「…工藤…俺は工藤が好きや……ホンマに、惚れてんねん……せやから、俺と付き合うて?」




嘘だろ、とか。 冗談だろ、とか。 今更何を言っているんだ、とか。


そんな言葉が頭の中に渦巻いたけれど。



それでもやっぱり一番なのは嬉しいと言う気持ちだった。



「…うん…俺も、好き……お前が…」



ポロッと涙が零れ落ちるのと同時に、再びキツク抱きしめられた。


「おおきに。ごっつ、嬉しいわ」


俺もだよ、と返そうと思ったけれど涙声を聞かれたくなくて、平次にぎゅっとしがみ付く事で返事をした。

平次もそれに気付いたのだろう、ククッと喉の奥で笑って、耳元にキスを落としてくる。


両想いだなんて今でもまだ信じられなくて実感がないけれど、とても幸せだと、想った……。

けれど、今までの事を思い返すと文句の一つくらい言いたくなって口を開いた。


「…つか、お前の所為でこんな事になったんだから、晩メシどっか連れてけ」


もちろん奢りで、という言葉は付け足さなくても平次には解るはずだ。

これくらいなら、小さな罰だろう。自分にはこれを責める権利があるはずだ。


「メシは全然構へんし、そのつもりやったけど……俺だけの所為とちゃうやろ、あれは…」

「へっ?」


素直に罪を認めるかと思いきや呟かれた平次の言葉に、思わず顔を上げる。


「せや、大体やなぁ、あんなことしたん、半分は工藤の所為やで!?」

「は…えっ!? 何でだよ!?」


自分は何もしていないはずだ。 ……多分。

新一の所為と言われても訳が解らない。しかも半分も。


「……まぁ酒入ってたし、覚えてへんとは思うとったけど…」


理不尽な言い分に眉を顰める新一を見て、疲れた様に溜め息を吐いた平次は、ゆっくりとあの時の事を語った。










 











あの夜――。

狼集団から新一を隔離するために布団に寝かせ、皆のところへ戻ろうとして服を掴まれている事に気付いた。

その行動が可愛いくて笑みを浮かべるも、平次がここに留まってしまうと他の友人達もこちらに来るかもしれない。

名残惜しいがその手を外そうとすると、新一は目を閉じたまま眉を顰めて首を左右に振り、更に強く掴んでしまった。

仕方ないから少し新一を軽く揺すって起こす。


「工藤、戻らなアカンから離してや?」

「…ん〜…やだ…」

「工藤て」


惚れた相手だ、こんな仕草がとても愛しくて後ろ髪引かれるが、これ以上他の男に新一の寝顔を見られたくはない。

例え酒が入っていたとしても、工藤ならOKだと言った連中なんかを近づけたくはない。


苦笑しながら頭をそっと撫でた、時。



「…戻んなくて、いー…そばにいろよ…」


「っ――!?」



衝撃的な言葉が、飛んできた。


―― 大丈夫や解ってる工藤は酔ってんのや寝ぼけとんのもあるしってアカンやろこない反則技!!!////


このままでは襲ってしまう。確実に。


「だだだっ誰か呼んでくるよって…」


動揺を隠せないまま勢いに任せて離れようとするも、やはり新一の手は服を離してくれなくて。



「服部がいい…オメーじゃないとやだ…」


「〜〜〜/////……勘弁してや/////」



暗がりで、悪友達がいなくて良かった。

今、顔を見られるわけにはいかない。

と、新一がうっすらと瞳を開けて、悲しそうな目を向けてきた。


「服部、やなのか? そばにいたくねぇの?」

「そんなわけあらへんわ」


ただただ理性が持つか心配なだけだ。

本心をそのまま伝えてやると――一部を隠してはいるが――、新一は夢見るように嬉しそうに笑った。




「そっか…俺、服部が好きだから、そばにいてほしーんだ…ずっと、そばに、いてくれ…」




「!?!?」




ダメ押しだった。


惚れて惚れて惚れまくっている人間にここまで求められて、離れられる奴なんていないだろう。

そんな愛しい人からの、「好き」という言葉。

涙が出そうなほど感動しながら、新一の望む通りに、ここに。新一の隣にいようと決めて。

けれど次に新一が目を覚ましたその時は……遠慮などしない、そう強く誓った。










 











真実を語ると、新一は一気に赤くなった。


「いっ言ってねぇよ!!///」

「言うたわ、ハッキリとなぁ! あれで俺は理性を試されまくったんやで、4時間以上もや! 拷問や思うやろ!?」


田崎も直接的だったけれど、平次も相当だ。

開いた口が塞がらず、顔に熱が集まるのを止める事が出来ない新一に、平次は小さく息を整えて苦笑した。


「せやから…好きで堪らんかったから手ぇ出してしもたけど…やっぱり卑怯やったなって反省したんやで? あんなん騙し打ちみたいなもんやんか」


新一の意見も聞かず、強引に事に持って行って。


何も解らなくするために、考えられなくするために快感を与えて。


後悔なんて今でも全然していないけれど。


けれど、やはり、あれは違うのだ。


「あ…だからお前、今まで何も言ってこなかったのか?」


あんな事があったと言うのに何もなかったかのように振る舞ったのは、言葉通りとても反省した故なのだろう。

ようやく平次の行動に合点がいった。


「ああ。 せやけど、こないな事になっとるんやったらもっと早よ行動すれば良かったわ ……ちゅーか、田崎に工藤の声聞かれてたて、むっちゃ腹立つんやけど……」


悔しそうに言う平次に、新一は忘れていた事を思い出した。


「……あ/////」


いたたまれない、本当に。

恥ずかしすぎる、死ねるくらいに。


「お、オメーが、悪いんだろ…あんなとこで、いきなり…」

「俺かて余裕なかったんや、しゃーないやろ。 …アイツ殴って記憶飛ばしてやりたいわ」


呟く言葉に本気の色が窺えて、思わず苦笑した。

それには賛成したくなったけれど、その心を押さえて平次の頬を両手で捕まえて。


「…んな事より、する事があるだろ?」


手が微かに震えているのも、顔が更に赤に染まっているのも自覚していたけれど、平次の瞳を逸らすことなく見つめる。


「せやったな」


するとすぐにソレを察した平次が嬉しそうに破顔して。










両想いになってから初めての。














幸せすぎる、キスを、くれた―――。























〜 fin 〜

完結しましたvv
完結しましたよ、マジでvv
やれば出来る子でした、私vv(ただのアホです)
や、実を言いますと、2話まで書いたはいいけど、それから全然考えてなかったんですvv(衝撃のカミングアウト/笑)
だから話が終わらないと自分でも思ってまして、こりゃそろそろ小説部屋から撤去しようかな、と考えてもいましたιι
なので、メールを下さったあさこ様、本当にありがとうございましたvv
背中を押していただけたからこそ、完成させることができましたvv
感謝感謝ですvv

前回のコメントで、向日永瀬以外はその話だけのキャラと書きましたが、田崎は個人的に好きなので、また出したいなと目論んでたりしますvv
どこかのお話に出てたら、『あぁ、いたねこんな奴』くらいに広い心で受け止めてやって下さいましvv

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございましたvv

どうか ほんの少しでも 貴女様のお心に届きますように-----vv


花蘭 でした


(2011.09.29)
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