溢れんばかりの この想いを



あなたへ ――




Deep Love

act 21 -final-





『…お前や…工藤…』



平次の声が、頭の中に響いている。


平次は今、何を、言った?


好きな奴がいると…。


一生を懸けれるほどの、想いがあると…聞かされて…。


逃げ去りたくなる自分を抑えて、震える声で、誰かと聞いた。


その質問に返ってきた答えは…。


『…お前や…工藤…』


聞き間違いかと思って。ともすれば、先ほどの会話自体夢だったのだろうかとも、思った。


「…は…?」


新一にとっては予想もしていない言葉だったのだろう、どこかマヌケな声を上げて平次を見た。

瞬きをすることも忘れて平次を見つめている新一に、思わず平次の口元は緩んでくる。

そんな顔でさえも、可愛いと想ってしまう自分はもう末期なのだろう。



が、新一は平次が微笑むのを見ると、すぐに眉間に皺を寄せてキッと平次を睨みつけてきた。


「ムカつくっ!!」


今度は平次が驚く番だった。


「何がや?」


意表をつく新一の言葉に首をかしげる。

新一は怒りを露にしながら声を上げた。


「お前、言っていい嘘と悪ぃ嘘があんだろ!!冗談も大概にしやがれっ!!」


どうやら新一は平次の告白を冗談だと推理したらしい。


―― ……………ま、当たり前やんな…


信じてもらえないだろうということは予想の範ちゅう。

だから信じてもらえるように説得をしようとも決めていた。もちろん、時間がかかるのも想定内。


「誰も冗談なんて言うてへんやろ。こないなコトで冗談なんか言うかい」


予想内だったけれど、いざ本当に信じてもらえないとなるとやはりショックである。

ちょっとムスッとした表情を隠しきれずに眉を顰めながら言うと、新一は再び目を見開いた。

どうやら口で言うよりも顔に表した方が説得力があったらしい。


「…お、俺…男だぜ…!?お前も男だしっ…信じられるわけねぇだろ!!」


吐き捨てるようにそう言うと新一は平次から視線を反らせた。


―― そらそうや。オトコがオトコに告白なんて普通はせぇへんわな。


平次は逆に新一の言葉に納得しながらも、どうやって信じてもらおうかと頭を回転させる。


「そんなん、俺がいっちゃん知っとるよ。せやけど…」


ふと言葉を止めた平次は新一に視線を移すとその顔をじぃっと凝視した。

何なのかと新一が眉を顰めて反らせていた視線を平次に戻した時、平次はとんでもない言葉を口にした。







「俺、工藤に欲情すんねん…」







その言葉が新一の脳に到達するまで15秒はかかっただろうか。



「っ!!??」



驚きすぎて声も出ない新一に平次は更に言葉を続けた。



「工藤のこと触りたいて、抱きたいて想う。…気持ちよぉしたって、いっぱい鳴かせたいし…挿れたいとも思…」


「もももっ、もういいっ!!だ、黙れよっ!!」



平次のあまりに直接的な物言いに、新一は耳まで真っ赤にしながら平次の口を両手で塞ぐ。

それ以上何か言われてしまったら、新一の方がもたない。

平次はそんな新一を見てくすっと笑うと、自分の口を塞いでいる新一の両手をとり、左の手の甲にうやうやしくキスを落とした。

その行動にビクッと反応して後ずさりしようとした新一の腰を引き寄せると、まだ赤く染まったままの頬を見てふと笑みを浮かべる。


「さっき言うたのもホンマやけどな…それ以上に工藤のこと、護りたいて思うんや…」


その優しすぎる笑顔に新一は一瞬呼吸を忘れてしまう。


―― な、んて顔すんだよっ//!!


自分の頬がこれ以上ないというほど赤くなっているのが解る。

見られないようにと顔を背けようとした新一よりも先に、すっと平次の指が新一の顎に掛かって上を向かされてしまう。


「誰よりも工藤の傍におって…工藤だけを護りたい…」


そう囁くように言うと、平次はゆっくりと顔を傾けて新一の唇を奪った。

悲しいときには傍に居て……。

淋しいときには抱きしめて……。

新一を襲うありとあらゆるモノから護ってやりたいと、願う。


驚いているのだろう、平次のキスを抵抗もせずに受け止める新一に平次はクスッと笑った。


「もちろん、工藤に好きな奴がおるっちゅーこと、忘れたわけとちゃうで?」


本当は、諦めなければいけないのだろうと考えはした。

新一の幸せは、悔しいけれどソイツと一緒にいられることで生まれるのだろうから。

新一が幸せになる邪魔だけはしたくなかった。


けれど。



それでも。



「せやけど、俺はワガママやから、そいつに工藤を渡すなんてことできん!俺が工藤の一番になりたいんや!!」



自分を選んでくれれば、ソイツより、もっともっと幸せにしてやるのに。




毎日笑わせて、毎日幸せを…あげるのに…。




だから…。









「…工藤……俺を選んでや…」










懇願するような、声。

ぐっと抱きしめられたその腕が絶対に離したくないと物語っていた。

思わず平次の背中に手を回そうと、思った。


真っ直ぐに。平次だけを求めて。


抱きつきいてしまいたかった。


自分が好きなのは……。


「愛」を教えてくれた たった一人の人間は……。





お前、なのだと――。





けれど新一の腕が平次に回されることは無かった。


新一は辛そうに瞳を閉じるとぐっと耐えるように掌を握り締める。




素直になれない、一番の理由は…。




「もしかして、工藤の発作のこと、気にしとんのか?」


自分の考えを読んだような平次の言葉に、びくっと体が揺れた。

こんなに愛しい人からの愛の告白に答えられない理由など、一つしかない。


……「発作」……。


これから付き合っても、程なくして新一の命に終わりがくるだろう。

平次は優しいやつだから、死んでしまった新一のことをずっと忘れないでいてくれるだろう。

けれど、その柵(しがらみ)にいつまでも捕らわれたまま、次の新しい出会いを否定しかねないのだ。

恋をしてしまえば、新一を裏切ってしまったと思うかもしれない。

そうして一生一人で生きていくかもしれない。


そんなの、嬉しいわけが、ない。

平次が幸せだと思えて初めて新一も幸せだと思えるのに。


今切っておけば、自分のことなど諦めて次の恋に向かうだろう。

そして、一生、好きな人と幸せに暮らしてくれればいい。

幸せな一生だったと、死ぬときに言えるような人生になればいい。

そしてその時には…自分が、迎えに行けたら……。


ちらりと平次を見ると、驚いたことに平次は優しい顔でクスクスと笑っていた。


「な、工藤?最近発作、でたか?」

「は?何で、んなこと…」


そう言えば、最近発作が全然起こっていないことに気付く。

そして、発作がでなくなったのは何時からだろうと頭を回転させる。



発作が最後に出たのは…平次にキスされた、あの日……。



「出てへんやろ、発作?」

「何でそれ……―――っ!?…ま、さか…」


あの時口移しで飲まされた熱冷ましの薬を思い出した。

あの時は口付けに驚きすぎていたから、飲み込まされたものが熱冷ましであるということを疑いもしなかったが…あれは…。


「そのまさか、や!」


顔を上げると満面の笑みを湛えた平次の瞳と視線が絡み合う。


「工藤が苦しんどるっちゅーのに何もせんでおられんでなぁ。宮野ちゃんに頼んだんや。発作を直すクスリを作ってくれってな」


新一から傍にいるなと言われて沈みまくって。

それでも傍に居たいと…逃がさないと決意を固くして向かった先は、宮野志保のところだった。

何より先に、新一の「死」という恐怖を消さなければならないと思ったのだ。

「ちゅーか、宮野ちゃんは工藤に発作が起こること予期しとったみたいで、結構前から発作のクスリの研究しとったみたいやで?」









平次が志保のところに押しかけても、志保は驚いた様子もせず家に上げた。

そして平次が何か言う前に、新一の発作のことを言い当てたのだ。


『やっぱり…貴方がここへ来るって事は工藤くんに何かあったってことだものね…』


ポツリとそう言うと、おもむろに部屋の奥へと入っていき、すぐに何かを持って出てきた。

志保の手にある小さな箱に入っている白い錠剤が、研究に研究を重ねて作り出した新一の発作の為の薬だと言った。


『もちろん、これはまだ人に与えていいという段階ではないわ』

『わーっとる。せやから、それを完成させて欲しいんや!!出来ることやったら、俺、何でもやるで!!』


身を乗り出して熱弁する平次に初めて志保はクスッと小さな笑みを見せた。


『…ええ。あんな毒薬なんかに工藤くんの命はあげられないもの』

『当たり前や!!』


そうして完成したら連絡するという約束で志保と別れたのだった。









「俺が頼んでから少し経ってサンプルが出来たっちゅーから、もらいに行って、工藤に飲ませたわけや」


もちろん、サンプルはあくまで試作品であって、完全に発作を治せるかどうか解ったものではなく、志保は薬をすぐに飲ませようとす
る平次に危険かもしれないと何度も何度も、しつこいほど説教をしてくれた。


『いい!?工藤くんを心配する貴方の気持ちは分かるわ。けど、その薬の所為で症状が悪化する可能性がないわけではないのよ!?』


だからと言って、そこに新一の発作が治るかもしれない薬があるというのに、それを使わないということは平次にはできなかったのだ。


『せやけど、俺を呼んだっちゅーことは、治る可能性の方が高い薬が出来たから、やろ!これ以上工藤を苦しませてたまるかい!』


しつこいほど同じことを繰り返し唱える志保に、平次も負けじと喰らいついて、根勝ちしたのである。



平次が危険性を考えなかったわけではない。

どころか、膨大な時間を費やして志保から奪ったこのクスリを新一に飲ませてもいいものかと悩んだ。


飲ませることによって寿命が更に縮まってしまうかもしれない。


今よりもっと酷い苦しみに襲われるかもしれない。


新一を治すための薬が、新一の命を奪ってしまうかも、しれない。





だけど…。





「死なない」と言ってくれた新一を……信じた――。










「2週間、何も変化なくて発作も起こらんかったら、心配いらへんて言うてたで」


今日はあのクスリを飲まされてから、もう1ヶ月になる。


ということは…。


「…な、おった…のか…?…俺…」


まさか、と思う。


けれど、最近身体が軽いと思ったことは事実で。


自分の感覚がおかしいのだと思っていたけれど…。




「な、発作の心配もないなったし、俺のことちゃんと考えてくれへん?俺、工藤のことが好きなんや」


今自分がいるところが現実ではないように感じる。

抱きしめてくれる平次をぼんやりと眺めながら、やっぱり好きだと、想った。


平次は全て自分に与えてくれる。


言葉。笑顔。居場所。


健康な身体。




……服部 平次……



欲しかった、モノを…全て…。



「っ…俺ッ…」



愛おしすぎて、声が出ない。


この想いを平次に伝えたいのに、言葉が出てこない。



それをどう受け取ったのか、平次は少しだけ真剣な表情で新一を見つめてきた。


「悪いんやけど、俺は諦めへんからな。工藤が俺のこと嫌や思うても気持ち悪い思うても、や!」


その言葉に新一の目が見開かれる。


嫌……?


気持ち悪い……?


―― んなこと、これっぽっちも思うわけねぇだろっ!!


急に憤りを感じた新一はキッと平次を睨むと、ぐいっと胸倉を掴んで叫んだ。




「俺だってお前のこと好きだよっ!!」




叫んだ言葉にハッとして平次を見ると、平次は当然のことながら目をぱちくりさせている。

相手に胸倉を掴まれながら怒りをぶつけるように好きだと言われたのは平次としても人生初だろう。

これが好きな人に愛の告白をする態度なのだろうかと自分でも思う。

けれど今更引けなくて。

新一はこの勢いにのって告白してしまおうと決めた。


「き、聞こえたのかよっ!!俺はお前が好きだって言ってんだ!!」


そう新一は再度告白をするのだが、平次は眉間に皺を寄せながら複雑そうな顔をして小さくため息をついた。


「俺が言うてんのは、恋愛感情の好きっちゅーとるやろが。言うたやろ、お前を抱きたいんやて。……工藤に好きな奴おるて知っとるし…友達としての好きをもろても嬉しないわ」


そこで新一はハッと気付いた。

そう、平次にとても好きな人がいると言ってしまっていたこと。

一生想い続けているだけで、幸せなのだと。

誰にも言うつもりもなく、ただただ死ぬ瞬間まで、その人のことを想っている、と。


それくらい、新一の心の一番深くに居続ける人間がいることを、平次は知っている。

当然の事ながら、平次はその相手が自分だということは微塵も考えたことなどないのだろう。

先ほど平次から好きだと伝えられたときも、新一は微塵も信じることが出来なかった。

それが当たり前だと思う。

それと同様に、新一がいくら好きだと言っても、この想いを平次に信じてもらえないかもしれない。

むしろ、新一が平次の言葉を信じるよりも難しいと思う。

好きだと言われたから。大切な親友だから。だから、断れずにいるのだろうと平次は考えてしまうだろう。


焦る。


そんなことは全然なくて。本当は自分の方が平次のことをずっとずっとずっと想ってきたのだと、伝えなければ。

でも、どう言えば伝わるのか全然分らない。


人を好きになったのは平次が初めてで。


告白も、もちろん初めてだから。


自分の気持ちの全てを伝えようと思っても、伝える術を知らない。


唯一心に有り続ける人が『服部平次』なのだと、どうか解って欲しい。



この、想いは…。



この想いだけは…真実なのだから……。




新一は覚悟を決めたようにきゅっと唇をかみ締めて平次に視線を戻した。


「好きだっ!」


再び同じ言葉を言う新一に、平次は眉間の皺を深くすると熱くなっている新一を宥めようと肩に手を掛けて自分から少し距離を取る。


「せやから…」


しかし、新一も負けじと、距離を取ろうとする平次の手を跳ね除けると胸倉を掴んでいる手に力を込めた。


「俺はっ!!お前が好きなんだよっ!!」


勢いに任せたまま、三回目になる告白をした。

平次はワケが分からないと言うように困惑気味に新一を見ている。

新一は更に言葉を紡ぐ。


「お前が、好きだっ!!」


拙い言葉だとしても。


解りにく過ぎる告白だとしても。


何度も……何度だって言おうと思った。


理解してくれるまで。


平次の心に響くまで。





自分の不器用さに、もどかしくてじわりと涙が浮かんだが、告白をやめる気にはならなかった。


例えこの声が枯れ果てたとしても…伝え続けようと想った…。



平次なら…コナンの正体を見抜いてくれた平次なら……自分の中の真実-想い-もきっと、解ってくれると、思う。



だから…。




だから……どうか…。






「くど…」


困惑気味の平次の首に腕を回すと、ありったけの勇気を出してその唇にそっと唇を重ねた。

触れるか触れないかの……キスとは呼べないかもしれないそれが、今の新一の精一杯だった。


「…っ―――!!??」


すぐに唇を離すと、平次の体が強張ったように固まっているのが解った。

新一は再び平次の胸倉に手をかけると、祈るように叫んだ。


「好き、だっ!俺はっ…お前がっ…!!」


どうか……。


この想いが平次の胸に届きますように。



この想いが……。




平次の心に響きますように。





この想いに嘘偽りなどないことを……解って欲しい……。






この果てない想いが服部平次ただ一人の為だけにあることを……。







……どうか……解って………。










「俺が好きな奴はっ…」


幾度目かになる告白をしようとお腹に力を込めた瞬間、平次の手が平次の胸倉を掴んでいる新一の手を包み込んだ。



「…俺…なんか…?」



信じられないものを見るように何とかゆっくりと言葉を紡ぐ平次に、新一は零れそうになる涙を堪えて大きく頷いた。


「俺は…服部平次が…好きだっ!!」


聞こえただろうか?

この想いは届いたのだろうか?


しっかりと相手から視線を反らすことなく平次を見ると、平次はどこか夢でも見ているようなそんな表情をしたまま、新一の頬にそっと手を触れた。

ドキドキしっぱなしの心臓に今すぐここから逃げ出したくなる気持ちがないわけではない。

けれど、それ以上に…平次に信じて欲しかった。


ちゃんと…伝わって欲しかった…。


平次の行動に逃げることなくされるがままになっている新一に、平次はじわじわと襲ってくる現実感に体が震えた。


「…抱きしめて…ええ…?」


まだ信じられないというように恐る恐る覗う平次に、新一は自分からぎゅっと抱きついた。

するとすぐに息も吐かせぬようなキツイ抱擁が新一に与えられる。


「ホンマに…ホンマに俺のこと好きなんやな…!?」

「そうだよっ!!」


新一が即答すると、平次の体が小さく震えたのが解った。


「…前、工藤が言うてた好きな奴て…」


「お前のことだよ!!」


「せやから…誰にも言えへんて……言うたんか…?」


「っ…そう、だよ……お前が、好きだなんて、言えねぇだろ…」


この気持ちは平次にとって重荷以外の何物でもないと思っていたから。

『墓場まで持っていく』という言葉が相応しすぎるほど、一生思い続けて……一生、秘密にするつもりだった。


「ずっと…俺のことを好きでおってくれたんか…?」


「そうだって言ってんだろっ!気付くのが遅ぇんだよ、お前はっ!」


叫ぶように伝えると、平次は感極まったように息を詰めて、痛いくらい抱きしめてきた。


「…好きや、工藤!!……めっちゃ、好きや…!!」


新一の想いが解ったのか平次は優しい瞳で新一を見つめると、そのまま首を傾けて新一の唇へとキスを落とした。

瞳を閉じた瞬間に涙が零れ落ちたのを悟られないように、新一は平次の首に絡めた腕に力を込める。



長く…永かったけれど…。



ようやく、届いた。



言葉にできないほどの想いが…ようやく、伝わった…。



それも一方通行ではないことが、とても嬉しくて…幸せで……。




すぐにキスは深くなり、新一の舌を舐め上げたり歯列をなぞったり遊ぶように動いたかと思えば、絡め取るなんて生易しい言葉では足りないほど口内を蹂躙する。


「んっ…んんっ…!!」


少し息が苦しくなって逃げようとすると平次は新一をソファに押し付け、息継ぎさえも許さないとばかりに更に深い口付けを与えてきた。

脳天まで痺れるような快感に新一の身体からはどんどん力が抜けていく。

身体が崩れ落ちる瞬間にようやく唇が離されて呼吸を許され、新一は肩で息をする。

平次は荒い呼吸をしながらもトロンとした新一の瞳を捕らえ、真剣な口調で言った。


「言うとくけど、俺は一生工藤を手放すつもりあらへんからな。覚悟せぇや!?」


その言葉がどんなに嬉しいか、平次は知らないのだろう。

覚悟なんて。とっくに決まってる。


「っ当たり前だろっ!!服部こそ、後で後悔すんなよなっ!!」

「するわけないやん!こぉしとるだけで…めっちゃ幸せやのに…」


再び甘く掻き抱かれ、熱いキスが下りてきた。

ついばむ様に唇を吸われ、かと思うと舌を絡められ、痺れるような快感を与えてくる。

まるで、ずっと離れていた恋人がやっと出会えたかのような…貪欲に求めるような、キスだった。






平次はふと思いついたように唇を離すと、柔らかく笑って新一に囁いた。


「工藤、前に、運命があるて教えてくれたやんか?」

「…え?あ、あぁ」


そういえば平次が彼女と続かないことを密かに落ち込んでいたということを知ったとき、励まそうと思って言ったことを思い出した。


「俺な、ホンマに運命はあるて実感したで」


本当は、彼女が出来て付き合えば付き合うほど冷めていく自分の心を、死ぬほど嫌悪していた。

大切にしたいと思う心が無いわけではないのに、どうして自分の心はこんなにも人を好きになることができないのだろうか。

こんな自分が愛を知ることができるのかと…諦めかけた心も確かにあった。



けれど。



理由が、今ハッキリと解った。








「俺の運命は……お前や……」








この心は、工藤新一だけのもの。






自分が生まれてきたのは、工藤新一を愛すため。






工藤新一、ただ一人だけを愛するため……。






「っ――」


不覚にも。その言葉一つで胸がつまって。新一は泣きそうになった。


「…バーロ…」




運命とは。




出逢うべくして、出逢うこと。




結ばれる為に、巡り逢うこと。





それが、新一であると……平次はそう言ってくれているのだ。





新一は言葉にならなくて、ただがむしゃらに平次に抱きついた。

平次はそんな新一を大切に、力強く抱きしめる。

こんなに腕の中の人が愛しいなんて。

そんな愛しい人がこの腕の中にいるなんて、幸せで堪らない。

今初めて、幸せの意味を知った…そんな風に、想う。

そしてふと、以前の自分を思い出し、平次は眉をひそめ、新一に向きなおった。


「な、俺、工藤にめっちゃ辛い想いさせてたやんか?」


平次を想ってくれていた新一の前で彼女を作っては別れ、別れては作っていた自分。


「っんな事!」


弾けるように否定する新一の唇を短いキスで塞ぐと、平次は新一を見つめた。


「ええねん、ホンマのことや。…せやから、これからは工藤の言うこと…我儘でも何でも全部聞いてやりたいねん。何でも言うてや?」

「服部…」


そんなこと、全然いいのに。

想いが通じ合ったこの瞬間に、辛かった時間全てが幸せに変わってしまったのだ。

それでもそう言ってしまうと逆に気に病みそうなので、返事を待っている平次に微笑んで小さく頷いた。


「おおきに♪せや、今は何かないんか?」


新一が頷いたのを見ると、平次は本当に嬉しそうに笑い、質問しながら新一の顔を覗き込んでくる。

特にないと言おうと思った新一の脳裏に、ずっと平次に対して言いたかった言葉が浮かんできた。


「……じゃあ…」


そして新一はおもむろに、ポソポソと平次に耳打ちする。

言葉を聞いた平次は嬉しそうに破顔した。


「そんなん、我儘ちゃうやん」

「いーんだよ」


それが、新一のずっと心の奥に留めていた願いなのだから。





『ずっと傍にいてくれ』





平次は本当に愛しそうに新一を見つめると、そっと頬に手滑らせて。



「…ずっと…何があっても、傍に居るで…」



一等優しい声で、そう、囁いた。




























Deep love to you
―― あなたに 心からの愛を ――

















〜 fin 〜

終わりました〜vv
やっと終わりましたよvv
全21話です!!
私の長編の中で最も長いストーリーになっておりますvv
そしてこの記録は破られることはないんだろうなぁと思っておりますvv
てゆーか、始めた当初はこんなに長くなるとは思ってもみませんでしたιι
せいぜい10話〜15話くらいになるかなと考えていたのですが、収まらなかったですねιι
長編が苦手な方はうんざりするかと思いますιι
『まだ続くんかい!!』とツッコミを入れた方が何人いらっしゃったことかっιι(笑)
とにもかくにも、やっと完結ですvv

このお話は『彼女がいる平次に片想いをしつづける新一』という設定ですvv
が、実は、その設定しか考えてないまま話を書いて行っておりましたvv
もちろん、ラストはどうするか、何てこれっぽっちも考えてなかったのですよ
取りあえず平次に彼女がいて、その彼女のために身を引く切なさとか書けるといいなとvv
そして、平次の気持ちは彼女によって気づかされるようにしようかな、とvv
考えていたのはそれだけでしたvv
………ιι
今考えてみますと、これ、終わったことが奇跡ですねvv(笑)

ともかく、そういうことでしたので、続きを書いていけたのは暖かい拍手とコメントを下さる皆様だと思っておりますvv
本当に本当に、ありがとうございましたvv
そんな皆様がこの話を読んで、ちょっとでも共感したりドキドキしたり切なくなっていただけたなら、とっても嬉しく思いますvv

性懲りもなく、私、『DEEP LOVE』の番外編(?)を書こうかなと考えておりますvv
両想いになって、その後の二人を書きたいな、とvv
できれば、エロスな方向でvv
や、でも、エロはやめたほうがいいでしょうかιι
私のエロは、ものっそ(約100万里程)引かれそうですし…ιι
とまぁ、いろいろ考えて、番外編を書かせていただきますvv
頑張りますよっvv

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございましたvv


どうか ほんの少しでも 貴女様のお心に届きますように-----vv


花蘭 でした


(2008.4.12)
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