叶えたい 嘘 ――



エイプリルフール ―2―



最初は、嬉しさが勝った。


叶う事のない夢が、新一と付き合う事が出来たのだから。


次に、たった1日だけなのだから、ずっと心に秘めていた願望や妄想を実現させて…あれやこれや、エロい事まで全部、してやろうと思った。


レポートは例え徹夜の日が続く事になろうとも後回しにして、今日は家で新一に触れて、キスして、抱いてしまおうと。


もちろん、新一は途中で我に返って嘘だと言い出すに違いないが、その言葉全てを唇で奪い取って、抵抗も全て抑え込んで、自分を深く深く刻み込んで吐き出して。



新一の意識がなくなるまで、ずっと……。




そうして、新一が深い眠りについてから、やっと……愛していると伝える事が出来るのだろう。




決して相手に聞こえる事のない、届く事のない告白が、出来るのだろう。






けれど。






現実では何も変わることなく、約束通り大学の図書室で静かに座ってレポートを書いている。


―― ……知らんかった…俺、ごっつヘタレやったんや……


色々しようと考えていたのは本気の本気だった。

それなのに、下手に頭の回転が良い所為か、抱いた後の事を考えてしまったのだ。


無理矢理なんて、簡単に出来る。

けれどそれと引き換えに失うのは、新一自身なのだ。


もう二度と、平次を見ることなく。

笑う事も、話しかける事も、傍にいる事だって……なくなってしまうのだ…。


正直、2つを天秤にかけると、とても迷う。究極の選択だ。



どうせ報われないのなら、一度だけでいいと…そう切望する心も本物なのだから。



でも――。



「服部? どうした? さっきからボーっとしてるけど…気分でも悪いのか?」


顔を上げると、右隣に座っている新一が心配そうに平次の顔を覗き込んでいた。

心配は嬉しいが、心の中を気取られるわけにはいかないので、頭を切り替えてそれらしい口実を口にした。


「あぁ、ちゃうねんちゃうねん。 昼メシ何食おかて考えてたんや。 育ち盛りやし、ガッツリしたモン食いたいなァて」

「え、まだ10時だぞ? そんなに腹減ってんのか?」

「全然減ってへん。 …けど、なァ? こんなレポートの山ずっと見ててみぃ、現実逃避したなってもしゃーないやん?」


現に目の前には、一枚なら薄っぺらくて可愛い真っ白のレポート用紙が、今は厚みを持って存在を主張している。

口に出すと、やっぱりうんざりする。

眉を顰めてレポートを睨んだ平次を見て、新一は可笑しそうに吹き出した。


「プッ…! だよな、俺もそう思ってたとこなんだよ!」


新一のその笑顔が眩しくて、目を細めて…自然と、自分も嬉しくなって頬を緩めた。



そう、自分は新一の笑った顔が、とても好きなのだ。




それを、とてもとても愛おしく想うのだ。




新一を笑わせて…幸せにしてやりたいのだ、自分自身の手で。




だから、ヘタレと言われようと、無理矢理なんて出来るわけがない。




心からそう想えるところは、自分の長所だ。




「まぁ、後で焦りたくねぇし、早く終わらせて遊ぼうぜ」

「せやな〜、頑張ろか」


クスクスと笑いあうこの空気が心地良い。そう感じる心は本物だ。

けれど、今以上を望んでしまうのが人間の悲しい性である。


少しでいいから触れたいと溢れ出してくる願望を散らすように視線を彷徨わせて、ふと、机に置かれている新一の左手にくぎ付けになった。


色が白く、滑らかで…細い、指。


ずっと、想っていた。触れたい、と。


いつもならここで理性が勝つ。嫌われたくなくて、欲望を抑え込むために理性がフル稼働する。


けれど、今は、『恋人』という大義名分がある為、理性なんて有って無いようなもので。



……触れたいという願望が抑えられず、徐に、その手を下から掬い取った。



「っ!? な、何!?」


当然の事ながら、新一はいきなりの平次の行動に驚いて体を揺らし、手を引こうとした。

が、それより早くギュッと新一の手を掴む。


「何て、手ぇくらいええやんか。 恋人なんやし」

「あ ……そ、そっか、うん…」


『恋人』という言葉を出すと、新一は今思い出したかのようにハッとして、少々ぎこちないながら逃げ腰だった手の力を抜いた。


―― …アホやなぁ…早よ『嘘』やて言うてまえばええのに…… ……言わさへんけど……


喉の奥で小さく柔らかく笑い、力が抜けたのを良い事に、平次の手の上に乗る形になった新一の手に指を絡ませた。


先程は手くらい、と軽く言ったが、ずっと触ってみたかったのだ。



こうして、恋人繋ぎが出来るなんて、夢のようで。



重みを、感触を忘れないように、キュッと少し力を入れて握って…次いで力を抜いてふんわりと絡ませて…すぐに再び力を少し込める。

指の腹で新一の手をなぞる様に這わせ、体温を確かめる。


自分はとてもヘタレで…とても安上がりだ。

こうしているだけで、信じられないほどの充足感が体を駆け巡り、1日中繋いでいたいと、それだけでいいと想うのだから。


そこでふと、新一のレポートを書く手がピタリと止まっている事に気付いた。

平次が握っているのは新一の左手だけなのだから、右利きの新一はレポートを進める事が出来るはずなのに。


「工藤? どないした? 手ぇ止まってんで?」

「えっ!? あ、いや、うん!」


声をかけるとビクッとして、特に意味を持たない言葉を言って、ようやく手を動かし始めた。

けれど、レポート用紙に刻まれる文字は、動揺で乱れている。

その様子に、思わず笑ってしまった。


「ははっ! 何や緊張してんのか、工藤? 可愛ぇ♪」

「し、してねぇよ! 笑うな、バーロォ!」


そう言う新一の頬は朱に染まっており、説得力など微塵もない。

可愛い事は知っていたが、更なる可愛さを見る事が出来て鼓動がドクドクト忙しない。


平次の心などとっくの昔に新一に全て奪われていたのに、もっと、全部奪われてしまった気がする。



もう、本当に、どうしようもない。




愛しくて愛しくて……愛しくて……。















…… 切ない ……。



















To be continued...

まだエイプリルフールですよね
…すみません、何と言いますか……今年のエイプリルフールにアップするの、忘れてたんですよね…
で、後でアップしようと考えてたんですが忘れ果ててまして…このザマですよ…ふふふっ…_| ̄|○lll

全然進んでない上に短いという…(#)'3`;;)・;'.、グハッ
とりあえず、さらりといちゃつくのが好きです〜vv(笑)


(2013.9.10)
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