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貴方の想いは


どんなカタチですか…?






かたち






工藤新一は事件を解決した後だと言うのに足取り重く家に向かっていた。


「…疲れた…」


言葉にすれば楽になるかと思ったのだがそれは間違いで、ますます新一の疲れに拍車を掛けるだけに終わった。


今回の事件が。

どうも、新一の心に重く圧し掛かっていた。


いつものように目暮警部に呼ばれて行って。事件を解決した。

事件のトリックやアリバイは東の名探偵の新一にとっては大した問題ではなかったのだが。

問題だったのは…動機…だった。















『……そうよ…私が…あの人を殺したのよ…』


犯人の女性は、新一がトリックとアリバイを完璧に崩すと震える声でそう呟いた。

被害者はその女性の知り合いだった男で、二人は十年来の親友だったそうだ。

何故殺した、と男の友人達が女性を責めると、女性は怒りに満ちた瞳で周りを一瞥して叫んだ。



『愛していたからよ!!』



瞬間、新一の心臓がドクンと揺れた。


―― …愛……して、る……?


何を言っているのだろうと、思った。


呆気にとられた様子の周囲に、女性は勝ち誇ったかのように胸を張った。


『愛していたから、私の手で殺してあげたの!!最期のトキを看取るのは私、誰よりも彼を愛している私しかいないわ!!』


そう高らかに宣言する女性に、新一は何だか吐き気を覚えた。

頭が沸騰したようにぐらぐらして、酷い眩暈に襲われた。


『最期の最期まで彼は私を見ていたわ…彼の瞳には私しか映っていなかった…これで彼は永遠に私のモノ…』


警察に連行されながらもそう恍惚そうな表情で呟いていた彼女を見送る気にはならず、目暮警部たちに簡単な挨拶をすませるとそのまま帰路に着いたのだった。















「愛しているから、殺す、か…」


何度口に出してみても、新一には到底理解できないことだった。

自分にも、好きな人は…愛していると思える人は、いる。


西の名探偵 兼 ライバル 兼 ……恋人。



「…服部…」



遠く、大阪にいる平次を想って名前を呼ぶが、当然返事は返って来ない。

もし、自分が彼女だったら、どうしただろう、と考えてみるけれど。


―― 無理無理無理無理!!俺は絶対ぇ無理!何があっても無理!!


平次を殺すことなんてできやしない。

殺すなんて、できるわけがない。


「…間違ってっだろ…んなの…」


愛しているから殺すだなんて、全てにおいて間違っているとしか言いようがない。

そんなの、『愛』なんかじゃないと思う。



平次と付き合ってからもう1年以上経つけれど、平次と一緒に居て感じる想いはそんな冷たいものではない。





『愛』とはもっと……。










『愛していたから、私の手で殺してあげたの!!』


ふいに女性の声が蘇ってきて、新一はジリジリとした不快感に眉を顰めた。

忘れたい言葉なのに、張り付いたように新一の頭に何度も繰り返し木霊する。

その度に言いようのない嫌な感情が、自分の中に蓄積されていくのが解る。



ギュッと拳を握り締めると、耐えるように息を吐いて、もう暗くなってしまった空を見上げた。


―― …逢いてぇ……服部……


だけどそれは無理だということも、新一には解っていた。

平次は大阪の大学で、新一は東京の大学に通っている。

二人が逢える日なんて、2週間に1回あったら良いほうだ。

子供じゃないのだから、わがままを言って平次を困らせてしまうわけにはいかないし、そんな事はしたくもない。





けれど。








こんな…こんな日には…。










傍に…居て欲しいと…想う……。










ただ、傍にいるだけで、いいから…。




















こんな 心が凍えそうな日にだけは……傍に……。





















* * * * * * * * * *




















玄関の扉を開けると、足取りも重く家の中へ入る。



と。






「おー、おかえり、工藤!」


驚いて声のした方向を見ると、目の前に居るはずのない人間が立っている。

色黒の肌、整った男らしい顔、見慣れたはずの姿。…新一の心を動かす…人…。


「……………」


目を見開いたまま固まっていると、その男、服部平次はニコニコと笑いながら新一に話しかけてきた。


「博士から事件で呼び出されたて聞いとったからもうちょい遅なる思うとったんやけど、早かったな♪」


さすが工藤やな、と嬉しそうに笑う平次に、新一は恐る恐る言葉を紡いだ。


「…………は…っと、り…?」

「ん?何や?」

「…何で、いんの?」


ゆるゆると現実が、驚愕が新一に襲い掛かってきた。

少しだけ声が震えていたかもしれない。


「あぁ、何や急にむっちゃ逢いたなって…来てもうたvv」

「…来て…って…」

「何や予定でもあったんか?」


色々聞きたいことはあったのだが、不思議そうな顔をして見つめてくる平次を見ているとそんなことどうでもいいと思える。

そして逢えた嬉しさが新一の中に広がって、心がすっと軽くなっていく感じがする。


―― …どうして、コイツは。こんなにタイミングがいいんだろうな…?




言わなくても…どんな時でも……。




新一が辛いときには、いつも飛んできて…傍に居てくれる。








「…服部…」


「ん?何…」


最後まで言い切る前に、平次の胸倉を掴んで引き寄せ、軽いキスを唇に送る。


「っ!!??」


驚いている平次を他所に、新一は平次の首に腕を回してぎゅーーっとしがみ付いた。



「っ…く、どぉ…?///」



「…れ、も………俺も…すっげぇ……逢いたかった……」



逢いに来てくれて、本当に嬉しい。

目に浮かんでしまった涙を見せないように、平次にキツクキツクしがみ付く。


驚愕で固まっていた平次だったが、ようやく我に返ったのか、新一の背に腕を回すとキツク抱き返してくれた。


―― ったけぇ…


心の中で重くドロドロととぐろを撒いていたモノは、それだけで消えていた。










と、急に浮遊感に襲われた新一は、思わず「わっ!」と声を上げてしまった。

そしてすぐにこの浮遊感はお姫様抱っこをされているからだと気付く。


「とりあえず、中入ろか?」


クスクスと笑いながらそう言う平次に、新一は素直に頷いて平次の胸に顔を埋めた。

いつならお姫様抱っこなんてされようものならば、全身全霊を使って抵抗するのだが、今日はこのままでいたい気分だった。


「もちろん、リビングに行くつもりないで?」

「……たりめーだろ…」

「せやな♪」


どこに行くのかなんて質問、しなくても解る。

しがみ付いている平次の鼓動がとても早く、身体が熱いから。

多分、自分も同じなのだろうけれど。



優しい笑顔が、好きだ。


怒っている顔も、実は好きだ。


傍に居てくれる平次が、好きだ。


出来るだけ揺れないように気を使って運んでくれる平次が、好きだ。





服部平次が…その全てが、とても、好きだ…。








トサッと、ベッドに下ろされ、すぐに熱い唇が降りてくる。

少しでも離れてしまうのが嫌で、新一は平次の頭を引き寄せて強く求めると、それ以上に熱い舌に翻弄される。


「んっ……ふぅっ…んむっ…」

「…っ…ん、工藤…」


キスの合間に新一のシャツのボタンを外す平次の真似をするように、新一も平次のシャツに手を掛けて脱がせる。

すぐにでも平次の肌に触れたくて、ボタンを半分だけはずすと、すぐに平次の素肌に腕を回した。


「っ…と、りっ…」


平次が、愛しくて。暖かくて。愛おしくて。

いつもよりもっと、平次を欲してしまう。



何度も事件にぶつかるたび、やるせない思いはこれからもするのだろうけれど。

どんなに辛く、心が凍ってしまいそうな日でも……新一の心が凍ることなどないのだ…。



そんな日には…平次が…居てくれるから……。










「…愛しとるで…」










キスをして、優しい瞳で新一を見つめながら、平次が囁いた。

『好きだ』とは、行為の最中毎回何度も言ってくれるけれど、『愛している』は結構珍しいことで、新一は一瞬驚いたように目を見開いた。


が、すぐにふっと微笑んで平次を見つめ、ありったけの想いを伝える。




「…俺も、愛してるよ…」




頭で考えるのではなく、自然と口からそう出ていた。

すると平次はとても嬉しそうに笑って、熱いキスを送ってくれる。



そしてまた、熱い行為に溺れていった。










愛のカタチは人それぞれで、解りにくかったり掴めなかったりするのだろう。

実際、新一も愛が何か知りうるわけではない。





だけど。





『愛』とは、そう。






こんな暖かい感情であったらいいと、想う――。











〜fin〜

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(2007.07.28)

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