誓い

― おまけ


新一が退院して一番最初に行った場所は4LDKのマンションだった。


そこはこれから平次と新一が二人で暮らしていく、場所――





新一の意識が戻った次の日に、平次は不動産会社に行き、同棲する場所を探し始めた。

不動産会社の人もびっくりする速さで平次は良い物件を片っ端からピックアップし、実際の目で確かめるべく何件も見て回った。

そして一番望む条件の部屋に決め、契約をしたのだった。

平次の手際のよさに、不動産会社の人は手を出す隙もなかったという。



平次に『部屋借りたから一緒に住もうや』と言われたときも、新一は平次の行動力を尊敬したくらいだ。


それどころか、新一の入院中に平次は二人分の引越しまでも済ませてしまっていた。


そして今、二人は何の問題もなく二人の新居に訪れてソファに座っている。








……のだが……。








「……なぁ…服部…?」


新一は恐る恐ると言ったように平次を呼んだ。


「ん?何や、工藤♪」


新一の言葉にすぐに返事を返す平次の顔はとろけきっており、にこにこと甘い笑顔を浮かべている。











「…あ、あのさ……」



平次の満面の笑みを直視してしまった新一は頬を染めながらも言葉を続けようとした。


「どないした?」


先ほどから、新一は平次に話し掛けている。



言いたいことが……否、言わなければいけないことがあるのだ。



が、しかし。



新一が言葉を発しようとすると、平次は優しい表情をする。



平次からの微笑みを向けられると、途端に新一は何も言えなくなってしまう。




そういうことを幾度となく繰り返している、今日この頃……。










このままではいけないと口を開く新一だが、平次の笑顔を見てしまうと、結局頬を染めて言葉を濁すだけになっているのだ。


マンションに着いてからこのやり取りを何十回したか、もう覚えていない。










新一は小さく深呼吸を繰り返すと、そっと頬を撫でる平次の手に手をかけて意を決して小さく呟いた。















「……動けねぇんだけど…」






















そう、新一の言葉どおり、新一は今動けない状態に陥っている。


もちろん、原因は平次に他ならない。


というのも、今新一は平次の膝の上に座らされ、後ろから平次に抱きしめられているからである。




新一は恥ずかしいやら動けないやらドキドキするやらで頭の中がいっぱいだった。


「動かんでええよ」


抱きしめる腕を解こうともせずに機嫌のいい声であっさりとそう言う。


「や、でも…」


そういうわけにはいかないと言おうとした新一の首筋に平次のキスが降ってきた。


「っ//!」


ピクンと反応してしまった新一に、平次はくっと笑う。


「めぇっちゃ、可愛え」


呟いて新一の首筋にキスの雨を降らせる。


「っだ、だからっ、動けねぇって…」


新一は首筋まで真っ赤にしながら一生懸命動こうとはしている。

しかし、新一が「放せ」と言うことはなかった。


放して欲しくないのが、本心。


やっと二人きりになれて落ち着いた時間を過ごせる時に、平次とくっついていられるのは……実は、凄く嬉しくて浮かれている。


だけど何せ、動けない。

このままではコーヒーのお代わりを注ぎに行くこともできない。





新一が必死に諭して聞かせようとしているのに、平次は微笑を崩すことなくキスを止めようとはしなかった。


「動かんでええて…工藤は俺の傍に居るだけでええ」


「っ……//」


それは、強い願望。


新一を溶かしてしまう平次の声が、甘く神経を侵す。



クラクラ、する。




言いよどんでしまった新一を見て、平次はほんの少しだけ腕の力を抜いて新一の顔に手をかけてこちらに向かせる。


トロンとした新一の瞳に目を細めて、更に囁いた。


「喉渇いたなら俺が飲ませたるし、腹減ったなら俺が食わせたるで」


だから、新一が動く必要などないのだ、と平次は言う。

言い換えれば、新一が傍にいてくれるだけで平次は何でもしてやると…何でもできる、と言っているのだ。






何もいらない。









ただそこに新一が居てくれるだけで。









本日初めてになる唇への軽いキスをすると、平次は少し意地悪そうに笑った。


「もちろん…」



「?…もちろん?」


中途半端に止めたことに、新一は首をかしげて促すように平次の言葉を繰り返す。

ふっと更に意地の悪い笑みを浮かべた平次はそっと新一の耳元へ囁いた。

























「……風呂も……ベッドも……一緒やで」






















「っんっ!!」


新一が弾けたように真っ赤になるのと同時に荒々しいキスが与えられた。

反論を許さないような激しいキスに新一は意識を持っていかれそうになる。



しかし、今日の新一は負けてなるものかと必死に抗って平次の胸を押し返した。

すると平次は、拍子抜けするくらいあっさりと新一を解放する。

離れた唇が名残惜しいと感じる心に鞭打って、今日こそは平次に物申そうと口を開く。


「っこのっ//!」


だが、キスの余韻で上手く言葉がでない。そんな新一を平次は愛しそうに見つめる。


「っ〜〜//」


その瞳に、わずかに残っていた「抵抗する気持ち」が瞬時にどこかへと消えてしまった。



…ずるいと、思う。



平次は何も言わなくても新一を黙らすことができるのだから。


一度でいいから平次に翻弄されるだけにならないようにしたいとは思う。








……だけど……。







新一は真っ赤な顔できゅっと唇を噛み締めると、平次の膝の上に向かい合うように座りなおして自分からキスをしかけた。

くっと平次が笑ったのが解ったので、平次の首に絡めている腕にぎゅうっと力を入れてやる。






長いキスの後、平次は力の抜けてしまった新一を抱きしめて。


何よりも大切な人に、気持ちを伝える。






「…愛しとるよ…」






「……ん……俺、も……」






お互いに見詰め合って微笑んで。




再び、ゆっくりと。






唇を、重ねていった。










二人の生活は、ここから始まる――。








〜 fin 〜
「誓い」が好評(?)だったので、おまけ書いてみましたvv
甘甘甘々ですvv(笑)

平次に飲まされるところもちろん口移しvvや食べさせられるところ絶対口移しvvvを想像すると、いいですねvv
平次は甲斐甲斐しく新一の世話をすることでしょうvv
幸せで何よりですvv
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