Century Lovers

Vol.3



今あの時のことを思い出してみても、平次の考えていたことは全く解らない。

でも、解っていることは、付き合って『もらって』いる、だけだということ。

平次が新一のことを恋愛感情で好きではないということは解る。

解る、のに……どうして好きでもない新一と付き合って『くれる』のかが、理解できないのだ。




平次は本当にモテる。大学でも女子の間では平次の話題が多く聞こえてくる。

各言う俺も服部はとてもカッコイイと思う。引き締まっていながらも決して薄っぺらいわけではない体つきやキリリと整った男らしい顔立ち。面白くてノリも良くて。でもちゃんと悪いことを怒ることもできて。分け隔てなく優しい、誰もを惹きつける性格。

男女問わず引く手数多なあの服部平次が、どうして自分などと付き合って『くれ』ようと思ったのかが解らない。


後10分で着くと言った平次の言葉を疑うではないが、本当に自分の元へ来てくれるのか不安になる。


もしかしたら会うことが嫌になったかもしれない。


到着してすぐにもう会いたくないと言われるかもしれない。





終わりばかりが、頭の中を駆け巡る。





そんな『終わり』ばかり考えていてもどうしようもないと解っている。けれど、『これから』を考えられるほど新一の頭は楽観的に出来てはいない。

そもそも男同士という高いハードルがあるのだ。結婚も出来なければ、子供も望めない。

見えてくるのは『終わり』だけ。

それなのに平次はお試期間というものであっても、新一と付き合って『くれて』いる。

平次にも『終わり』は見えているはずなのに。解っているはずなのに。

どうして…?何を考えているんだ…?



聞きたいことは沢山あるのに…いつも喉まで出て…消える。




その、繰り返し。






ただ……繰り返す、 だけ……。











「工藤!」



声が……… 響いた。



新一の心臓がドクンッと大きく高鳴る。




どんな人ごみの中でも聞き分けることができる、声。




耳ではなく、心の一番奥深いところに聴こえてくる、声。




声のした方向を見ると、平次が走ってこちらに向かってくる。


「あ…」


来て、くれた。


それだけで新一の心は本当に嬉しくて、暖かくなる。


「遅なってすまんな!」


本当に悪そうに謝る平次に、必死に首を振って否定する。


「いやっ全然大丈夫だから」


何時間待たされたって。


何日間待たされたって。

平次の姿を少しでも見れるだけで、すごく、幸せな気分になれるんだから。

自分の元に来てくれるという事実が。どんなに…嬉しいか…。




そんなことを考えている新一の頭に軽く平次の手が置かれた。


「遅なったけど、これから飯食いに行こうや。工藤はどこがええ?」


今日は待ち合わせ時間がお昼だったということもあり、最初に食事に行こうと約束していたのだ。

平次が到着するまで、新一も何を食べようか考えてはいたので、平次の質問に素早く答える。


「んー、オムライス食いてぇかも…」


平次はどうかと見ると、頭に置かれた平次の手でくしゃくしゃと撫でられた。


「決定やな♪近くに美味いって有名な店あるし、そこにしよか♪」

「ん♪」

「ほんじゃ、行こうや」


優しい、平次の笑顔。

手の届くところにあることが嬉しくて、新一の顔が勝手に笑みを浮かべる。



そうして遅めの昼食をとるべく、二人は歩き出したのだった。










 











オムライス店から出てきた平次は、可笑しそうにお腹を押さえて笑っていた。


「…いつまで笑ってんだよっ//」


新一は少し赤くなりながら、ずっと笑いつづけている平次を肘で小突いた。


「っあぁ、すまんすまん」


口では謝るものの、平次はまだ笑っている。

どうしてそんなに笑っているかというと、それにはちゃんとした理由があった。

それは少しだけ時間をさかのぼることになる。








二人が予定通り美味しいと評判のオムライス店に入ると、お昼時を過ぎていたためか、すんなり席につくことが出来た。

それでもまだ人が多くいる店内を見ると、やはりここは評判通りの店なのだろうということが伺える。

平次と新一は期待に胸を膨らませながらメニューを見て、色々と相談しながら注文した。


待っている時間は今まで解決してきた事件のことや、推理小説のことなど、いつもと変わらぬ雑談をした。


注文のオムライスが届けられると、すぐさまそれを口にする。

やはり評判通り美味しく、二人とも上機嫌で食べていた。



新一がその美味しさにニコニコしながら食べていると、平次がふ、と笑って言った。


「そんなに美味いか?」

「あぁ!すげぇ美味しい!」


満足そうにそう言うと、平次はさよか、と笑った。


「ほんなら、ここは俺が奢ったるな。待たせてしもたお詫びっちゅーことで」


その言葉に、新一はスプーンを置いて、平次を見た。


「え?いいよ、そんなこと。俺払うし」

「ええって。約束の時間破ってもうたし」

「駄目だ!そんなの理由になんねぇよ!ちゃんと自分の分は払うからな!」


少しばかりムキになりながら新一が言うと、平次は苦笑して飲み物を口にした。


「何でそこで遠慮するんや?素直に奢られればええのに…」

「俺が嫌なんだってば!」

「ほんまに頑固やなぁ、工藤は。ま、ええけどなぁ」


言い出したら気かない新一だと知っているので、平次は素直に新一の意思を聞くことにした。



その後、デザートも頼んでお腹いっぱいになった二人は、他の店に行こうと席を立った。



先に平次が会計をしていると、きゅっと新一が平次の服の裾を握ってきた。


不思議に思って振りかえると、バツの悪そうな表情の新一と目が合う。



「…服部、悪い」

「あ?何がや?」


不思議に思って首を傾げると、新一は少し赤い顔をして俯いた。









「……俺、サイフ忘れたみてぇ…」









「…………は?」



平次は言葉の意味を理解するまで少し時間がかかってしまった。

そんなこんなで、結局新一は平次に奢ってもらい、店を出たのだった。









「ほぉんま、おもろい奴っちゃなー」


ようやく笑い終えたらしい平次がニヤニヤしながら新一を見た。


「…うっせぇ//だから、金は後で払うって言ってんだろっ//」


新一は絶対にお金を払うと意地になりながら笑っている平次を睨みつけると、平次はぽんぽんと新一の頭を軽く叩く。


「ええよ、ほんまに。めっちゃ笑かしてもろたし」


そう言うと、先ほどのことを思い出したのか再び平次はくすくすと笑い出した。


「っ//!意地悪ぃぞ、お前っ!」


恥ずかしさで居たたまれなくなった新一は、真っ赤になりながらもプイッとそっぽを向いた。

平次を置いてスタスタと先に行くと、気付いた平次が小走りで追いかけてきた。反省したのかと思いきや、平次はまだ笑っていた。


「ほら、そんな怒るなて。な、工藤♪」

「もう、知らね//」


再びプイッとそっぽを向いた新一の態度に、平次がくっと笑った。かと思うと、新一の頬に平次の手が添えられて平次の顔がゆっくりと近づいてきた。



新一は信じられない気持ちで目を見開く。



平次のしようとしていることが解らない新一ではない。

しかし、ここは人通りが少ないものの、いつ誰が通りかかるか分からない道端で。

否、そんなことは問題ではない。しかし、思考がまとまらない。






唇が触れ合うまで後数cm―――。






「っやめろっ!!」


新一は咄嗟に平次の胸を両手で押し返して離れた。


「工藤?」


不思議そうな声を出す平次に、新一は視線をさ迷わせる。何を言えばいいのか分からなかった。


「服部、いいんだっ!!こんなことしなくてもいいっ!!」

「はぁ?」


ますます解らないといった平次に、新一は混乱しながらも何とか自分の考えを伝えようと口を開く。


「こんなことまでして欲しいなんて望まねぇっ!!お、俺は傍にいさせてもらえるだけで本当に充分すぎるくらいだしっ!!」



平次の傍にいたい。



平次を独り占めしたい。



そう思う。






だけど…。



―― お前を汚したくない。






そう、考えるのは。我侭だろうか?






相反する想い。それでも、どちらも偽りはなかった。




何も言わない平次を不思議に思ってゆっくりと顔を上げると、平次は怒りのオーラをかもし出していた。


「え…?は、服部…?」


怒らせてしまったのかと恐る恐る平次を呼ぶが、平次は何も言わずただ新一を見ていた。

解っているのは、平次が怒っているらしいということ。

素人でも解るくらいピリッとした空気が平次を取り巻いていた。


どうしようかと新一が視線をさ迷わせた瞬間、平次が強引に新一の唇を塞いだ。


「っ!?」


驚きに目を見開いていると、すぐさま平次の舌が侵入してきた。


「んっ…はっと、りっ…んんっ…や…めっ…っ」


抵抗を試みる新一を逃がすまいと平次も力を入れて押さえこむ。

そして更に深いキスを仕掛けていく。


「っ…んっ……っ」






幸せだと、思う。







幸せすぎるとも、思う。







だからこそ、怖いのだ。





いつか終わる関係だからこそ、幸せが怖い。




幸せであればあるほど、それを失ったときの悲しみは大きくなるだろう。




そんなのは耐えられない。自分を失って、壊れてしまうかもしれない。




だからいつでも期待しないように。幸せだと思わないように。
















だって俺は付き合って『もらって』いるんだから。















幸せと裏腹に重く圧し掛かる現実が、新一には痛かった。











可愛い新一が書きたくて…玉砕…(笑)
二人にはちょっとだけイチャついていただきましたvvやっぱりイチャついてこそ平新ですよねvv(違っ)
ああぁ、まだもうちょっと続いてしまいますっιιι
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