Century Lovers

Vol.2




『……俺のこと、好きなんちゃう?…そぉいう、意味で』








今 服部は 何を ……… 言った ?



『……俺のこと、好きなんちゃう?…そぉいう、意味で』



平次の言った言葉の意味を頭の中で整理する。

理解すると同時に 頭の芯が急速に温度を下げる。



「っ!!??」








驚きすぎて、声さえも出ない。



どうして。どうしてバレたのだろう。





『そぉいう、意味で』と。

自分の平次に対するものが恋愛感情なのだと、平次はしっかりと解っている。


そんなこと一言も漏らしていないし、一生懸命持ち前のポーカーフェイスで隠しつづけてきたはずだ。


服部の笑顔を見るたびに胸が高鳴ったときも。

推理をする平次に見惚れてしまうときも。

彼女が出来たと報告する平次に心痛んだときも。

別れたと聞いて少しだけほっとしてしまったときも。

そんな自分が許せないのに平次の傍を離れられなくて、何度も何度も心の中で平次と別れたという彼女に謝り続けたときも。

どんなときでも必死になって隠しつづけてきたはずなのに。




一生………言うつもりなんかなかったのに…。




どうしよう。


服部が変に思っている。早く否定しなければいけない。























……でもっ………
























平次を好きだというこの気持ちを…。










心から好きだと感じるこの想いを…。






































否定なんて、したくなかった。












































「…やっぱ、そぉなんや?」


確信した、声。








泣きそうに………なった。








「っ…ごめんっ!!」

「え?」

いきなり頭を下げた新一を見て、平次が驚いたような声を出した。


「ごめんっ!!ごめんっ…ごめんっ……ごめん、ごめんっ…!!」

どうして謝っているか、なんて自分でも解らない。

でも、どうしても謝らずにはいられなかった。


「っごめんっ!!ごめっ…んっ……ご、めんっ……ごめん…ごめん………」

声が震えているのが自分でもよく解った。瞳に涙が溜まって今にも溢れ出しそうだった。

でも平次の前で泣くことだけは許されないと……拳に力をいれて握る。



泣くな。


泣くな泣くな泣くな泣くな!!



呪文のようにその言葉だけを繰り返し唱えつづけながらガバッと顔を上げる。

「っ…きっ、気持ち悪いよ、なっ!こんなの…こんな、の……」


バレているなんて。何時から?どうして?


恥ずかしい。


ここから逃げ出してしまいたい。

逸る気持ちはあるけれど。

それ以上に。自分が逃げ出してしまったら平次が困ることを知っているから。





平次は優しい、奴だから。


自分が言ってしまったことを後悔してしまうだろう。






自分を責めてしまう、奴だから。


キチンとケジメだけはつけておく必要がある。


「でっでも、大丈夫だ!ちゃ、んと、 諦める、し…つーか、もう二度と 服部に近づかねぇからっ!」

平次に気づかれないように体の後ろで固く握り締めた拳から血が流れるのが解った。

それでも更にギリッと力を入れる。

「ムカつくなら、殴ってくれていいっ!!気が済むまで殴ってくれて、いいっ!」





決して気づかれないように…。




涙が出そうなこと。



身体が震えていること。



指先が氷のように冷たくなっていること。



掌から血が出ていること。



ギリギリで立っているということ。













こんなにも…平次が好きなこと。












「俺のこと、全然気にしなくていいからっ…忘れちまってもいいからっ…だ、だからっ…」








だから……だから…………





嫌わないで……。












否、違う。


嫌いでも、いい。




嫌われてても、いいんだ。






だけど…それを口に出さないで欲しい……。







それが……

















願いだった―――。




















「…ごめん、な……すっげぇ、嫌な思いさせたと…思う……本当……ごめん…」


最後に謝って。終わりにしようと思った。


今まで生きてきた中で最も神経を使って。最後に笑って見せた。


「今まで…サンキュ……じゃあ、俺帰る、な…」



上手く…笑えていただろうか…?



くるりと踵を返して駆け出そうとしたとき、新一の腕を暖かい手が掴んだ。

それは見るまでもなく、平次の温もり。


「はっ…とり…?」


平次の手を振り解くことなどできない新一は視線をさ迷わせる。いつもなら見れていたはずの平次の目を見ることが出来ない。


頭をフル回転させて何か言おうと試みる新一よりも先に、平次のため息交じりの言葉が紡がれた。










「ほぉんま、工藤は勝手やな…」










ビクン、と身体が震える。


「あっ…ご、ごめっ…」

平次がため息をつくようなことを言ってしまった。


そんなことなら言わなければよかった…!!


何冗談言ってるんだって、流せばよかった…!!


後悔に打ちひしがれていると、平次の優しい声がした。

「謝るなて。」

その思わぬ優しい声に、新一は訳が分からなくなった。

「え…ごめ…」

謝りかけてから、つい先ほど謝るなと言われた事を思いだして何とか口を噤んだ。

でも、じゃあ…何を言えばいいのだろう?




「俺、気持ち悪いなんて一言も言うてへんやん?」



「…え?」




言葉の意味が掴めず、思わずさ迷わせていた視線を上げて平次の目を見た。


その表情は真剣そのもので、嘘や冗談を言っている雰囲気ではない。


「工藤の気持ち、嫌やない。けどな、俺が工藤のこと好きか言うたら、解らへんねん」

「…な、に…言って…」

驚きで身体が固まってしまった。目を反らす事さえもできない。



どうして平次は自分に話しかけてくるのだろう? もう二度と話すことなどないと思っていたのに…。



どうして平次は自分を見ているのだろう? もう二度とその暖かい瞳に映ることなどないと覚悟していたのに…。




「今まで工藤のことライバルで親友やと思うてたし」

苦笑しながら新一の目を真っ直ぐ見る。

「そっそんなの当たり前っ…」

だから服部がそんなに難しく考えなくていいんだ!

自分が勝手に平次のことを好きになっただけなのに。平次までも自分と同じ視点で見てくれようとしなくてもいいのに。




きっと、俺の気持ちに気づいたときから色々考えたのだろう。





本当に………本当に………… 







優しすぎる 奴だから……。

















「せやから、ちょお時間くれへん?」






「…え?」






「…試しに付き合ってみぃへん?それで俺の気持ち変わるかもしれへんしな。あかん?」



どうして……そんなことに、なってるんだ……?



「な…んで…んな事言うんだよ?何……訳… 解んね……」

本当に何を考えているのかまったく解らない。言っている意味も、解らない。

平次がどうして自分に許しを請うのか。許しを請わなければならないのは…自分、なのに…。

「っは、服部が俺に合わせる必要なんて全然ねぇよっ!!マジで、ちゃんとっ諦めるし!!近づかねぇしっ!!」


自分で言った言葉に胸を抉られるような痛みを覚える。


それでも。平次を煩わせるくらいなら 痛みくらい何でもないと 思える。


すると、平次は少し怒ったような口調できっぱりと言った。

「俺は諦めろとも、近づくなとも言うてへんで。忘れたいなんて思ってへん」



頭の中が混乱している。


いろいろなものが渦巻いて新一を惑わせる。


諦めなくても…いい、のか……?


近づいても……いいの、か……?





忘れたくないと………思ってくれる、のか……?





ただ一つ、解っていることは……『嬉しい』という感覚だけだった。




色々考えなければいけないことは山ほどあると言うのに、新一の感情は『嬉しい』という一色だった。





平次が自分に話しかけてくれる。


平次が自分を見てくれている。


平次が自分に触れてくれている。


平次が自分の存在を認めてくれている。









平次の…傍に…いることができる………。

















『嬉しい』……『嬉しい』!























「な、付き合ってみぃへん?」



もう何も考えられない………。





再度の平次の質問に。新一はきゅっと唇をかんで。ゆっくりと頷いた。










はい、「つきあってるようなものだ」とは、こういう経緯があったのですー。
んー、何か結構長くなりそうな予感がしてきました(汗)
いや、負けずに(何に。)中編で終わらせます(>_<)
Index > Top > ノベRoom > Century Lovers2