とめどなく


溢れ出す キモチ ――




Deep Love

番外編1




―― …ヤバイ……///


ドキドキドキドキと、心臓が早鐘を打っている。

手の中にある推理小説は、とっくの昔に手に持っているだけの代物となり果てていた。


いつもの自分なら考えられない事だけれど、楽しみにしていた推理小説よりももっと心を占めるものがある。

新一の左隣に座っている、服部平次の存在だ。



ずっと片想いだと思っていたのに。

自分の想いが届く事はないと諦めていたのに。

平次も新一を好きだと言ってくれて、恋人になって。

初めての週末を迎えていた。



実は、未だに平次の恋人になれたという実感がない。

もちろん、好かれていないという意味ではなく、夢の夢のそのまた夢の話だと思っていた事が現実になって、混乱しているだけだ。

両想いとなってから、うぬぼれなどではなく、平次の態度も甘い恋人のそれに変化しているし、自分で言うのも何だが、平次からすごく愛を感じている。



けれど、それはそれ、である。



ずっとずっとずっと夢に見ていて、想い焦がれていた人と両想いになれたなんて、幸せで幸せで、夢の中にいるように思えてくるのだ。



―― ゆっ…夢じゃねーよな!?



心の中で何度もココが現実の世界であると自分に問い正す事を、先程から馬鹿みたいに繰り返している。

だから小説にも集中できず、チラチラと平次がいる事を横目で見ながら確かめているのだ。



平次に気付かれないようにチラッと盗み見る。

そこにいる事を確認できると、心の奥深くから幸せな気持ちが溢れだしてきて。

そして、本当にこんな幸せが夢ではないのか考える。

そんな事を飽きることなく繰り返しているのだ。


隣に平次がいる事が幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ。






と、その時。

耐えきれないとでも言うように、突然平次がクスクスと笑いだした。


「え!? 服部!? 何!? どうした!?」


驚いて平次を見ると、照れたように、それでいて愛しそうに笑っている平次と目が合う。


「いや、ホーンマ、めっちゃ可愛ぇ、工藤vv」

「……へ?」

「そないチラチラ見んでも、堂々とこっち見たってや♪ 俺も工藤の顔見れた方が嬉しいし、な?」


言われた言葉の意味に、沸騰したように一気に顔が赤くなった。


「っっなっ/////!!??」


バレていたのだ、平次には。

バレないように注意して、盗み見ていたのに。


「っだよ!/// 気付いてんなら最初から言えよな!!////」


自分の行動が恥ずかしくて、誤魔化すように、横にあったクッションを平次に投げつける。

しかしそれが平次に直撃することなく、難なく受け止められた。


「せやかて、工藤、可愛ぇんやもんvv ちゅーか、バレてない思てんのが、ごっつ可愛ぇvv」

「う、うっせーバーロー!!///」


恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分だ。

プイッとそっぽを向いた新一を余所に、平次はクスクスと笑いを絶やさず、近くに寄ってきた。

その近い距離に、新一の心臓が更に早鐘を打つ。

何だか自分だけがこんなに焦っているのが悔しくて、ジロリと平次を睨みつけた。


「…余裕そうにしてんじゃねーよ…///」

「アホやな、そんなんあるわけないやろ?」

「―― え…?」


声と同時に、ギュウッと力強く抱きしめられた。

一瞬緊張で、身体が強張ってしまう。


が、自分と同じくらい、否、自分より速い鼓動が聞こえてきた事に、驚いて顔を上げた。


「な? ぜーんぜん、余裕なんてあらへんのやで? 心臓、壊れそうや…」


苦笑する平次に、新一は呆気にとられる。


けれど、ドクドクという速い心臓の音が、平次も新一と同じ気持ちでいる事を伝えて来るから。


フワ、と、思わず笑顔が零れた。


「お前、すげードキドキいってるな…」

「工藤も、やろ?」

「……うん…」


平次も同じだと解った途端、強張っていた身体の力が呆気ない程簡単に抜けてしまった。


抱きしめてくれる腕と体温が嬉しくて、ギュッと平次に抱きつく。


「もー、ほんまアカンて…」

「え? 何が?」

「工藤、可愛すぎんのも程々にせぇや? 心臓持たんっちゅーねん」


ギューッと更にキツク抱きしめられ、耳元で囁かれる。


「ババッバーロー!!///」


―― 俺の方が心臓持たねーっての!!///


心の中で悪態を吐くが、それを言葉に出来る程冷静ではなくて。


「照れとるところも、可愛ぇvv」


新一の照れている顔を見ようとしているのだろう、平次が腕の力を抜き、距離を取ろうとした。


「うっせ…わっ、見んなよっ!!///」


多分きっと。ゆでたこの様に真っ赤であろうこの顔を見られたくなくて、平次の肩に顔を埋めるようにギュッと抱きつく。



すると平次が少し沈黙した後。



深い溜め息を吐いた。



「……な〜、工藤… そーゆーの、めっちゃ卑怯なんやで? 知っとるか?」



俺が振り解かれへんて分かっててやってんのやろ、という呟きとともに、再び平次の腕が新一を包んだ。


それが、嬉しくて。




嬉しくて――。




「…もう ちょっと…このままでいろよ…」



ドクドクと心地よく響く、平次の速い心音が。


『好きだ』と言ってくれているようだから。


もっともっと、聞いていたい。



ささやかな我儘ともに、伝える。




「……ったく、しゃーないなぁ…」


その言葉にのせた新一なりの甘えを解っているのだろう、優しい声でクスクスと笑いながら抱きしめてくれる平次をとても好きだと感じる。


そんな自分の想いが、少しでも平次に伝わってくれるといい。


それで平次が少しでも幸せな気持ちになってくれたら、自分はとてもとても幸せで。


二人で幸せになれるこの時が、何よりも、幸せで。


視界を揺らしている涙を、新一は瞳を閉じてそっと落とした。






幸せな気持ちを 噛みしめながら――。















〜fin〜

突発的に幸せな甘々が書きたくなって、完成したのがコレですvv
所要時間2時間ですvv

今、切ない系を沢山書いてるので、急に甘いものが書きたくなるんですよね、たまにvv
とゆ事で、衝動的に書きあげたコレを、工藤の日(9月10日)の小説と言い張りますvv
ええ、誰にも止められませんvv
5日遅れましたが、工藤の日、おめっとーございまーすvv


(2009.09.15)
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