望むのは ………




たった 一人の ――





I want …

― 後編 ―





朝日が差し込む部屋に、新一は一人で座っていた。

昨日平次が新一に会いに来てくれて、甘い時間を一緒に過ごした。

それでも帰らなければならない時間になってしまって、平次は名残惜しそうにしながらまた電話すると言って大阪へ帰ってしまったのだ。

見送りすると言った新一に、帰りがたくなるからとやんわりと断られた。

新一は平次が家から出てしまうのを引き止めそうになる自分の手をぎゅっと握り締める。



耐えるしか、ないのだ。



散りばめられたキスマークをそっと指でなぞってみる。

平次の印が自分に刻まれているのが嬉しくて、思わず頬が緩む。

けれどどうしても淋しいと思う気持ちは消せないのだ。





どうしてこうも会いたいと思うのか…。





会っていられた時間は短かったけれど、昨日だって会った。





会って話をして、抱き合って…。








それでも、もう、こんなにも会いたい。








幸せな時間を過ごしたからこそ、離れてしまった淋しさが募る。





離れたくないと、切に思う。






平次の残り香のするベッドに顔を埋めると、もう少しだけと自分に言い聞かせて瞳を閉じた。










 










平次が帰ってしまってから、楽しいけれど物足りない毎日が続いている。

友人と遊ぶのは楽しい。けれどやはり平次がいなければ満たされないのだ。


大学で友人とお昼を食べているとき、いつの間にか友人の彼女の話になっており、盛り上がっている。

新一は前から自分のことを話す方ではなく聞くほうだったので、今日も変わらず友人の話を聞いていた。

その友人は彼女と付き合って長く、いつも一緒にいるほどラブラブだ。



それを聞いて少しだけ羨ましいと思ってしまったのは嘘じゃない。



と、友人達に冷やかされている男は、苦笑しながらもポツリと言った。


「でもよー、ずっと会ってたら、それはそれで面倒なことあるぜ?」

「あ、解る解る。ちょっと疲れる時あるよなー」

「倦怠っつーの?そーゆー感じだよな」


男の意見に他の友人達も同意して頷きあっている。

新一はその会話に違和感を覚えた。



面倒?


疲れる?



そして、くすっと小さく笑った。


そんなこと、自分はあるはずがない。


それは確信。


どんなにずっと一緒にいたって、面倒なんて思うはずがない。

疲れるなんて、ありえない。

そう言い切れることは、自分でもすごいことだと思う。


ずっと一緒にいたいと思うことが『好き』ということなのだ。

同じ空気を吸って、同じものを見て、自分が楽しいと思うことを相手にも楽しいと思ってもらえたなら。




それだけで、幸せなのだ。




それが毎日続くだけなのに、飽きたり疲れたりなんかはしない。

平次とそんなふうにずっと一緒にいれたら夢のように幸せなのだろう。





最後に平次と会った日からもう1ヶ月と少し経っていたが、新一の心は沈んではいなかった。

何故なら明日平次がこっちへ来てくれるからだ。

もちろん土日と泊りがけだ。


前は平次が来てくれるという嬉しいハプニングがあったものの、時間制限があった。が、今回はそんなに急いで帰るなんてことはしなくていい。

そんな些細なことで新一の心はウキウキと弾む。

早く会いたいと、平次に会う前に必ず想う事を考えながら、遠く離れた平次を想う。















しかしその夜、そんな浮かれた新一を、掛かってきた平次からの電話がどん底に突き落とした。


『すまん!工藤!!』


開口一番に謝る平次に、新一は首をかしげた。


「何、服部?どうしたんだよ?」


何かあったのかと不安になりながらも、平次に続きを言うよう促す。


『……明日、そっち行けへんようになってしもたんや…』

「っえっ!?」


その言葉に、新一は大きな衝撃を受けた。

頭をハンマーで殴られたような衝撃を感じる。


『こっちで事件が2件起きてな……それがどうも、連続殺人で指名手配されとった奴の手口に似てんねん。せやけど、証拠らしい証拠がなくてなぁ』


平次はため息を吐きながら事情を説明していく。


『ほんで、俺に協力求めてきた人がおって……』

「そ、か…なら仕方ねぇよ」


事件で逢瀬が駄目になるということはこれが初めてではないし、新一も立場上平次の気持ちも痛いほど解る。


『ほんまに、すまん!!俺かてめっちゃ工藤に会いたいねんけど…』


本当に残念そうに言う平次に、新一はくすっと笑った。


「いいって!…頑張れよ、服部」


自分も沈んでいるに関わらず、凹んでいる平次を何とか立ち直らせたいと、新一はしっかりと言う。


―― 俺、応援してっから…ずっと…


そう言うと、電話越しの平次の声が和らいだのが解った。


『工藤にそう言うてもらうんが いっちゃん元気になるわ』

「…バーロー……」


電話の向こうにいる平次の顔を思い浮かべて、新一はクスクスと笑う。


『事件解決したら……いや、絶対解決させて明日電話かけるよって!』

「あぁ、解った。じゃーな…」










プツッと通話が切れた後、しばらく新一はぼーっとしていた。



「……暇に…なっちまった、な……」



ぽつりと呟いた声は、自分でも驚くほど沈んでいて。



頑張れと言ったものの、深いため息を吐いてしまうのは咎められないことだろう。


今日を逃したら、あと1ヶ月は会えない。

平次の都合もあるし、新一だって都合があるのだ。


仕方ないと思い込もうとしても、心は落ち込む一方だった。

そんな時は寝てしまうに限ると思った新一は、すぐさまベッドに潜り込んで布団をかぶった。

しかし、だからといって眠れるはずも無く、新一は長い夜を過ごした。










 











次の日、新一は大学を終え、夜遅くなってしまったが帰路についていた。

本当なら今日は早く帰れるはずだったのだが、友人のレポートを手伝っていたらこんな時間になってしまったのだ。

今日は絶対に事件を解決して電話してくれると言った平次を心の中で呼んでみる。




―― 服部……





と、その瞬間、新一の携帯が着信を伝えた。

ビクッとしてディスプレイを見ると、それは平次からだった。


なんてタイムリーな、と思ったが、同じときに相手のことを考えているということがちょっと嬉しかった。




「もしもし、服部?」

『工藤!電話出るの遅いからちょお心配したで?』


少しだけ焦ったようにそう言う平次に、新一は苦笑する。


「あ、あぁ、悪い。ちょっとな」

『…ちょっと、何やねん?俺の電話に出るより大事な用やったんか?』


問い詰める平次の口調は拗ねているもので。思わずぷっと噴出した。


「ごめんって。そんなに拗ねるなよ?」

『……拗ねてへんわ…』


明らかに拗ねていると思われる声で言われても効果はない。


「お前のこと…考えてたんだ…」


そう正直に言ってやると、平次が息を呑んだのが解った。


『ほ…ホンマに?』

「嘘ついてどうすんだよ。…服部?」


黙ってしまった平次に、少し淋しくなって新一は平次を呼ぶ。

せっかく電話しているのだから、もっと平次の声が聞きたかった。


『あ…嫌…めっちゃ嬉しいな思うて…』

「え?」

『工藤、俺のことちゃんと想うてくれとんのやなって…感動したわ』


その言葉に何か引っかかるものを感じた新一は少しだけ眉を顰めた。


「何だソレ?いつもは俺が想ってねぇとでも思ってんのかよ?」

『それはあらへんよ。ちゃんと身体で教えてもろてるからな』

「っ!!!」


ボンッと爆発でもしたかのように新一の顔が赤くなる。

思わず絶句してしまった新一に、平次が追い討ちをかけるようにクスクスと笑う。


『いつまで経っても慣れへんな、工藤?今めっちゃ顔赤いやろ!』

「っなっ…」

『当たりやろ!工藤のことなら何でも解るっちゅーねん』


適確に指摘されてしまい、新一にはぐうの音もでなかった。

本当に図星だったのだから。



平次と抱き合っているときにもあまり好きだとか言わないけれど。




心の中で何度も何度も好きだと繰り返す。





身体全身で平次を好きだと言っていることに平次が気付いているとは思わなかった。


「…服部は恥ずかしスギなんだよ…」


火照った顔を手で仰ぎ、不意に空を見上げた。そして目を奪われる。


「う…わ……」

『ん?工藤?』


電話の向こうで平次が不思議そうに新一を呼ぶ。

新一の見ているものが平次に伝わるわけではないので、それは当たり前のことだろう。


「服部……すごい……」

『何がや?』

「……空…」

『空?』


言葉を失ってしまったかのように感嘆のため息を吐きながら、片言で平次に言う。


「すっげぇ……星がキレー…」


新一の言った通り、空には溢れんばかりの星空が広がっていた。

東京でこんな満天の星空を見れる機会はほとんどと言っていいほど無い。

実際、新一もこれまで東京で星空を見た記憶さえも数えるほどしかなかった。


『ほんまに?こっちは曇っとって星なんか見られへんなぁ』


そう言う平次の声はとても残念そうで。

平次にも見せたいと、強く思った。



それと同時に、どうして平次が隣にいないのかと、切なくなった。

本当なら平次と一緒にこの満天の星空を眺めているはずで。

平次のぬくもりを感じながら、この美しい星空を、同じ目線で見ているはずなのに。



同じモノを見て。同じように感じることができない。





そのことが二人の距離を遠く遠く感じさせる。





大阪で事件が起きたことを少しだけ悔しく思う。

だけど、事件を放り出してまで新一の元に来て欲しいという訳ではない。

そんなことは出来ない奴だと知っているし………そんな平次だからこそ、好きなのだから……。


『…今度は、一緒に見よおな』


新一の考えが解ったかのような平次の言葉に少し驚いて。

ふっと微笑むと瞳を閉じた。


「…あぁ」


例え遠く離れていても。



心はいつも 傍にいる――。










 











新一は夜中にふっと目を覚ました。

少しだけボーっとした後、長く深い溜息を吐いた。





夢を見ると…いつも…切なくなる……。





夢の中にはいつも平次がいて……。



抱きしめてくれて。



笑っていて。



当たり前のように傍にいてくれる。










実際会えないのなら、せめて夢の中だけでも会っていたいと想う。


しかし、逆に、夢の中でしか会えないという現実が…酷く辛い……。




幾度こんな凍えそうな夜を過ごしただろうか。



夜が長いとは良く言うけれど、これほど長く苦しい日々を耐え抜ける自信などない。





声を聞くだけでは、足りない。






夢で会うだけでは、全然足りない。









…傍に……いたい……。









傍に居ないと……満たされない。













何時の間に、こんなにも想うようになってしまったのか、もう思い出すことも困難だ。

平次には平次の都合が、自分には自分の都合があることも十分理解している。



けれど心は正直で。





「…逢いてぇ、な…」





ポツリと呟いた声が広い家に酷く響いて、それが否応なしに孤独を教える。


ワガママだと解っている。




けれど。




逢いたい。






逢いたくて…堪らない…。






逢って、何をするでもないけれど。


逢えるだけで、いいのだ。




服部平次という人間が隣にいる。




それだけで、幸せ。

















唯、それだけが……幸せ……。










 











平次は知らず知らずの内に隣にあるはずの温もりを求めて手を伸ばした。

その先に求めている温もりはなく、ふと夢から覚める。

まだ眠っている脳を働かせて辺りを見回してみるが当然そこには誰も居らず、小さく溜息を吐いて仰向けに寝転んだ。


「…何や…また夢かいな…」


辛そうに眉を顰めると苦しい吐息を吐き出す。




―― …工藤…。




自分がここまで執着するものができるなんて思ってもみなかった。

新一だけが自分の感情という感情全てを左右してしまう。




新一が笑うから抱きしめる。






抱きしめるとキスをしたくなる。








キスをすると、もう…止まらない。










欲しい……欲しくて堪らない……。










何度逢っても。何度抱いても。全然足りない…足りるわけがない…。













出来ることならば自分だけの檻の中に新一を閉じ込めてしまいたい。






誰にも見せず。触れさせず。







大切に…大切にしたい。








幸せに、してやりたい。















新一と出逢って知ってしまった、この想い。





新一と出逢わなければ…知ることはなかっただろう。





こんなにも深い…際限なく溢れ出して来る暖かい想いがあるなんて。





こんなにも愛おしい人間がこの世にいるなんて……知らなかった……。








出逢いは…本当に運命だったと……そう想う。








けれど、実際新一と逢えることなんて少なくて……辛い……。


朝起きると一番に新一の姿を探してしまう。


いるはずのない大学の構内でも、つい探してしまう。



ハマってしまった。





とっくの昔に、心ごと捕らわれてしまった。









欲しいものは…望むものはたった一つ。













…工藤新一…唯、一人だけ…。










 











それから長い毎日を過ごし、ようやく待ちに待った日がやってきた。

今回は新一が大阪へ行くことになっており、朝早く起きた新一はウキウキとしながら身支度を始める。

朝といっても外はまだ薄暗いまま日は見えない。少々早く起きすぎたかもしれないとも思ったが、平次に会えるこの日に眠ってなんていられなかった。

素早く身支度を済ませた新一は朝ご飯も食べることなく家を出発した。



平次との約束の時間は正午なのだが、新一は始発の新幹線にのって大阪に行く予定だ。

一刻も早く平次の傍にいきたいと思った新一が考えついたのが、始発で大阪に行くということだ。

大阪に着いたら宿泊するホテルをとって荷物を置いて、大阪の街をぶらぶらしようと思う。

ゆっくり歩きながら平次の家に向かっていれば、ちょうど約束の時間に平次の家に着くだろう。



始発の新幹線に乗ると、新一は小さな笑みをこぼした。

後2時間ちょっとすれば、平次のいる大阪に着く。

それを考えるだけで、新一の頬はいつもよりずっと緩みっぱなしになってしまう。


暇つぶしにと持ってきた推理小説を読んでは平次を想い、はっと我に返って再び小説の続きを読み始めるが、すぐまた平次を想う。

そんなことを繰り返しているうちに、大阪に到着したのだった。










新幹線を降りて改札口に向かい、切符を通す。

自分が大阪に来ていると思うだけで気持ちが高ぶってくる。

軽く深呼吸を2、3度繰り返し、荷物を持ち直してホテルに向かおうと足を進めた。

少し歩いたところで、新一の視界に入ったものに、ドキリとする。


新一のいる少し先のイスに座っている人物。後姿ではあるが…。


―― ま、まさかな…


新一はふるふると首を横に振って自分の都合のいい考えを振り払う。

平次に会いたいと思いすぎた心が、たまたまそこに居る人を平次に見せてしまうのだ。


―― 俺も、大概ヤバイよなぁ


平次のことになると周りが見えなくなる。それでもいいと思ってしまう自分にくすっと笑みをもらす。







そして再び足を進めようとしたその時。





「っく、工藤ぉ!?」


素っ頓狂な……それでいて、一番新一が聞きたい声が……聞こえた。


驚いて声のした方向、イスに座っている人物に目線を向ける。

目と目が合った瞬間、新一の瞳は驚愕で見開かれた。






「っ……服、部…?」






驚いている新一を見て更に驚いている平次は、ガタンとイスから立ち上がった。


「な、何で…約束の時間、昼やった…よなぁ…?」


恐る恐る質問を投げかけてくる平次に、新一も我に返る。


「そ、んなの、こっちのセリフだろ!?どうして服部がこんなところに居るんだよ!?」


お互い訳が分からぬまま立ち尽くす。



その時、改札から人がたくさん出てきた。電車か新幹線がホームに止まったのだろう、大阪で下車した人たちが波となって出口に向かう。

その人たちが突っ立っている新一の肩にぶつかっていくのを見て、平次は咄嗟に新一に駆け寄った。


「先にここから出るで」


平次はそう言って、重そうな新一の荷物を軽々と持ち、人ごみから守るように新一の肩を抱いてすたすたと歩き出した。


「あ、服部…俺が持つ…」

「ええよ、持ったるから」


荷物を持とうとする新一に苦笑しながらそう言うと、新一も大人しくなって平次の腕の中に収まる。



二人は人ごみをかき分けて進み、ほとんど人の居ない細い小道に入った。



そこでようやく平次は新一を解放する。





少し早歩きだったせいか、新一の息が少し上がっている。

そんな新一を目を細めて見ると、言えなかった言葉を口にした。


「…久しぶり、工藤」


顔を上げた新一と目が合う前に、ぎゅっと抱きしめる。


「……会いたかったで…」


平次の声が切なげに掠れており、新一の心もキュンと締め付けられる。


「………俺も…」


平次の背中に腕を回すと、新一は心地よい平次の体温に瞳を閉じた。





ずっとこのままでいたいけれど、そうはいかないので、二人はゆっくりと離れた。

目が合って平次に優しく微笑まれて、新一の顔はすぐに熱を持って赤くなってしまった。

それを知られたくなくて、新一は顔を反らすのだが、平次にはもうそんなことバレバレなのだろうと思う。


「は、服部は何であんなとこにいたんだよっ?」

「工藤を待ってたんやで」


当たり前のように問いに答える平次に、新一は顔を上げた。


「……は?…約束は昼だろ?」


新一は自分の記憶に誤りがあったのかと首をかしげるが、昨日も電話でお昼に待ち合わせすることを確認したはずだ。

不思議そうに平次を見ていると、平次はバツが悪そうに苦笑しながら頬をかいた。


「……ん〜…そうなんやけど、工藤と会える思うたら朝早よ目ぇ覚めてしもて。それに、昼まで待ってられへんかったからなぁ……駅で待ってた方が早よ会えると思うたし」


平次の言葉に、新一は驚いたような呆れたような声を出した。


「…ば、馬鹿じゃねぇの!?俺が約束の時間通り昼に着く新幹線で着たらどうするつもりだったんだよ!?」

「別にどうもせぇへんで?それやったら、あのままずっと待っとくつもりやったし」


ケロッとした表情で何でもないことのように言う平次に、新一は更に驚いた。

そして、新一と会うためだけに待っていてくれた事実が、新一を嬉しくさせる。

それが顔に出ていたのだろう、平次は新一の顔を見ると目を細めて微笑んだ。


「せやかて、工藤も人のこと言えへんのとちゃうんか?なして始発で来たん?」


質問を返されると思っていなかった新一は思わず後ずさってしまう。


「っ……俺はっ…俺も朝早く目覚めて…することもねーし…」



本当は会いたくて堪らなかったから早起きをして始発で大阪まで来た、なんて言えはしない。



しかし、平次には理由が解ったのだろう、くすくすと嬉しそうに笑っている。


「そーかそーか。そないに俺に会いたかったんかーvv」

「っこ、このっ//」

「照れとる工藤も可愛え〜vv」


これ以上調子に乗せてたまるかと抗議しようと口を開きかけるが、ぎゅうっと抱きしめられることによってそれさえも適わなくなってしまった。


「会いたい思うてくれて、ほんまに嬉しいで。俺ら、同じこと考えたんやな」


そう言われると、新一の心も嬉しくなってしまう。

離れた場所に居ても。同じことを思う。

まるで平次と繋がっているかのように思えて、素直に嬉しいと思える。






が、何だか平次に手の内を全て読まれているようで少し悔しい気がするのも本当で。


「俺はいいんだよっ//!」

「ん?なして?」

「っ…お、俺は早く着ても、ホテルとって…ぶらぶら歩きながら服部のところに行こうと思ってたから…時間持て余すこともねーし……」


最初は威勢の良かった新一の声も、最後の方になると聞き取るのが難しいほど小声になっていく。

真相を知られたのがすごく恥ずかしかったのだろう。


―― 工藤は照れややからな〜vv


しかし、弁解しているはずの言葉も、平次にとってみれば可愛い恋人からの愛の告白にしか聞こえない。

要するに、会いたくてたまらなかったことを知られた恥ずかしさと、思ったより早く会えて嬉しいのがごっちゃになっているのだろう。



「聞いてんのかよ!?」

「ん?あぁ、聞いとるで」


ニコッと新一に笑いかけると、チュッとキスを落として耳元に囁いた。


「な、早よ二人になれるトコ、行こおや?俺、我慢出来へんのやけど…?」

「っなっ//!!」


平次は一瞬にして耳まで赤くなってしまった新一をぎゅっと抱きしめると、首筋にキスを落とす。


「おっ、お前っ!今日は買い物行くって…」


新一は慌てて平次を引き剥がそうとするが、平次は知らん顔でキスを続けている。


「すまんけど、キャンセルや!買いモンなら後で連れてったるし」


苦笑しながら謝るが、平次のキスは止まることなく続けられている。

首筋にキスマークをつけると、そのまま鎖骨にキスを落として舐め上げ、頬にキスをした後新一の弱点の耳を甘噛みする。

それだけで新一は平次の腕の中で抵抗も忘れて息を上げている。


「そない可愛え工藤を目の当たりにして我慢なんかできるかい」


胸を張ってそう言うと、新一は「バーロー」とポツリと言って平次の首に腕を絡めた。

その了承の合図をもらったことに、平次はふっと笑ってもう一度新一をぎゅうっと抱きしめた。

そして新一と一緒に、新一が泊まるホテルに向かったのだった。










 











楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、もう新一が帰る日になってしまった。

あと2時間したら新一は新幹線に乗って東京へ戻らなければならない。

平次といると2時間なんてあっという間に過ぎてしまうから。



正直、2時間は短い。



だけど平次と一緒にいるのだから落ち込んだ顔は見せられないと新一は考えるのをやめようと笑って見せる。


「な、服部!この小説読んだか!?」


推理小説コーナーで 新一が新刊として並んである小説を一冊手に取って平次に見せる。


「ん?いや、まだや。新刊なんか?」

「一週間前に発売されたんだぜ?」

「おもろい?」

「ああ!すっげえお勧め!」

「ふ〜ん。俺も買おかな」

「んなことしなくても、貸してやるよ!次に会うときに持って…」



次に会うとき。



それはいつになるのだろうか。





自分で口にした言葉に胸がちくりと痛み、思わず口が止まってしまう。


「工藤?」

「あ、いや、何でもねえ……あ、じゃあこれは?」


新一は他の小説を手に取り、あからさまに話をそらせた。

人一倍鋭い平次が気付かないはずがないが、平次は新一が反らせた話に答えてくれたことにホッと胸を撫で下ろした。

そして次の本に手を伸ばしかけたその時、がしっと新一の手首を平次が掴んだ。


「はっと…」


名前を呼ぶ前に、ぐいっと力強く手を引かれて歩き出し、そのまま本屋から出てしまった。

訳が解らないまましばらく早足で歩く平次に引っ張られるように付いて行っていた新一だが、どんどん人気のないところに行く平次に声を上げた。


「は、服部!?何、どこ行くんだよ?」


新一の声にようやく平次はピタッと足を止めた。

後ろからだと平次の表情が良く見えなくて、回り込もうと思った時、平次がようやく言葉を発した。



「やっぱりアカンわ…」



あーあ、と溜息を吐く平次の後姿を新一は不思議そうに見た。




「服部?何言っ…」




覗き込んだ瞬間、力強い平次の腕に抱きしめられた。


「っ!!?」


驚いて目を見開くが、苦しいほどの平次の腕の力は弱まることはなかった。

けれど平次の腕の中にいるという事実が、平次の少し早い鼓動が、心地よい。

何も言わずそっと平次の背中に腕を回して少し力を込めると、平次は呟くように新一の耳元へ口を寄せた。



「…今からちょお、ワガママ言うからな…」


「え?」



未だワケが解らないままの新一が何か言うより前に、平次は耐え切れないとばかりに口を開いた。







「帰んなや……俺の傍から離れんなや!!」








「は…」







平次の言葉に新一は目を見開く。









「…帰したくないんや……帰さへん!!」








強く。それでいて何て甘く、新一を抱きしめるのだろうか。


狂おしいほどの平次の本音に、新一の胸はきゅんと痛いほど締め付けられる。







帰りたく、ない。








ずっと傍に、いたい。








抱きしめてくる平次の腕が微かに震えていることに気付いた新一は切なそうに瞳を閉じて平次を抱きしめる。




自分も同じ気持ちだということを伝えたいのに、言葉にならない。






「工藤は俺の傍に居らなアカン!」





いっそう強く新一を掻き抱きながら駄々っ子のような平次の言葉に、新一は思わずぷっと噴出した。


「何だそれ。ワケ解んね」


くすくすと可笑しそうに笑う新一につられるように平次もふっと笑顔になる。

愛しそうに新一の頬を手の甲で撫ぜると髪にチュッと音を立ててキスを落とし、ぎゅうっと抱きしめ直した。


「……金貯めなあかんなぁ…」


ポツリと零れた言葉に新一は顔を上げて平次を見やる。


「?何で?欲しいモンでもあんのか?」


不思議そうに見上げてくる新一を可愛くて堪らないというような瞳で見やると、優しく微笑んだ。


「二人で暮らすために決まっとるやん!」

「っ////」

「俺、毎日工藤と一緒におりたいねん。ずっと…」


新一は一気に顔を真っ赤にさせながら驚いて。

そしてすぐに本当に嬉しそうな綺麗な顔で、笑った ――。








それはきっと…。







そう、遠くないうちに-―――。















〜 fin 〜
えっと、一応、終わりですvv
何だ、この終わり方、と思っても口にしないでくださいませねvv(笑)
前編と同様、あまり切なくならなかったですが……文才ないので…勘弁してくださいませ……ええ、本当に……ιι
や〜、遠距離の話を書くのは難しいですねぇιι
もう少し長くしようと思ったのですが、そうすると今度は限りなく長編になりそうな予感がしたので止めました(限りなく長編→8話以上/笑)
でも、かなり楽しく書かせて頂きましたよvv
リクエストをくださったKiMさん、本当にありがとうございました〜vv
このお話を読んで一瞬でも切なくなったり嬉しくなったりして頂けたら、本当に嬉しいですvv
素晴らしく無いに等しい文才ですが、これからも沢山書いて精進していきますvv
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございましたっvv
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